ロックの帝王
1968年、ヤードバーズの活動はキース・レルフ(vo)とジム・マッカーティ(ds)の脱退によって停止してしまい、バンド活動を熱望していたジミー・ペイジは、バンド・オブ・ジョイで歌っていたロバート・プラントをヴォーカリストとしてバンドに誘い、ロバート・プラントの推薦でドラムにジョン・ボーナムが参加、ベースは、アレンジャー、スタジオセッションプレイヤーとして活躍していたジョン・ポール・ジョーンズが参加し、ニュー・ヤードバーズとしてスタートしました。
2週間ほどでレコーディングされた ファーストアルバムは、全世界に衝撃をを与え、特にジョン・ボーナムのドラムは、ロックドラマーだけではなく、ジャズ・ドラマーにも大きなショックを与えた衝撃のデビューアルバムとしてロックの歴史に刻まれる事になりました。バンドの音楽性は、当時としては、珍しいものではなく、ブルースを基盤にしたハードロックに、イギリスのフォークソングの要素をを取り入れたもので、ジェフ・ベック・グループや、テン・イヤーズ・アフターといったバンドと同じ方向性でしたが、ロバート・プラントの、ヒステリックなほどのハイトーンヴォーカル、前代未聞のパワーとテクニックを持つジョン・ボーナムのドラム、アレンジャー、キーボーディストとしても天才的なジョン・ポール・ジョーンズ、そして神秘的とも言える個性を持つジミー・ペイジのギター、作曲能力により、今までのどのバンドとも違う個性的なバンドになりました。ファーストアルバムから、セカンドアルバムまでは、ジェフ・ベック、ハウリン・ウルフなどのアイディアをパクッた曲もあり、まだ完全に自分達の個性を出し切ってはいませんでしたが、3枚目のアルバム以降は、完全にレッド・ツェッペリンにしか作れない独自のサウンドを確立させ、解散までロックの帝王として君臨する事になります。
ビートルズやローリングストーンズと並んで影響力の大きいバンドという事は間違いないと思いますが、一般のロックファンだけでなく、ミュージシャンに多大な影響を与えたという事に関して言えば、前出の2つのバンドを凌ぐかもしれません。1980年代後半に世界的な大ヒットとなったホワイトスネイクのアルバム『サーペンス・アルバス』を聴いたZEPのファンは大爆笑したと思います。『スティル・ザ・ナイト』ではイントロのアレンジが『ブラック・ドッグ』、間奏の部分は『胸いっぱいの愛を』、おまけに、この曲のプロモーションビデオでは、ジミー・ペイジの象徴的なギタープレイである、バイオリンの弓を使ったギタープレイまで再現されていて、もう笑うしかありませんでした。ジャーナリストに『訴えないのか?』と質問されたジミー・ペイジも、かなりあきれていて、「暇になったら訴える」とか答えていたのが、また笑えました。開き直ったホワイトスネークの関係者が語った『みんなツェッペリンの音楽を聴きたがっているのに、ツェッペリンみたいなバンドがいないから売れたのさ』という言葉こそが、このアルバムの大ヒットの要因を言い当てていると思います。あまりの個性の強さゆえに、ZEPを真似るバンドはいても、ZEPのような個性を持つバンドはいないからです。
ヴァン・ヘイレンのギタリスト、エディ・ヴァン・ヘイレンは『ジミー・ペイジの頭の中を見てみたいよ、いったい何処から、あんな凄いアイディアが出てくるのかなぁ』、ディープ・パープルのギタリスト、リッチー・ブラックモアは『俺はロック・ミュージックは聴かない。レッド・ツェッペリンだけは例外だけどね。』、ガンズン・ローゼスのギタリスト、スラッシュは『一番好きなギタリスト?やっぱりジミー・ペイジだよ。』などなど、列挙したらキリがないので、この辺にしておきますが、ミュージシャンに与えた影響は計り知れないものがあります。1970年代以降のバンドでZEPに影響を受けていないバンドは、ほとんどないかもしれません。ZEPを知らない若い世代の方が、ZEPの曲を聴いたら、「アレ、この曲何かに似てるな」と思うかもしれませんが、ほとんどの場合、ZEPの曲をマネているのであって、ZEPがパクッているわけではありません。ハードロックというジャンルの音楽的な基礎を築いたのは、このバンドだと言っても過言ではないと思います。またハードロックというジャンルにとらわれないスケールの大きな曲や、アコースティックソングもあり、単なるハードロックバンドという見方のできないバンドでもあります。
1995年には「ロックの殿堂」入りを果たし、解散してから約30年経った現在でも世界中でアルバムは売れ続け、ロックファン、ミュージシャンに今なお大きな影響力を持ち続けています。通算アルバムセールスは3億枚以上、2007年にイギリスで1度だけ行われた再結成コンサートのチケットの予約には1億アクセス以上、想像を絶するほどの人気のバンドでロックの帝王と呼ぶにふさわしい偉大なバンドだと思います。
私個人としては、最も好きなバンドなので、思い入れも強く、多少大げさな表現となってしまったかも知れませんが、これでも、かなりひかえめに書いたつもりです。ZEPのアルバムは全てロックの世界遺産だと思います。極めて個性的なバンドらしく、一般的に名盤と呼ばれているアルバム以外をベストアルバムと推薦する人も多く、私の友人だけを例にとっても全員好きなアルバムが違います。それぞれ個性的なアルバムで、それぞれの魅力に満ち溢れていますので、ベスト盤は正直言っておお奨めできません。アルバムごとのストーリー、空気を感じていただくには、やっぱりオリジナル盤をオススメします。
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