魚信のコラム 抜粋コーナー 目 次

コラムの書き込みは、目次の下の段に順次記載されております。

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1 釣りと天候  (2003年)
 
 2 庄内竿(竹竿)の過去と未来 1(2002年)

 3 庄内竿(竹竿)の過去と未来2
(2002年)

 4 ウキとバランスの話1
  (2003年)

 
5 ウキとバランスの話2  (2003年)
 
 6  釣りはバランス 1    (2003年)

 7 釣りはバランス 2    (2003年)


 8 釣りはバランス 3
   (2003年)

 9 今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ?
  (2003年)

10 庄内釣法とはどんな釣り?  (2002年)


11 ノッコミのクロダイを釣る事にについての論争
(2002年)

12 問題発言!!「浜」と「渚」?
(2004年)

 13 釣具業界と知的所有権 (2009年) 

 
   1 釣りと天候 (2003年掲載分)    ホームページのトップに戻る
 自分事であるが、しばらく体調が悪く(アレルギーの鼻炎で鼻詰まりが酷く、寝不足が続いていた為)釣りに行けずにいたが、医者通いでようやく釣りに復帰できる体調に戻ったために、実は今日の水曜日は、自分の女房事魚愁と、釣友達で由良から船に乗ってヒラメの実釣に出かける予定でしたが、出漁時間直前の早朝4時頃からの土砂降りの雨と突風のため、無理をしないで中止としました。

 ようやく釣りに行けると思い、かなり気合が入っていたのにチョット肩透かしを食らってしまったような気分です。
なかなか自分の出漁予定に天候が合わせてくれないもので、本来ならば釣りに行けるのに雑多な用事で行けない時に限って釣り日和が続くものですから、天候を恨めしく思う事も多いのです。

 もっとも秋から冬にかけては釣行日と天候が合致する事はなかなか少ないのですが、天候が良かったり悪かったりするリズムは案外一定のパターンを繰り返す事も多いもので、例えば月曜は晴れ、水曜は雨、土曜は晴れ、日曜は雨・・などのパターが定着する事も多いものです。
勿論これが逆転するる事もある訳ですが、自分にとって悪いパターンにはまってしまうと、これが延々続く事がありますからガックリきますね。
ところがようやく自分の釣行日が天候に恵まれて喜んでいると、思いがけない用事やアクシデントが勃発したりするものです。

 不謹慎な話しですが、釣りに行こうと予定していた日に、それほど親しくない人からの冠婚葬祭に対するお招きなども多い訳で、こんな日に限って天候や海の条件が良かったりするものですから、自分の不運を嘆いたりもしたくなります。

 自分の釣行の場合、そのほとんどはプロとしての仕事絡みの釣行になりますから、のんびり楽しめる釣行は皆無に等しいのですが、仕事の釣りであっても天候が良いに越した事はありません。
傍から見れば、普通に釣りを楽しんでいる様に見えるかも知れませんが、同じ釣りをしていても、やれ、タックルがどうだとか、仕掛けの具合の良否を確認したり、ハリスや針の強度をさりげなくテストしたりと、結構忙しく大変な事も多いものです。
勿論ダメだと判っているものでも、どうしたら結果が出せるか?など、四苦八苦する事もあります。
自分としては、天候やタックルについて、あまり贅沢を言える立場ではありませんが・・・    

 最近は特に雑多な私的所用や仕事がやたら多くなってしまい、普通であれば夜遅くなってからここに書き込む事が多いのですが、なんか疲れが先行してしまいその気力が消滅してしまう今日この頃なのです。
従いまして、ここしばらくはまともな釣りもしていないのが現状なのですが、2週間ほど前にお客様と船のハナダイ釣りに行ってきました。

 お客様の子供さん(中学生)も一緒の釣りでしたから、釣れるような状況を望んでいたのですが、この日は嘘のように釣れません。
 チョット大袈裟に言えば、多くの子供達に釣りの楽しさを知っていただくのも私達の使命であり仕事でもあるわけですが、なかなか思うようにはいかないものです。
 もっともこの日の天候はやや不安定で、出し風が強くなる事が前日の予報で確認していたために、沿岸から少し離れると陸から吹き付ける強い風の影響で白波が立つことは予想していたものの、これが思ったよりも酷い状況で、船自体の自由が利かず、数あるポイントえの移動もままならない程に苦戦を強いられた1日でした。
 このような悪条件のために、折角一緒に釣りにでた中学生の子供の釣果はゼロで、自分と言えば10尾程度の貧果で終わりました。

 「中学生の坊主はボウズに終わった」などと、面白くもない駄洒落はさておいて、なかなか釣行日に合わせて天候と諸条件が良くなることは少ないものですが、時として、釣行に合わせて毎回天候が良い人もいるのです。
このように運の良い人の事を「ツボにはまった」と言う人もいますが、事実、このツボにはまった人の釣行日には、ものの見事に天候には恵まれるものです。

 以前、自分がある雑誌に書いた話しですが、釣りに行く時の天候と釣果に恵まれることが続く時は、ちょうど自分に運が向いている時だから、積極的に釣りに行けるだけ行った方が良いと勧めています。
 こんな運の良い人も、この時期を外してしまうと全く逆のパターンに落ち込む事が多いものです。
 一度落ち込むと、いくらあがいても自分の都合に天候も釣果もついて来ないばかりか、下手にあがくと更に悪い方に引きずり込まれる事が多いものです。
 何故このような現象が起きるのかはよく解りません

 ここしばらくの間、何かと忙しく全く釣りに行けない状況が続いていますが、今日は自分の休日であり、天候にも恵まれ、昨日までの時化が嘘の様に静かな凪に恵まれたのですが、いざ釣りに行こうと思っても、疲れの出た体が言う事を聞いてくれず、結局のところ静養の1日となってしまいました。
 折角のチャンスが到来したのに、磯にも船にも行けずじまいの自分をチョッピリ情けなく感じておりまして、その罪滅ぼしにと、しばらく書き込みが出来なかったこの日記を書いております。(苦笑)

 釣りに行くには、当たり前の事ですが、その時間的余裕と天候、それに釣らんが為の諸条件が揃わないと、どんな釣りもできない訳ですが、一生懸命磯釣りに行ってる人は、全ての諸条件が揃わなくとも釣行していますね。
 例えば、雨だろうが、風が強かろうが、とにかく釣り場を探しながら海岸を渡り歩きます。 休日が限られれている釣り人に多いタイプですが、これらの悪条件の中でも結構クロダイなどを釣ってきますから偉いものです。

 つい最近までの自分も同じようなタイプの釣り人でした。近年は自分の女房と一緒の釣りがほとんどですから、あまり無理はしませんが、それでも普通なら釣りを断念するような悪天候の時でも結構竿を出していましたから、傍目には余程の釣り馬鹿か気違いに見られていたと思います。(笑)
 
 悪天候と言えば、今から15〜20年ほど前には、雪が降る時期になると、店のお客様達を引率して秋田や青森の磯釣りにはよく出かけました。
海が荒れれば荒れるほどクロダイなどが数多く釣れるポイントが秋田や青森には点在しています。  当地庄内よりも北に位置する秋田や青森の方が冬でも水温が高い為、2月の中旬頃まではクロダイ釣りができたものです。
なぜ北に位置しながら冬に水温が高いのか?との疑問を持たれた方も多いでしょうが、実は日本海の南から北にに流れる暖かい水温の対馬暖流の影響で、比較的海側に突き出ている秋田の男鹿半島や青森の黄金崎と椿山周辺は、ワンド状態で陸側の奥に位置する当地庄内よりも冬の水温が高いのです。
 
 時間のある方は日本地図を開いて位置関係を確認していただければ一目瞭然で良く判ります。日本海の沖に浮かぶ佐渡島や、粟島、飛島なども冬の水温は高い関係で魚の活性も高いから良く釣れる訳です。 
2 庄内竿(竹竿)の過去と未来  前編 (2002年掲載分)   ホームページのトップに戻る
 自分がまだ20代の若き頃、県内テレビ局の釣り番組の連続シリーズのなかで、庄内竿(竹竿)と近代カーボンロッドをそれぞれ愛用する釣り人同士により竿の特徴や釣技などを語り合う対談コーナーの企画が持ち上がりました。
テレビ局の関係者から、白羽の矢が自分に放たれ、テレビ出演と相成ったのですが、自分と言えば、庄内竿の若き使い手ナンバーワンであるとの肩書きが出来あがっていたらしく、テレビ局側の勝手な設定に乗せられて、戸惑いながらも、リハーサルなしで30分間、庄内竿について切々と語った記憶があります。

もちろん、竹の良さは十分認識しているつもりではありましたが、当時はかなり多くいた庄内竿の愛好者を差し置いて、若造がのこのこテレビで論じたものですからすぐ評判になり、街に出ればすぐさま「釣りのお兄さん」と呼ばれるはめとなっておりました。
この時を機会に、釣り番組のゲストから、レギュラー的立場で、始終出演するようになってしまいました。
そんな当時ですが、あまりにも有名な庄内竿の時代も終盤を迎えつつあり、まもなくして、庄内においても釣り竿が大きく変貌する事になります。

ところで先日、秋田在住の釣友k・yさんから魚信宛てに興味深いメールをいただきました。
最近、極端に安く売っている輸入竹竿についての話にも触れておりましたので、その中のほんの一部を紹介させていただきます。

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>竹竿良い!!
あんな節だらけ、ねじれたような駄竿なのにガキの頃の感性そのものに訴えるせいかも知れませんが、実に使った感じ気持ち良かったっす。
カーボンやグラスなんかに慣れすぎたのかな?なんか表現しにくい違いがありますよね、竹とは。3.6〜4.2m位の欲しくなっちゃった(笑

竹竿(当然のべ竿)使った元祖庄内釣法すか?本気で面白いだろうなって思うっす(笑    昔の達人って凄いですよね。
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今から30年ほど前の話です。
ちょうど釣り竿にもカーボンの素材が出現し、いち早くカーボンロッドを製造発売したのは確かNFT(日本フィッシングタックル社)であったと思います。
その後においてロッドメーカー各社は、一斉にグラスロッドからカーボンロッドに製造が変革していきますが、そのロッドの種類と数の多さには目を見張るものがありました。
その中でも庄内竿(竹竿)に特性や特徴が類似しているものに、並継のへら竿がありました。
この並継のへら竿を改造加工する事により、手軽に庄内竿の感触を得られる事を知った多くのファンは、我先にとこれらのロッドを買い求め、改造加工したものです。

庄内竿の特徴は、細身であり並継、それに調子は、負荷をかけると次第にじわじわ胴に調子が移行する、言わば胴調子のものが多かった訳ですが、6尺クラスの小竿を除いてはほとんどが中通しであった為、これらの改造加工は庄内(鶴岡)の釣具店で対応してきたものです。
 当時30店程あった釣具店の中でも、これらの技術を持った店は自分の店を含め、5〜6店しかなかったと記憶してます。

当時のカーボンへら竿の場合、穂先はソリッド(無垢)がほとんどであったため、小型の両軸リールを取りつける庄内釣法では、穂先をチュウブラ(中空)に変える必要があったが、この中空の穂先がなかなか手配できなかった〈製造不足)時代でもあります。
本来は竹であるべき庄内竿が、カーボンロッドが代行してしまう時代の到来に、戸惑った庄内竿のファンも多かったはずです。
この頃になると、本来の庄内竿を作る職人もかなり減少しており、庄内竿の製造職人として家計を支え生活できる時代は終焉を迎えていたとも言えます。

そんな中で、庄内竿生誕の地である庄内、それも鶴岡で職人と呼ばれる竿師は2〜3人ほどいました。
そのうちの1人であるS氏は当時で60歳ほどの方であり、自分も何かとお世話になった方であるが、実戦用の庄内竿を数多く排出した竿師でありました。
そんなS氏を全国的に紹介すべく、国内トップの釣り雑誌社F誌の記者と共に自分も取材に出向いた事がありました。

 後日、この取材の模様はF誌の誌面を飾る事となり、この時の取材は全国的に紹介される事になる訳ですが、はるばる遠方から来たこのF誌の取材がこれだけで終わる訳もありません。
早速、この庄内竿を使って庄内の地磯においてクロダイを釣って欲しいとの要望が出ました。
ちょうど梅雨の最中の6月下旬の話しなのですが、当時のこの時期は、クロダイの産卵後であったために、習慣的に地元ではクロダイを釣る釣り人が少なかった時代でもあります。
しかも、すでに竹製の庄内竿を実戦で使う機会は少なくなっていた事でありましたが、F誌の記者から是非何とかお願いしたいと懇願された結果、取材釣行となったものです。

 この取材の後には、やはり地元の離島である飛島での大物釣りの実釣取材を自分は控えていたにもかかわらず、とにかく庄内竿での実戦釣法を公開、伝授する事となった訳ですが、当時自分は25歳という若さであったため、自分なりに役不足と判断したもので、庄内竿での実釣は先輩のN氏にお願いし、自分は解説の役に回ることにしました。

  さて、実際の実釣となったものの、普段は余り使わなくなった竹製の純粋なる庄内竿には、さすが先輩のN氏も使いこなすのに四苦八苦、ましてクロダイを掛けてから取り込むまでは冷や汗ものでした。
この時の懐かしい取材の模様は、このhpの一部に紹介されている「伝統庄内釣法・・・・・・軟竿の手練」と相成るわけですが、「軟竿の手練」ではなく「難関の手練」になっておりました〈苦笑) 

 昭和30年頃までは、鶴岡に住むほとんどの釣り人は庄内竿(竹製)を使っていたのであるが、まもなくに手入れや持ち運びが便利なグラスロッドが出現した事もあり、わずか10年程の間に竹製の庄内竿からグラスロッドに移行した釣り人も多かった。

 この時代に入ると、釣竿のみならず、多くの釣具が一気に開花したかの様に、新製品ラッシュが続いたものである。
余談になるが、ちょうどこの頃、ナイロンラインだけの市場にフロロカーボン製のライン(ハリスなど)製品が開発され始め、更に今は誰でもが持っているクーラーも大量に発売され、飛ぶように売れた時代でもある。
 話しは戻るが、竹製の庄内竿の良さは今更語るまでもないが、小さな魚信も竹の持つ独特な感度の良さが、竿を持つ手にまで明確に伝え、魚に餌を十分食い込ませる適度な穂先の柔軟さ、そして魚が餌を食い込んだ時に、竿を立てて合わせた時に生じる魚の乗りを微妙なまでにコントロールしてくれるような感性。

 そして針掛りした魚とのやり取りにおいても、引き込みには粘り強く対応し、魚が弱りかけたり、魚が手元に向かってきた時には、適度な反発力でバレを抑えて魚を寄せてくれる・・・・・
言葉では表現は難しいが、こんな感じの性格を持って活躍してくれるのが、竹製の庄内竿なのだが、これらの性格や特徴を無駄なく発揮してもらうためには、この庄内竿を製造する段階で作り上げる必要があるわけだ。

 少なくとも、竹の素材が同じであっても、手をかける竿師次第でその性格や特徴のみならず、1本1竿、個々の庄内竿の容姿か寿命に至るまで、大きく変化してしまうのである。   
 庄内竿が完成するまでの製造(製作)過程については省略するが、素材となる苦竹を確保できても、その100本中で、まともな庄内竿を作る事が出来るのは1本程度であり、その他は俗に言う駄竿が少し作れる程度である。
 竿の長さにもよるが、穂先から元竿まで、仮に3本継の18尺(5,4m)の竿を作るとした場合、竹一本の素材から作り出すのが理想であるが、バランス良く作るには穂先が馴染まない素材がほとんどであるため、他の竹素材を用いて穂先を繋ぎ合わせた庄内竿が実際は多いのである。
 この場合、後から別の素材を付け足す形になるため、通称「後家」(後家さんの意味からくる)と呼ばれる。

 したがって、庄内竿をよく見ていただくと判るが、庄内竿のほとんどはこの後家竿が多い。
 また、庄内竿は素材が持つ竹の特徴を最大限に生かした技法で製造する関係から、竹の皮を剥いたり、竹を削ったりしないばかりか、装飾は全く施さないのも特徴の一つだ。
 ただ竹竿そのものに人為的色彩を着色しない変わりに、竹本来が持つ、光沢と竹が持っている油性を保つために、色付けと称して囲炉裏なから発する煙で竹に色を付けていくもであるが、少し色がつく毎に一旦冷水で竹を洗い、再度(何度も)同じ工程で色付けしていくのである。
 上等な庄内竿はこの作業を通じて、竹の皮がこげ茶色になるまで続けるのである。
 これらの作業を続けていくうちに、竹に必要な油も保全され、また、素材にはつきやすい害虫も排除する役目を囲炉裏の煙は持っている。

  とにかく庄内竿は見た目では信じられないほどの時間と手間をかけて仕上げられるものであるが、一時期ではあったが、この色付けを薬品で簡単にやってしまうだけの要は偽物的庄内竿も多く氾濫したものである。
3 庄内竿(竹竿)の過去と未来 後編 (20002年掲載分)   ホームページのトップに戻る
 かなりの手間暇をかけて作り上げられるこの庄内竿であるが、よほどの名竿でないかぎり、釣りに使用すれば曲がりや節の癖が顕著に出てくる。
 特に雨が降る時には竹本来の性格上これらが酷くなるわけで、素人には手入れによる修正は難しくなるのです。
 けして笑い話しではないが、同じ方向ばかりに竿を曲げ続けるなと言う先代達からのアドバイスが伝えられているようだが、要は、庄内竿は負荷が掛かったら竿を回しながら使い、曲がり癖を付けるなと言う事なのである。

これらの話しからも推察できると思うが、庄内竿は使用も手入れも、実際はかなり難しいのです。
 また、曲がりだけに限らず、庄内竿は生き物と同じく、日々の気象条件に反応しているから大変な代物でもありますから、例えば、本来の庄内竿は、竹藪から採取した状態で、一本のままが理想なのであるが、持ち運ぶと言う事を考慮して適当な長さに数カ所切断して、切断個所の繋ぎ目を真鍮などのパイプにネジ切りを入れて繋ぎ合わせるように加工が施されています。
一般的に言う所の並継であるが、問題はこの継ぎ目なのだが、先に言った通り、その日の気温や湿度で竹とこのつなぎ目のパイプに僅かではあるが誤差が出てしまうという事なのです。
 また乾燥した状態が続くと、竹は痩せてくるため、パイプとの相性が狂い始めるものでもあります。

 したがって、これらの手入れや、いろいろなトラブルに対処できる釣り人でなければ、結局は庄内竿を管理し使いつづける事は非常に難しいとも言えます。
残念な事にこれらの問題点を無視するかのように、何の説明や責任の所在もあやふやにして、簡単に庄内竿を県外に売りさばいている業者が過去に多くいたのであるが、庄内竿の特性を生かした状態で使い続けていただくには、庄内竿の手入れができる人が身近にいるような条件が本当は不可欠なのです。
したがって、これらを無視して庄内竿を売りこんできた人には少なくとも庄内竿に対してと、庄内竿を使おうとする釣り人えの配慮が欠けていたと、自分では思えて仕方がないのです。

 先にも説明しました通り、あまりにも著名になりすぎた名竿である庄内竿ではありますが、竿も使い手を選ぶと言っても過言じゃないと思います。
 どんなものでも、それなりの価値を有する物であれば、使う側のレベルを問われます。
 同じ庄内竿でも、昔のように使い捨てに近い駄竿も多かった時代であるならば、駄竿は駄竿で、それなりの使い方でも良かったのでしょうが、後世に残したいような庄内竿であるならば、やはり使うにしても、家宝よろしく飾って置くにしても、庄内竿の特性と性格を知った上で、大切に扱ってほしいものです。

 現実的に当地にはこれらの庄内竿を実際に使い、また、庄内竿の認識を深める為の目的でいくつかの愛好会なるものが組織され、これらの愛好会だけの庄内竿を使った釣り大会や、愛好家の中には実際に趣味として庄内竿を製造する方々も数人おられたものです。その中でも自分の知り合いで著名になられたアマチュア竿師であるN氏やO氏は、残念ながら近年他界されました。
 流れる歴史の一幕でしかないこれらの庄内竿に纏わる話ではあるものの、語り継ぐ人が意外に少ないのも寂しく思われるのです。

 めまぐるしく変わりつつある今の時代、釣りも釣法も多様化してきた現代が、竹を用いて作られてきた庄内竿を今更受け付けないのかもしれません。
 確かに近代の釣具で特に竿に関しては、余りの進展と様変わりが激しく感じます。
 現代の竿と言えば、カーボンです。細く、軽く、張りがあるために、昔より楽に、簡単に、大きな魚を釣る事ができますし、遠投ができるリールを用いた近代のウキ釣り法が近年主力化している事も、この庄内における釣りの特徴でもあります。
 間違い無く、一世を風靡した庄内竿〈竹竿)は姿を消しつつあります。
 しかし、そんな中、釣り人にとって竿とは一体何なのか、釣において竿はどんな存在なのかをじっくり考えてみた時、竿本来の価値観と、竿の歴史と、昔の釣り人気質にも少しは興味が持てるのかもしれないと感じています。

 偶然ではあるが、九州に住むFさんと言う方から突然メールがきたのですが、そのメールの内容は、庄内中通し竿に興味をもったとの事で、飛行機で当店まで来ると言うとてつもない話しに、少し驚いた自分ではありましたが、期待に添えるかどうか、多少の不安はありましたが、とにかく来ていただく事にしました。
それが昨日の夕方から夜にかけての来訪でしたが、ここのコラムでも見ていただけたのかと確認しましたら、見てはいないという話しです。
 
 Fさん曰く・・たまたまこの魚信のHPで、庄内中通し竿のPRを見たらしく、近年数多く出回っている竿の中でも、際立って面白そうな竿が庄内中通し竿ではないだろうかと直感的に感じたそうだ。
 実際店内でFさんから庄内中通し竿を見ていただいた。
 もちろん庄内中通し竿のルーツである本来の竹製である庄内竿、そして現代において最も普及しているカーボンの振り出しタイプの庄内中通し竿で、当店オリジナルである「魚愁」と「魚信」モデルを見ていただいた。
 Fさんからいただいた感想では、竿を介して、庄内釣法の面白さが判るような気がするとの素直なご意見を聞く事ができたのである。

 この度は庄内中通し竿については山程もある能書きを敢えて説明するよりも、白紙に近い予備知識状態で竿本体から何かを感じてもらえれば有り難いと思っていたのであるが、多少なりとも竿の良さは判っていただけたようである。
 実際に魚を釣っていただければ、百聞は一見にしかずと言うか、体感こそが事実とでも言うべきか、その初期の当たりから、食わせの送りこみ、そして引き込みから合わせの感触、本格的な竿を駆使しての魚とのやり取りの醍醐味などを感じていただけたら申し分ないのではあるが、今回はFさんの都合で時間が許してくれないとの事で、翌朝には帰途する忙しいスケジュールでありました。

 しかし、ほんの短い時間では有りましたが、この庄内中通し竿を見ていただき少しでも理解を示していただけた事には本当に感謝しております。
 これを機会にこの庄内と九州と言う遠距離の隔たりはあるものの、釣りを楽しむ感性には全く障害は無いものと自分なりには解釈しているところです。
また、話しは変わりますが、若い方でも庄内中通し竿に理解を示し、これらの釣法を楽しみながら少しづつ極めてみたいとの声もあります。
 正直頼もしくも有り、またうれしいものです。
釣りを真から楽しめる庄内中通し竿を用いた庄内釣法は、これからも引き継がれる古くて新しい釣りであり、簡単な様で実は奥があまりにも深い釣では有りますが、どのように楽しむかで、個々のどんな釣りにも対応してくれるやさしさも兼ね備えているのが、庄内釣法であり庄内中通し竿の良さであるとも自なりに思っているところです。

 さてさて・・・・今までだらだらとまとまりもないような文面で書きつづけてきまして恐縮しておりますが、少しは庄内竿について理解していただけたでしょうか・・・
 庄内竿を語るには、竹竿だけが庄内竿ではないかとの声も聞こえてきそうですが、自分流に解釈するのであれば、庄内竿は延べ竿であり、総じてやや細身で胴に乗る調子であり、近代は中通しであり、両軸の小型リールを用いて(一部にはフライリールを使っている)基本的にはフカセ釣りを主とするが、応用した釣法も庄内では数多く見られる・・・・と言ったところでしょうか。

何も片意地張って、庄内釣法をがんじがらめにする事もなければ、庄内に受け継がれてきた庄内中通し竿も、無理に定義付ける必要もないような気がしています。
 もっとも、先に説明した自分流解釈の範囲は必要不可欠な庄内竿としての形ではないだろうかとは思います。
 また、庄内竿の原形とも言える苦竹で作られた庄内竿は、実戦で使う場面はもう極端に少なくなっています。
 少なくとも名竿やそれらに近い竿はもちろんの事、全ての竹竿は大事に手入れを施し、後世に語り継ぐ資料として残しておく方が良いのではないでしょうか。
 名竿はもちろん家宝にもなり得るでしょうし、俗に言う座敷竿(部屋の中で竿を振ったり、眺めたりして楽しむ)としての価値もあります。
庄内竿〈竹竿)は立派な工芸品でも有りますから・・・・・この章終わり
4 ウキとバランスの話 前編  (2003年掲載分)         ホームページのトップに戻る
 近年は当地庄内においての海における釣り方も、ウキ釣法を用いる釣り人がかなり多くなりました。
当地で最も盛んなクロダイ釣りに関しては、約半数以上の釣り人がこのウキ釣法を用いて釣りを楽しんでおります。
これらのウキ釣法が庄内の磯場で活躍するにしたがい、従来から受け継がれてきた庄内中通し釣法に親しんできた釣り人も、ウキ釣法に転向したり、もしくは、庄内中通し釣法とウキ釣法のいずれの釣りも使い分けて楽しんでいる釣り人もおります。

ただ、これらの釣り人の多くは、ウキ釣法の基本となるノウハウを持っていないため、見よう見真似であったり、参考書や関連の雑誌で勉強しながら必要とする技術を学んでいる方も結構多い様です。
因みに、新たにウキ釣りを始めようとする釣り人に対して、自分がレクチャーしたりアドバイスしたお客様(釣り人)である皆様の数は、ここ10年ほどで延べ数2000人を超えるほどなのですが、残念な事に、その約半数以上の方はウキ釣法に馴染めず、結局は途中でやめたり、やめないまでもウキ釣法紛い?のそれなりのウキ釣法を相変わらず続けておられる方がほとんどの様なのです。

 確かに、ウキ釣法そのものが時代の流れと共に、タックルは勿論の事、釣法的にもその技術的な進歩には目を見張るものがある程ですから、一般の釣り人であれば、それらの実態や情報などからすれば、自分の持つ知識とのレベルの違いや、理論上の混乱などは避けられないのかも知れません。  
現に、ウキメーカーの人間すらこんなことを言ってました。  「最近の釣り具メーカーも釣り人も、こぞって釣りを難しくしている」と・・・  現場に携わる自分から見ても、最近の釣り界の風潮として、釣りを難しくしている事は否めませんが、しかし実質的には、釣り人一人一人の個人的な楽しみ方に全てがかかっていると感じています。
 敢えて釣りを難しくして、自分にプレシャーをかけながら釣りを楽しむ人もいれば、釣りはシンプルに、そしてお気楽な遊びとして接している程度の釣り人も多くおられると思います。
釣りはやっぱり個々のポリシーで異なるものであるし、大袈裟に言えば人間としての自分の生き方の縮図である様な気がしますから、やっぱり自分自身とのバランスがとれた無理のない釣りを楽しむ事の方が、趣味としての釣りの場合には大切な事だと感じています。

 釣りと言っても色々ありますから、どのような釣りを楽しむかは、人それぞれのポリシーで異なりますが、案外その人の置かれる立場や環境で個々の釣りに対する考え方や嗜好が制限されたり、大きく変化してしまう事も多いと思います。
釣りのタックルに関しても同じ様な事が言えるような気がします。例えば、同じ磯釣りであっても、地磯釣もあれば沖磯釣りがあったりで、更に細分化すれば、同じ磯釣りでもその釣法たるや数種類、いやいや、数え上げたらもっともっとキリがない程の釣法があります。
そんな釣法の中でも使うタックルの種類が多彩なのはルアーや釣針それにウキなどがありますが、今回のバランスの話しではこの中のウキで、それもクロダイ用の磯釣りに使うウキについて考えてみたいと思います。

 今、多くのメーカーなどから発売されて実際販売店に並ぶこれらのウキの種類は、大きく分けて棒ウキと玉ウキになりますが、使用する側の好みと用途で使い分けられるものの、比率から言えば約80%は玉ウキを使っているのが現状です。
どちらにも一長一短はあるのですが、その事に関してはまたの機会に説明する事にして、今回はこの玉ウキについての話しに絞ります。
 玉ウキと一口に言っても、多くの形状と種類があり、市販される価格も500円〜5000円と丸が一つ違うほどに格差があります。
勿論高額なウキには高いなりの理由があるわけですが、これらの高額なウキには必ずと言っていいほど○○名人作とか、名人使用とかの肩書き?がつくものです。 
 そんな事もあり、その名人に憧れていたり、その名人の様に釣れる事を期待するする人達はこれらの高額なウキを買って使う事になるのですが、はたしてこれらのウキを使うと、本当に○○名人の様に釣れるのでしょうか?
高いウキを使えば必ず釣れる事が保証されるとすれば、爆発的に売れるのは明かな事なのですが、特別釣れる事が保証されていなくとも結構売れているのは事実なのです。
ところが、これらの高額なウキを使う場合、ウキだけを買って付け替えて使用したとしてもそのほとんどは失敗に終わります。
ウキ一つの問題なのですが、本当はタックル全体のバランスがとれないとウキの性能は全く発揮さず、宝の持ち腐れになってしまう事を案外知らない釣り人が多いと言う事なのです。  

 ウキに限らず、釣り人の使うタックルについての評判や情報は右から左と釣り人の間で広まってしまうものなのですが、これらを鵜のみにすると大きな間違いを犯す事が少なくありません。
ある程度の知識を持ったレベルの釣り人であれば、耳や目から入ってくる色々な情報の精度を自分なりに整理して上手くコントロールしながら、取り入れるものは吸収し、不要なものは排除してしまうのが普通ですが、何でもかんでも取り込もうとするのがビギナーの性です。

 ところで、話しをウキの話題に戻しますが、ある人がある釣り場で、例えば形の良いクロダイを数尾釣ったとします。
ほとんどの人は、このクロダイを釣ったポイント(場所)を聞きたがりますし、釣ったその日の諸条件や、仕掛けを流し込んだ細部のポイントと、釣れた(釣った)タナや、使ったウキと仕掛けの詳細を聞き出したいのが釣り人としての本能?であると思います。
 
 しかしながら、これらを例え聞いたところで、どれだけの事が判ってしかも自分の釣りに引用できるのか、自分は疑問に思うのです。 よく釣った事を自慢する釣り人は、釣ったポイントは教えても釣れたタナは教えたくない釣り人が多いものです。
あたかも、釣ったタナこそが、自分の腕の範疇とでも言いたいのでしょうか?そこで自慢下に始まるのはウキ下○○尋と言うタナ調整の技術?解説です。 尋(ヒロ)とは、両手を広げた長さですが、一般的には1.5mとされています。
ところが、釣った時のウキ下を聞いたところで、何の意味も成さない事にビギナーの方は気付くどころか、凄い裏技でも会得したかのような錯覚に陥ります。
クロダイが釣れるタナなどは同じポイントであっても、その日の条件は基より、釣っている間にも刻々と変化するものであり、極論からすれば、全く意味を成さないものなのです。 実際はそんな事より、そのポイントがどの程度の水深なのか、また、水中の根はどのような状態なのかをイメージできる範囲の情報こそが大切なのです。

これら一部の情報から知り得たヒントから、この場所に適応するタックルをバランス良くチョイスできる技術的能力を身につける事の方がずっと大切なのですが、ほとんどの釣り人は、釣った人のタックルを真似る事に執着してしまいます。     
 
5  ウキとバランスの話 後編  (2003年掲載分)        ホームページのトップに戻る
  磯釣りでのウキ釣法を始めたばかりの釣人のほとんどは、ウキ選びにはそれなりに神経を使う為に、結構高価なウキを揃えている場合も多い様ですが、これらのウキを使いこなす事はかなり至難の技なのです。
せっかくウキだけを高価な名人級のウキを用いても、以前から話している様に、実釣時におけるタックル全体のバランスが良くないのでは意味がありません。
いくら高価で良いウキを用いても、タックル全部のバランスがとれていないとウキがその機能を発揮しないばかりか釣れる魚も釣れませんから、宝の持ち腐れ状態を余儀なくされます。

ウキを選ぶにしても、通称名人ウキなどは伊達に値段が高いのではなく、ウキ自体にはそれぞれに独特な理論から創り出されたアイディアが含まれた特徴がありますから、これらの個性を知っておく必要があります。
ウキそれぞれの特徴に合わせたタックル全体のバランスを考える場合例えばウキが丸ウキなどで小粒であればあるほど、ライン(ミチイト、ハリス)は細く、ロッドも細身で軟調な物が適合します。

 もし、ウキに適合しない太いラインや、硬く太いロッドを使用した場合には、ウキはラインの重さと、ライン自体の空気や海水面の抵抗によりウキはラインに翻弄されて本来の機能を発揮しないばかりか、本来は海面に浮くはずのウキも、海中に沈んでしまったり、ラインの動きに振り回され海面で暴れてしまう事になります。
しかも、本来であれば微妙な魚の当たりもキャッチしてくれる筈のウキであっても、その機能が発揮できずに、折角のチャンスもバランスの悪さが災いして遠のいてしまいます。

更には、ウキを巻き上げた場合に、ウキの自重によりロッドが適度に曲がってくれないと、ウキを含めた仕掛けを投げ込む操作にも支障をきたしますし、仕掛けなどがロッドに纏わりつく現象が発生します。
一方これとは逆に、同じウキでも大きく自重のあるウキを使用するにも拘わらず、細いラインと軟調のロッドを用いた場合は、仕掛けを振り込むにもロッドがウキなどの重さに負けてしまい、遠投どころか、僅かの距離にも仕掛けは飛び難く、ロッドに不要なブレが発生する為に振り込みの方向性も不安定になるなどの弊害が生じます。
これらのアンバランスな組合わせにより発生する不都合な現象は、更なる多くのトラブルを生み出す原因にもなります。

「バランス」と言っても、それではどの程度のタックルや仕掛けが適正なのか?具体的に説明しろ・・・・とのご意見が聞こえてきそうな感じがします。
確かに、バランスと一言で言うのは簡単ですが、具体的な例を形にして説明するとなると案外難しいものです。
そこでクロダイ釣りの実践例などの経験から紹介する事にしましょう。

小形の円錐ウキを用いた釣法の場合で、ガイド付きのロッドを用いて釣るとした場合であれば、釣りをする時期でも多少異なりますが、晩秋や冬期間の荒凪の時期を除けば、リールに巻くミチイトは2号で、ハリスは1.5号クラス、針はチヌ針の2号程度を用いるのが標準的な仕掛けであり、ロッドはチヌ竿か磯竿の1号でリールはスピニングでミチイト2号が150m巻けるものであればよろしいかと思います。

 現在市販されているライン(ミチイト、ハリス含む)の強度は、メーカー品で比較的価格が高い方であればまずは安心できます。以前、自分がある釣り雑誌でクロダイのパワーについて持論を書き込んで多くの読者から反響を得た事がありますが、クロダイが針掛かりした時に引き込むパワーを数値的に表すとした場合、実際はどの程度なのでしょう? 
一般の釣り人が感じているそのパワーとは、クロダイの体重プラス引き込む力だから、仮に1kgのクロダイが引き込む時は1kgプラス○○gだから、少なくとも1kg以上の負荷が使用タックルや仕掛けにには加わると思われている様なのですが、実際はクロダイの場合、その体重の半分ぐらいの負荷程度しか釣り人が使用するロッドやラインにはかからないのです。

 1kgのクロダイの全長は約40cmですが、実際に今の話しを意識して、ロッドに錘でもぶら下げてみると実感として判る筈です。 通常、1kgの錘は鉛の号数で約260号です。
40cmのクロダイを釣った事がある人ならばすぐに理解できると思いますが、錘に換算すればせいぜい120号程度ですから、実際の重さにすれば0,5kg弱と言う事になります。
従って、これだけの重さ以上に耐える仕掛けであればクロダイなら大丈夫であるとの理論が一応成り立つ事になります。
それならば、0.5kg程度の引っ張り強度を持つハリスなどのラインの号数はいったい何号になるのでしょうか?   
 実際の号数からすればなんと0.4号クラスのハリスの強度なのです。 
ただし、皆様がご存知の通り、ハリスは勿論、ラインそのものは、結節部分が極端に弱くなりますから、この数値はあくまで結び目がない場合のテスト強度の事です。

 話しのついでですが、これらラインを結節する場合の注意点としては、色々な結節方法がある訳ですが、要は、結節部分を締め込むと結節部分が締め込まれる事によって、結節部がずれたり、ライン同士が締め込みによってライン自体が潰れたり、細くなってしまう結節方法は適切ではないと言う事なのです。
また、仮にミチイトとハリスを結ぶ場合、この結び目にサルカンなどを用いた方が結び目の強度が向上するのですが、直接的に結んだ場合などで、ミチイトとハリスの太さに隔たりがある場合などには、(例えば、ハリスが1号にミチイトが3号)ハリスだけに負担がかかる事になり、びっくりするほど簡単にハリスが切れてしまう現象が起き易くなるのです。
仮に、この時と同じ負荷をかけたとしても、ハリスは同じ1号でも、ミチイトが2号であればハリスは切れないですむ事が多いのです。

もっとも、これらの話しは、ミチイトとハリスがナイロンやフロロカーボンの場合であって、最近よく使われる新素材のPEラインのデーターではありませんので、混同しないでください。

ナイロンやフロロカーボン素材のラインの場合には、ある程度の伸びがありますから、これらの伸びがクッション的役目を果たして、急激なショック的負荷がかかっても切れ難くなると言う事です。
また、これら仕掛けの延長線上にロッドの弾性や反発力があり、また、リールによってミチイトの張りの調整や、リールのドラグ調整やレバー操作などでのラインの送りだしなどでも仕掛け全体のバランスを維持したり、保持する役割を担う事になります。
従って、これらのハリス、ミチイト、ロッド、リールなどでの全体的使用バランスと操作テクニックで、トータルでのバランスが計られ、タックルの相互的互助により、本来、個々が持っている強度をフルに発揮する事が、自分も含めて、多くのテスターにより確かに実証される事になります。

今までにウキとその他のタックルのバランス関係を話してきましたが、高価なウキほど浮力やバランスについては繊細な造りになっています。
従って、高価なウキを使用する場合には、トータル的に繊細なタックルが必要となります。

ウキがいくら精巧で繊細に造られていても、ウキに付随する全てのタックルが追従していなければ、いくら高価なウキでもその機能は全く発揮しない事を肝に銘じておかなければなりません。
先にも話しましたが、円錐や丸ウキなどが小粒でしかも浮力の少ない物を使用する際には、ミチイトもハリスも極力細くしないとこれらのラインの抵抗で、ウキの機能は殺されてしまいます。

最近のラインはかなり丈夫になりましたから、ミチイトが1.5号でハリスが1号でも、余程の悪条件でない限り、例えばクロダイなら50cm程度までには十分に対応してそのパワーを発揮してくれると思います。
さて、ここで誤解を招くといけませんので、はっきりお断りしておきますが、繊細なウキと細いラインによる仕掛けを自分が推奨しているのではありません。
自分個人の仕掛けに対するポリシーは、釣れなくとも大振りの仕掛けをメーンで使います。
そんな訳で、魚を食わせるまでが大変ですが、その代わり、食わせたらどんな大物でも滅多にバラス事はありません〈笑)

話しは戻りますが、繊細な仕掛けの場合、魚が食う確率は確かに高くなりますから、食わせてからのロッドやリールなどの操作も繊細にしかも丁寧に、更にはタックルに対しても相当の神経を使う必要があります。
例えば、ラインの傷や結節部のチェックには特に気を使う必要があります。また、ある程度の魚の引き込みやチョットしたショックなどはロッドが反応してコントロールしてくれますが、ロッドが限界に至る前には釣り人自らのロッドコントロールを必要とします。
勿論、使用している仕掛けにマッチしたロッドを使う事が前提としての話しでありますが、いずれにしても、全てにおいてウキとのバランスがとれていなければ、これらの釣法を駆使する事は出来ないと言う事なのです。
どんなに高価で有名なウキを用いた釣りでも、タックル全体のバランスがとていない場合には、上手に釣りはできません。
とにかく釣りに大切なのは、バランスなのです。
 6  釣りはバランス・・・前編  (2003年掲載分)          ホームページのトップに戻る
多分ここのコラムを見てくださる皆様は、このホームページの大切な常連さんだと思います。
 さして面白くもない自分のコラムを見てくださる訳ですから、自分事、加藤 魚信は心から感謝している次第なのです。
 文章はともかくとして少しでも皆様の心の片隅に伝わる様な話しが出来ればと思っているのですが・・・・ 自分の思っている事の半分でも伝えられたらいいな〜 と、思いつつ今日も眠い目を擦りながら、相も変わらず下手な文章でまとめあげ様とこれまた下手なキーボード捌きで書き綴っております。

 さてさて、タイトルにも持ち出しました「バランス」と言う言葉ですが、実は、この「バランス」ほど釣りに必要かつ大切な言葉は無いと最近になり痛切に感じる様になりました。
釣技とタックル、釣りのジャンルとファッション、対象魚と使用タックル、タックルとタックル?(釣具間の取り合わせなど)それに自分と釣り・・・などなど、思いつくまま書きこんで行ったらキリが無いのかも知れません。

 とにかく全ての面でバランスが悪いと折角の釣りが台無しになります。 やっとで買った高価な釣具も生かしきれないのでは、全くその効果や効用が見えてこないから、本来ならばいとも簡単に得られるはずの感激や感動が体感できない場合も多々あるはずです。
と言う訳で、バランスを考えた無駄の無い釣具選びなどなど、ちょっとは為になる?魚信の独り言的、釣り雑感を色々と・・・・
最近の釣り竿のほとんどはカーボンロッドになりました。もちろん従来からのグラスロッドもあれば、バンブーロッド(竹竿)もあるにはありますが、時代はカーボンロッドが主流になっています。
 どのようなロッドにもそれぞれの長所と短所がありますから、釣りの用途や、釣り人個々の好みで使い分ける事になります。
 
 お客様がロッドを買い求める時、ほとんどのお客様が次の様な注文をつけます。
 「値段が安くて、出来るだけ細く、軽く、張りのあるロッド」 お客様のご希望でありますから、色々な条件が加味されてきますが、現実的には、このような条件を満たすロッドはあり得ないのであります。
 なぜなら、ロッドは細くするためや、軽くするため、張りを出すために、それぞれのコストが上昇する訳ですから、ロッドの価格は必然的に高くなります。
 
 これらの現実を無視して、机上論でロッドを作るのであれば、理論上は安くてもこれらのロッドを作る事は可能です。
 カーボンロッドはカーボンの繊維(糸状)を編みこんで、カーボンのシート(布状)を作り、このシートをロッド状の鉄芯に数回巻き込み、そして炉に入れて焼き込んで作り上げるものですが、カーボンシートを編み込む時に、縦と横に使う繊維(仮に同じ太さと仮定して)の本数を、縦に多く使う程張りのあるロッドが出来ますし、鉄芯に巻きこむ回数を少なくすれば竿自体は軽く出来ます。
 また、この巻き込む鉄芯をより細くすればロッドも細く仕上がる訳です。 以上の様に作り上げれば理論上は「細くて、軽くて、張りのある」ロッドも安く仕上がる事になるのです。

 ところが実際にこのロッドを釣りに使うとなると、全く使えない代物である事が判明するでしょう。
 早い話しが、ロッドとしての強度面に問題が生じてきます。張りはあるのですが肉厚も無く横の繊維が少ないために、ロッドが曲がった時に生じる横の圧力に弱く、簡単に縦割れが生じてしまうのです。
 それでは、これらの欠点を何で補うのかと言えば、同じカーボン繊維でも、より高品質で、軽く丈夫な繊維(原材料)を用い、更に補強材をロッドに加え込む必要がでてきます。
 これらの素材や製造の技術的な事は各メーカーがしのぎを削って競っている訳ですが、当然コストもかかりますから、バランスの良いロッドはやはり高くなります。

 あるお客様が当店で買ったばかりのロッドを返品したいと言ってロッド片手にやってきましたので、返品の理由を聞いてみると、買ったばかりのロッドが既に折れていると言うのです。  
 早速店内でこのロッド(振り出しの6m程度のロッド)を伸ばしてみましたが全く異常がないので、お客様に別段折れている個所はありませんが?と、説明したが、どうしても納得してくれません。
 
 再度お客様の言い分を確認すると、伸ばした竿を手前から見ると途中から(ロッドの中央部分)下に向かって曲がっている様だから、これはロッドの内部が折れている筈だと言って、こちらの説明にはなかなか耳を貸してくれないのです。
 早い話しが、ロッドを伸ばした状態ぐらいで下に垂れ下がるるようなロッドは不良品であると言っているのであります。

 もっともこのお客様は釣りに関しては初心者のようであるが、とにかく真っ直ぐにピンと直線状に伸びているロッドでなければ気が済まないらしい。
 困った私はそこでお客様に提案してみたのです「お客様、このロッドは同じ商品で別のものと交換しますが、私がロッドを伸ばしてみますから少し離れ所の位置からロッドを真横から確認して見てください」と言いました。
 
 お客様は私から言われるがままに離れたところからロッドを眺めているうちに、私にこう言うのです。
「今度のはピンとしていてなかなか良いロッドですね〜」 そうなんです。長いロッドほど自分が伸ばして竿尻から穂先方向を見れば下方に大きく曲がって見えますが、、ロッドから離れて真横から見てみるとその曲がりは嘘のように解消して見えるのであります。(もちろんこれらは目の錯覚的なもので、遠近感覚機能の関係で生じると聞いておりますが、これは人間が持つバランス感覚の弱点かもしれません) 従って、お客様には、自分が持ち竿にすると大きく曲がって見えるものである事を明確にして納得していただきましたが、ロッドは一応新しいものに変えて差し上げました。
このような現象は釣り場でもよくある事で、隣にいる釣り人のロッドはピンと真っ直ぐに伸びて見えるものです。
例え話しにもありますが・・隣の芝生は青い(隣の奥さんは綺麗に見える) ちょっと例えは違ったかもしれません(笑)
 視線と目線の違いでロッドの性格も変化して見えると言う話しです。
7  釣りはバランス・・・中編 (2003年掲載分)   ホームページのトップに戻る             
近年、ロッドも軽量細身でパワーも増強されましたが、それに負けず劣らず、釣り糸(ミチイト、ハリス)も丈夫になりました。
 現在、釣り糸の号数は太さで決まりますが、昔は重さの表示でした。 近年はナイロン、フロロカーボン系の素材で釣り糸は作られていますが、昔は蚕の繭から引き出された糸が素材でありましたから、この素材の長さ一尋(1.5m)の重さを計って、それぞれの重さを表示したもので、貫、匁、分、厘、毛に分類されて表示されたようです。
今の号数からみれば、10号が1分、1号が1厘、0.1号が1毛に換算されます。

 
 従いまして、16号の糸であれば、昔は1分6厘といった具合です。(年配の方ですと、いまだに1分とか1厘の糸とか言って買いに来る人もいます)
 昔の糸の場合、表示の号数が同じであれば強度にそれほどの違いは生じなかったはずですが、近年の素材に変わってからは、その素材選定から製造過程の違いで大きく強度の差が出ますし、糸その物の性質も違ってしまいます。
 これら釣り糸の話しはまたの機会にしたいと思いますが、現在の平均的な釣り糸の強度は(PEラインを除いて)3号で吊り上げパワーは3〜5kg程度であると思います。
 
 3kgと言えば、磯釣りに使うオキアミの3kgブロックの重さですし、5kgであれば、コンクリートブロックの重さに匹敵します。
 早い話しが、3号の糸の強度は、これらの重さを吊るしあげることができる強度なのであります。
 ところがこの辺の事実関係を知らない釣り人が多いのも事実ですから、ロッドと釣り糸のバランス関係で案外単純なトラブルが発生するのです。
 磯釣りでよく見かける光景ですが、根掛かりを外そうと、ロッドをなんべんも煽る釣り人がいます。
 運良く外れれば良いのですが、ほとんどは外れないものですから、更に力を込めて煽ります。
 その結果、ロッドが「バキーン」と凄い音をたてて折損してしまう訳ですが、ロッドが折損した釣り人には、ロッドが弱かったか不良品なのかも知れない等と、首を傾げてしまう人が多いのも事実です。
ロッドと釣り糸の強度バランスを計算に入れていないための、初歩的ミスである事になかなか気がついてくれません。
もっとも折損の原因には、釣り竿の特性も絡んでいる場合もあります。

 自分自身、釣り竿と言ってみたり、ロッドと言ったりで、同じ釣りの竿であるのに、その時々、気分次第?で、無意識のうちに呼び方を使い分けてしまいますが、その辺の矛盾したような表現についてはご容赦ください。
 
 ところで、この釣り竿の特徴、特性、性格などを言葉や文章で表現するのにはかなり難しいものがあります。
 仮に上手く表現したつもりでも、聞いたり見たりする側で、理解できなかったり、もしくは誤解して捉えてしまう事も多いと思います。
 しかし、今回は敢えて言葉だけで釣り竿について語ってみようと思います。
  さて、ここからは釣り竿の事を簡略して、ロッドと呼ばせていただきます。 このロッドですが、調子などを言葉で表現するとした場合、硬いロッドですが、振ってみると柔らかいロッドです。・・・ もしくは、振ると柔らかいのですが、実際は硬いロッドなのです。
 このようにロッドの特徴を説明しようとするのですが、どうしても言葉が短いと訳の判らないような説明になってしまいます。
 実際のところ、このような訳の判らないようなロッドは結構多いものです。
 
もっと判りやすく説明すると、このロッド本体は肉厚であるために、かなり硬めのロッドなのですが、全体に細身に作った場合とか、ロッドそのもののテーパーがかなりゆるく(スローテーパー)してある場合ですと、調子そのものが胴調子(ロッドを振ったり魚を掛けた時など、特にロッドの中央付近が極端にに曲がってしまう)になってしまう事が多いのです。 
ロッドは胴に調子が乗ると硬いロッドも柔らかく感じてしまうものなのです。このロッドの構造自体が硬めに出来ていればいるほど、ボテボテの調子になってしまい、胴ぶれを生じるロッドになってしまうのです。

早い話しが、あまりバランスは良くないロッドと言った方が適切なのかもしれません。
 従いまして、このようなロッドの場合、肉厚で硬く作ったロッドのつもりであっても、加えられたパワーが胴に集中する形となり、ロッドの中央付近から意外と簡単に折損してしまう事態が発生します。
 せっかく肉厚で、硬く丈夫に作り上げたロッドにも拘わらず、バランスが悪い為に折損が生じてしまう一つの例なのです。
 何事もそうなのですが、ちょっとしたアンバランスが悲劇を巻き起こすものなのです。

 最近のロッドは振出が主流になってきています。
もちろん釣りのジャンルや用途によっては並継ぎの方が良い場合も多いのですが、ロッドの総数からみた場合、今やその70%は振出が占めています。
ところが、この振出ロッドがここ近年に大変貌していることに気が付かない釣り人が案外多い様な気がします。

最近のロッドは、比較的に細く、軽く、張りのあるものが多くなった事に気が付く人は多いでしょうが、実は見えない部分が一番技術的に進歩していると言えます。
もちろんロッド本体の素材的進歩や、ロッド製造技術の躍進もさることながら、実際のところは、振出ロッドの各パーツの継ぎ目部分に注目してほしいのです。

 つい近年までの常識では、この継ぎ目をいかにしっかりと丈夫に仕上げるかが課題であったために、継ぎ目部分(パーツが重なる部分)は比較的に長めが常識でした。
もちろんロッドにもよりますので、一概に継ぎ目の長さは紹介はできませんが、現在の倍以上もあったのです。
ところが、ある時に従来のロッドの常識を覆すロッドバランス理論なるものが具現化されて支持されるようになったのです。

「ロッドは曲がるから折れないのであって、ロッドの一部に曲がりにくい部分があれば、その部分からロッドは折れる」と言う事なのです。(これらの理論は、自分も多くのロッドを自作していた関係で判ってはいたのですが、つなぎ目部分を短くする発想には至らなかったのは事実です。)
従って、10年ほど前からこの繋ぎ目が短いロッドが主流になっておりますが、更に進化した今現在、この継ぎ目すらロッド全体のバランスからすれば違和感があるとして、今度はこの継ぎ目部分だけをロッドの素材を曲がり易くする為に、柔らかい素材で作り上げたロッドが出現しました。
ロッドのバランスを究極まで研究し掘り下げていくと、ロッド本体の肉厚は均一で、しかも穂先から竿尻までは同じテーパー角度が理想であるという結論に辿り着く事になるようです。
口で言うのは簡単ですが、実際これら理論をロッドに組み込むのは至難の技である事には違いないと思います。
しかし、これらの技術は案外見えない部分に集積されるために、釣り人からは軽視されやすいのも事実です。
バランスとはロッドで一番大事な要素であるのに、目には見え難いものなのです。
8 釣りはバランス・・・  後編  (2003年掲載分)         ホームページのトップに戻る 
ロッドの種類にもよりますが、今業界で一番力を入れて製品化しているロッドはアユのロッドだと思います。
アユロッドの場合、7〜10mと比較的に長いものが主流で作られている関係で、他のロッドよりは、軽さと太さ、それに張り(反発力も含め)の状態が顕著に現れますから、釣り人の目にも、その良し悪しの判別がつき易いのは事実です。
ご存知の通り、これらのアユロッドは2万円程度から50万円もする様な高級品まで存在する訳ですが、これらのロッドには、価格差が示すほどの仕上がりに違いがあるのでしょうか?もちろん2万円と50万円のロッドでは比較する方がおかしい訳ですから、せめて5万円と10万円のロッドを比較した場合の違いと仮定しましょう。

これらのロッドを振ってみた場合、失礼ながら一般の釣り人には価格の違い程の差異は感じられないと思われます。
事実、同じプロ同士の目から見た場合でも、ロッドを振っただけで、これらのロッドの違いを明確に判断できる人は案外少ないのです。
もちろん、振っただけで判別できる様になるまでは、多くのロッドを対象に、ロッドの限界までのテスト経験が必要であり、多くのロッドを意識的に折損するぐらいの過酷なテストを重ねた実績?と経験がものを言います。
自分自身、職業として実釣に使用してきたロッドの本数も500の数を越えておりますが、現実的に手元にはテストを兼ねて使用しているロッドだけでも、ライトなルアーロッドから、ヘビーなジギングのロッド、数種の投げ竿から、船竿なら浅場用から深海まで、そして磯竿ならへチから落とし込み用のロッドから始まり、クロダイを対象とした中小物竿から石鯛、カンダイ用の底物竿まで、また、へラや鯉、アユを対象としたロッド、更にはこれらをベースに作り上げた当地独特の庄内中通しロッドなどなど、その数100本以上は私的に保有しています。

 しかしながら、対象魚別に振り分けて考慮しても、本当に調子が良くてバランスが整ったロッドは稀なのです。
もちろんロッドの良し悪しの判断にも使う人の好みがついて回るわけですが、本当の意味で、釣り人が好むロッドとは,ロッド本体のバランスの良さは当然の事ですが、現実的には、使う人とロッドの相性も関係してきます。
この相性もバランスを語るには大切な要素であると、自分は感じているのであります。

 釣り人とロッドとのバランスと言っても、何の事か判らないと思いますが、どんな良いロッドを所持していても、使う側が使いこなせない様では、折角のロッドも宝の持ち腐れ状態になってしまいます。
例えば、スキーの板と一口に言っても、スキーの板にも色々な種類と用途の別がある事は皆さんもご存知だと思いますが、大別しますとクロスカントリー、ジャンプ、滑降、回転、フリースタイル、モーグルなど、これらはそれぞれの用途に応じて設計したものであり、個々に違った作りのスキー板なのです。

 スキーの種目に応じて、それぞれのスキー板には大きな違いがあります。歩く事が主となるクロスカントリーの板は、極力軽量で操作を楽にするために細身で軽量にできていますが、大空を飛ぶようなジャンプ(実際は高所から落ちていく)競技の板は、風や空気を板全体に大きく受ける様に、かなりの巾と長さを有していることは皆様もご存知かと思います。

 これらのスキー板と同じく、ロッドにも用途に応じて色々な種類がある訳で、極論からすれば正に千差万別であり、対象魚と釣法によって異なる作りになっている関係で、色々な釣りに兼用できる(万能的)ロッドはあり得ません。
 そこで、こんな話しがあります。自分の紹介で、釣り好きなAさんがテレビの釣り番組に出演が決まりました。  釣りメーカーの釣り番組のため、これらの取材収録中は、このスポンサーであるメーカーが指定した釣具を使用する事になっており、これらの釣具は収録用として番組スタッフが準備しておりました。
取材はクロダイがターゲットでしたが、ロッドもクロダイ用が準備されていた訳です。

 ところが、Aさんはスタッフが用意したロッドはもとより、全てのタックルの使用が初めてであった為に、これらのタックル捌きが今一つしっくりしなかったと思われますが、後日に放映されたこの釣り番組の中でのAさんは、クロダイを掛けた場面でもへッピり腰とでも言うべきか?お世辞にも上手な釣り人としては映らなかったのであります。
全てのタックルに自信がなかった様で、クロダイの引きに適切な対応ができなかった関係からか、想像もつかない程の腰抜け状態での釣り場面になってしまったのです。
例えベテランであっても、自分とのバランスが取れないタックルを使うと、まともな釣りが出来ない事もあるのです。

9 今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ?(2003年掲載分)        ホームページのトップに戻る 
  久しぶりに釣りの技術に関する話しをしましょう。
 最近よく耳にする事なのですが、「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」と、実しやかに釣法を説いて話す釣り人が多くなりました。
 確かに近年は物のあふれる時代、釣具もその例に漏れず、あまりにも多くの用品が溢れていますし、仕掛け一つを取っても多種多様で、売る方が迷うほどですから、使う側もその選別には困る場面も多いでしょう。
 
 当地で釣りの対象魚としての代表魚は何と言ってもクロダイです。
このクロダイほど人気があって、釣り人を惑わせる魚は他に無いと言っても過言じゃないでしょう。
 近年は当地独特の庄内中通し釣法よりも、ウキを用いたウキ釣法が、この庄内でも主流化していることは否めない事実です。
 しかし、庄内中通し釣法を知らずして、すぐにウキ釣法から入った釣り人の多くは、ウキ釣法が絶対的であると信じて疑い無く、庄内中通し釣法を否定する言動も見受けられます。
 そして庄内中通し釣法に対して言う言葉は・・・・「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」なのです。

はたして、今の時代に庄内中通し釣法はそぐわないのでしょうか?・・・いえいえ・・・それは違います・・・と自分は自信を持って答えますが、自分のように即座に反論できる釣り人は時代の流れで確実に少なくなってきております。
実は「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」ではなく、「今の時代、庄内中通し釣法を縦横無尽に駆使できるほどの人が少なくなった事と、真に継承している釣り人も激減してしまった」ために、技術面において釣れる魚も釣る事自体が難しくなってしまったのではないだろうか・・・

ただ、これらの事実はさておいて、これら断片だけの判断で、庄内中通し釣法全てを否定されたのでは、先人達が築き上げてきた素晴らしい釣りの歴史と技術が、闇に葬られるようなものであると自分は残念に感じ、釈然としない思いがこみ上げてきます。   
 
庄内の磯釣り場で釣り人を見渡せば、庄内中通し釣法とウキ釣法を用いる釣り人の比率は、今や3:7でウキ釣法が圧倒的に多くなったと思われますが、自分は両刀使いですから、釣り場には必ず両方のロッドを持って入ります。
正確に言うと、投げやルアーのロッドなども持参しますから、4刀使い?かもしれません(笑)
 もちろん、その日の諸条件にあわせてロッドや仕掛けを現場でチョイスしますから、実際に使うロッドは1本だけの場合もあります。
 釣り場の条件で、庄内中通し釣法が良い場合もあれば、ウキ釣法が有利な事もありますが、どちらも優劣は付け難いのが本音です。

 庄内中通し釣法に限らず、ウキを用いない釣法には、落とし込みや、前打ち釣法、延べ竿による渚釣り(浜釣り)などがある訳ですから、必ずしもウキ釣法だけが最上の釣技であるとは断言できないと自分は思っているのです。
 ところが、あたかもウキ釣法だけが時代の最先端を独走しているかの様に、他の釣法を否定する釣り人が多くなってしまった感があります。
 これらの一部・・・いや、ほぼ半数の釣り人が他の釣り人に言う台詞が「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」なんです。
ウキを用いて沖目に仕掛けを流しても釣れないものが、足下のポイントしか釣る事ができない庄内中通し釣法なんかで釣れる訳がないとか、タックルを繊細にしてハリスなんかは1.5号を使ってもなかなか釣れないのに、3号のハリスなんてとんでもないとか、同じウキを用いた釣り方でも、ウキは○○メーカーの○○ウキじゃないと
ダメだとか、色々様々な理由をつけて「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ」と忠告?してくれるのである。

もっとも、悪気があるわけではないのだろうが、これらの釣り人の多くは釣りに関する勉強と経験の不足は否めない。
釣りの上辺だけを齧ったぐらいで、他の釣りを否定するのも考えものだが、否定される方はいい迷惑なのである。
もちろん否定する当人達はその間違いに気づく様子もない・・・・それぞれの釣法の違いをここで話すのやめた方がよさそうですから省略しますが、数ある釣法にも必ず一長一短があります。
 その辺の使い分けが大切だとは思いますが、敢えて不利を承知で自分が愛する釣法を、拘りの中で駆使される釣り人もけして少なくはない様です。
 
これらの釣人は、ほとんどの釣法を知っており、また、経験した上での拘りであるからして、中途半端な口先だけの釣人とは訳が違うから恐れ入ります。
 最もこの手の達人とも言える釣人に若い釣人がほとんど含まれないのは、極あたりまえとも言える訳ですが、それでも、これら拘りの釣りを少しでも吸収しようと頑張っている、新鋭の釣人も少しはいますから、将来を悲観するほどではないようです(笑)
 
ところで、釣具の進歩には目を見張るものがありますから、10年一昔で、釣り糸一つを取っても、同じ号数で強度が倍になった商品も珍しくないのは事実です。
 そんな関係で、例えばクロダイを釣るハリスの場合でも、以前より相当細くても大形のクロダイを制する事ができるようになりましたから、必然的に使う針もどんどん小さくなってきています。

 今の若い方には信じられないでしょうが、自分たちが20年ほど前にクロダイを釣っていた頃には、ハリスは(荒凪の時や、夜釣り)5号で針は海津の20号を用い、がんがんクロダイを釣り上げていた訳ですが、今やこの当時から見れば、仕掛け自体は半分・・・・いや、3分の1程度の大きさであり、太さであります。
正に、今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ?と言われれそうですが、本当にそうでしょうか・・・

もっとも今の時代、わざわざ必要以上な強度のタックルは無用の長物ではありますから、強いて使う必要はなくなりましたが、魚が利口になったから、そんなごつい仕掛けじゃ釣れないと言う釣り人があまりにも多い気がします。
 昔と違い、魚が学習して利口になったと言う訳ですが、魚はそれほど利口になったとは自分としては思えません。
 最近の釣人がわざわざ釣りを難しくしているような気がしています。
もし、本当に魚が・・・クロダイが学習して釣れなくなっているとしたら、魚の知能に相当なる進歩があるとするなれば、今頃の時代、魚が口を揃えて釣人に語りかけるでしょう・・・・・「今の時代そんな仕掛けじゃ釣れないよ!!」と・・・・・ね。
 
10 庄内釣法とはどんな釣り?  (2002年掲載分)           ホームページのトップに戻る 
 庄内釣法を良く知らない方に、少しでも判っていただけたらと、あるところで説明したのだが、説明が不完全であったのか、言葉の使い方が悪かったのか?実際は多くの誤解を招いてしまいました。
 
 それでは、庄内釣法とはどんな釣りなのか?・・・・・・・加藤魚信流にもう一度解説してみようと思います。

1,庄内釣法に用いる釣り竿とは、本来であれば竹製の延べ竿でリールも無ければミキ糸とハリスと針だけで釣るのが原則であったが、近年は竹に変わるカーボン製のへら竿や鯉竿、それに鮎竿などの振り出し竿や、並継ぎ竿に小形両軸リールを用い、竿は中通しにしてミチイトを竿内部に通している。
どちらかと言うと、カーボン製の並継ぎ竿を中通しに改造したものが、やや胴調子に仕上がるために、本来の胴調子から元調子である庄内竿に最も類似した感じになる。

2,近年は、竿の長さで通常1,8m〜9mまでを使い分けているが、 これらに用いるものを通常「庄内中通し竿」と言って、庄内釣法に用いる。

3,サラシや払い出し、それに潮の動き合わせて仕掛けを乗せて流し込んだり同調させて釣る釣法が庄内釣法の基本であるが、サラシや払い出し、それに潮流が強い場合などは必要最小限の錘を用いる。
 竿を振って海面に投入した仕掛けは、竿とミチイトの操作でポイントに届くように流し込んだり、落とし込みながらタナの調整も計る。
また、魚の初期の当たりはミチイトや竿先を見ながらにして感じ取るが、竿の手元まで魚信が伝わりやすいのも庄内中通し竿の特徴でもある。
更には、比較的に細身でスローテーパーな竿は、魚の食い込みを促し、魚を掛けてからはその負荷が竿の胴から元に乗ってくるから、比較的に柔らかい竿全体の反発力で魚の引きを吸収するために、魚がバレ難いだけでなく、竿全体の矯めにより魚の引きを堪能しながらコントロールもし易いなど、これらの相乗効果が庄内釣法独特の良さと個性なのです。
 以上が、庄内釣法の基本ですが、竿による仕掛の振込みは、どちらかと言うと、フライフィッシングのロッド操作や、他の釣法にも類似している部分も多い事は否めません。

4,従って、仮に庄内竿の長めの竿に錘を付けて振り込む釣法も一見は庄内釣法の様ではあるが、厳密に言えば一般的に言うところの前打ち釣法になってしまうし、庄内竿の短竿で釣り場の壁面を、しかもスルスル仕掛けを落とし込む釣法であれば、落とし込み釣法になってしまうと言えるから、厳密に言えば庄内竿を利用した別の釣法になってしまう訳です。
 事実、これらの釣法に適合する竿自体の調子はおのずから庄内竿とは異なってきますから、極端に先調子に設計されています。
しかし、これらそれぞれの釣法を明確に分別して解説するのは難しいが、庄内釣法の場合、特にクロダイを釣る場合などは、釣り座と竿を振り込むポイントの選定を含めて、水中に入っている仕掛を竿とミチイトでいかに捌きコントロールするかの技術的な部分も他の釣法とは微妙に違うのです。

5,以上、簡単な説明ですが、純粋で正当なる庄内釣法と庄内釣法を応用した釣法とでは違いがあるという事です。 しかしながら、一般的にはこれらを一色単にして、庄内釣法と言われていますから、一般の釣法との違いが見えにくく誤解されやすい部分だと思われます。  従って、純粋な庄内釣法を駆使できる釣り人は少なく、それが故に純粋な庄内釣法は自分も極められ無いと、いつも話しているところです。

 以上の内容なのですが、他地域の釣人は、庄内釣法が前面に出すぎて、他の釣法を見下げている・・・・とか、磯釣の原点が、あたかも庄内であるような話が面白くない・・・また、庄内釣法は、浮きを使っていないだけの釣法で、むしろ低レベルの釣じゃないか・・・・などなど・・・・やはり、言葉(文章)での説明程度では、真の庄内釣法を理解してもらうのは無理難題なのかもしれません。
 
 最近は庄内における磯釣りも様変わりして、ウキ釣法が花盛りのようである。
 このウキ釣法も、極め様とするならば、ウキの数もかなりのものが必要になりそうだ。
 ところが、このウキの数ほど庄内竿を持っているのが庄内釣法を駆使する庄内の釣り人、20本程度は当たり前、30本はざら、50本でようやく一人前。

 ウキを選ぶ様に、釣り場の状況と対象魚を予めイメージしたり、選定してから竿も選ぶ、昔は竹竿やグラスだったが、今はカーボンのへら竿や鯉竿、それに清流竿やアユ竿を庄内竿に改良するが、各メーカーでも庄内用としての竿を現在でも毎年新発売しています。
 昨年はダイワでニュー汐音、今年〈今)シマノでエアノス庄内。それに30年ほどのロングランを誇るFSK(フィッシングストアカトウ)のオリジナルロッドで、魚愁と魚信シリーズだが、これらはグラスロッド時代から現在のカーボンロッドにいたるまで引き継がれている人気製品なのです。

 とにかく、庄内では磯竿の数倍は庄内竿が販売されているのです。シマノの専門誌フィッシングカフェの創刊誌で紹介されたのも庄内竿と庄内釣法でした。なぜなら、磯釣りの原点が庄内にあるからです。 しかし残念ながら、正当なる庄内釣法を受け継ぐ人は少なくなっています。
 
 本当の庄内釣法が技術的に難しいこともあるが、先に述べた様に極めようとすれば、竿の長さ別、調子別など、かなり多くを必要とする事にもあり、資金面からしても、調達が困難である事もその要因の一つだと思います。
 勿論景気の問題もあるが、何をさておいても、磯釣りだけに没頭する程の本当の釣り馬鹿が少なくなった事と、今の時代の背景が、波長的に磯釣りをダメにしつつあるのかも知れません。
しかし、今もってこの庄内釣法での釣果が、全国的に浸透しているウキ釣法と横並びか、時としては更に上を行く釣果も出ています。
 シンプルかつ古代的な庄内釣法でありながら、これらの釣果実績には驚きますが、やはりそれなりの理由がある訳ですから、その辺の技術と理論を含めた、釣れて当たり前の庄内釣法について、またの機会にお話したいと思います。
11 ノッコミのクロダイを釣る事にについての論争 (2002年掲載分)     ホームページのトップに戻る 
 釣り人の場合、どうしても我田引水的、かつ自分の都合に良い意見ばかりを述べて、相手の意見には耳をかそうとしない部分がある。
そのくせ、論点となる根拠が曖昧になリがちであり、時として、釣りの腕自慢的話しなどの筋違いな話しになってしまうケースも案外多いようだ。
ところで、クロダイに絞った場合、釣り人それぞれの考え方を大別すると次のような感じになると思います。

1、クロダイの成魚(30cm以上)ばかりを狙い、春には全く釣りをしない釣り人。
 春に釣りをする人と、当歳魚を釣る人を締め出したい。

2、春は釣りをしないし、大型魚は釣らなくても良いと言う釣り人。(高齢者に多いタイプ)
 当歳魚を秋に釣って楽しみ、食用にするため持ちかえる。クロダイの成魚を釣らなければ、もっと当歳魚が増えると思っているので、いずれにせよクロダイ釣りは程々で止めて欲しいと思っている。

3、春に釣りはするが、春のクロダイはもとより秋の当歳魚も釣らないで、クロダイの資源の保護に努めたいと思っており、秋からのクロダイにすべてをかけている釣り人。
 産卵期に釣る事を嫌い、産卵後に釣るべきだとして、春に釣る事と、当歳魚を釣る人がいるから、クロダイが減少するのだ・・・と考えている。 

4、春から秋までクロダイ釣りはやるが、当歳魚は勿論2歳魚釣りもやらず、もっぱら40cm以上を対象にして、間違って小型を釣った場合はすぐに放流している釣り人。
 釣りに春も秋もない、春釣らなくとも、秋に釣れば、この魚は春を迎えられない、だから、季節での良否を言い合ってもナンセンスだし、小型を釣るのはマナー的に問題があるから、大きくなったクロダイを楽しむのが本来の釣り人の姿であると思っている。

5、一年を通して色々な釣りを楽しんでおり、特別クロダイにはこだわらないので、その時の諸条件で対象魚と釣法を変えて釣っている釣り人。
クロダイには余り執着していないので、時期は問わずにクロダイに適した条件の時にはクロダイも釣るが、時としてはクロダイより大形の魚種でマダイやスズキも狙えば、アジやサバ、それに最近はイカも釣っている。
どちらかといえば、オールマイティーな釣り人なので、クロダイのノッコミ論争などには余り関係したくないと思っている。

大体は以上の釣り人のタイプが大勢を占めており、これらの釣り人の間で議論が交わされるものですから鶏と卵的論争になってしまう。
本来、釣りの楽しみ方と、個々のポリシーは違って当たり前なのである。
同じ魚を釣る釣り人同志で、他人の釣りや、楽しみ方をとやかくいうべきじゃない。
個々に置かれる状況と立場での考え方は違って当たり前なのだから、お互いに理解を深め合い、いつまでも、お互いが(皆が)楽しい釣りを続けられる様に自分としては願うばかりであるが、個々の釣りに対する考え方は、おいそれと変わるものではない。

正論を見出すのは難しいのが本音である。しかし、自分の意見として敢えて述べるのであれば、どれが正しくて、どれが間違いとは断言できないが、「極論からすれば、魚は釣らなければ減少はしない」との結論になる。(勿論漁業者のクロダイ漁も減少の要因ではあるが)

ところが、釣り人はクロダイを釣りたいのであり、また、釣らせてもらっているのであるから、個々の釣りを互いに誹謗し合うような事では同じ釣り人として好ましくはないのである。
しかし、次に自分が提言する事柄は、釣り人のモラルとマナーの一つとして無理をしなくとも実行できるし、考え方を改められる範囲の事だと思う。

  1、産卵期のクロダイを対象とした釣り大会は控える
(最近、釣りメーカーの釣り大会が春から初夏に地区予選的に開催される事が多いが、気候的諸条件からして、安全と、大会の成立確率を考慮した上での企画による実施であるからして、年に1度程度の大会であれば容認すべき許容範囲だと思う)
  
 2、当歳魚は、食用としないのであれば、極力釣りを控え、また、当歳魚を釣り大会の対象にはしない。
(地元鶴岡市における秋の大会では、相変わらずクロダイの当歳魚を審査の対象としている場合も多いので、今後は是正していただきたい)
  
 3、クロダイの稚魚に関す放流事業などには理解を示し、出来る範囲で協力しよう。
(釣具店や釣りのメーカーでは放流の資金を毎年寄金しており、全国的な放流事業に協賛しています。ただし、放流さえすれば魚が増えるとの考えは安直過ぎるし、放流は諸刃の剣的な諸問題が絡んでいる事実は否めない)
  
 4、すべての海洋生物や魚族に対する環境保全を考え、汚染の原因となるような行為は控えよう。
(多量のコマセやゴミの投棄などには特に注意が必要だと思う。自分事で恐縮だが、近年は海岸の清掃活動の寄金を続けているが、これらも環境保全に対する協力の一つの方法だと思う)
  
以上、 簡単な自分なりの意見と提言ではあるが、如何なものだろう・・・・・ 
違法行為でない限り、他人の釣法や楽しみ方を非難したり、自分の考え方を無理に押しつける事は賢明だとは思えないし、人としてもやってはいけない行為だと思う。  (もちろん、違法でなければ何をやっても良いとは思わないが)
釣りとは、誰にも平等に許された健全なスポーツであり娯楽でもありますから・・・
 12 問題発言!!「浜」と「渚」?(2004年掲載分)           ホームページのトップに戻る 

 先日の夜に何気なく新聞に目を通していましたら、庄内の釣り文化に関する事が某大学での講義に特別講師を招待して実施されたとの事であります。
 私は興味を持ってその新聞の内容を読み始めましたが、私の期待とは裏腹な内容に、複雑な心境になってしまいました。
 
 この新聞報道によると、この講師の事を、砂浜で黒鯛を釣る渚釣りを最初に考案した第一人者であると紹介していました。
 庄内では50年も前から砂浜で黒鯛を釣る釣法「浜釣り」が確立されていましたから、渚釣りとは、この「浜」を「渚」に名称を変えただけの釣法の様な気がします。
 少なくとも、庄内といえば、江戸の時代から伝わる磯釣りのメッカです。
この庄内で育まれた磯釣りの釣法を庄内の独特な釣法として、今の時代に受け継ぎ、そして庄内釣法としての伝統の火を灯し続けてきたのは、誰でもなく庄内藩に縁のある純粋な庄内の人間であり、更には庄内藩の流れを汲む鶴岡に住む釣り人達でありました。
 
 庄内釣法をこよなく愛し、昔から伝わる武士道からくる釣りの極意は、釣果だけを求める様な安っぽい釣りではなかったはずでありますから、その釣技を今に伝え続けてきたのも鶴岡の釣り人(竿師も含めて)達であったと思います。
 ところで、この浜釣りのルーツを探りますと庄内の海岸でも北に位置する湯の浜がクローズアップされます。
 この湯の浜には低く広い岩場である「長磯」があります。昔は名場としてあまりにも有名でしたが、この長磯を中心にここら一帯をホームグランドとして昔から活躍していた地元湯の浜の著名な磯釣りクラブがありました。

 このクラブに所属して間もない若いメンバーにとっては、磯場での黒鯛釣りが多少難しい事もあり、危険も伴ったために、磯釣りに慣れるまでの間は、黒鯛を砂浜で釣る通称「浜釣り」をトレーニングとしてやらせていた経緯があります。
 この浜釣りは、磯釣りの黒鯛をターゲットとする釣り人から見れば邪道視されていた部分もあり、釣り大会などでは浜で釣った黒鯛は軽視されがちだった為に、大会の釣果としては恥ずかしい事として出品しない釣り人もいた程なのです。
話は戻りますが、この浜釣りの釣法が確立されてから相当の年月が経過した時期に、鶴岡の隣町である温海から「渚釣り」なる名称での新釣法が突如として誕生したのであります。

 温海から「渚のクロダイ釣り」の名称で急に誕生した新釣法には、やや戸惑いを感じた庄内(鶴岡)の釣り人も少なからずいたと思います。
 しかし、この新釣法の誕生に対して、鶴岡の釣り人はクレームをつける事もなくその成り行きを比較的静かに見守ってきたのが実状だと思います。

この新釣法に「渚のクロダイ釣り」との名称をつけた事が良かったのかも知れません。 仮に「浜のクロダイ釣り」が温海で初めて誕生した釣りであるとマスコミなどが報道するような事があったならば、「それはもともと庄内にはあった釣りである」などとの意見や反論が出てきますから、何らかのトラブルが発生したと思います。
 しかしながら「浜釣り」が「渚釣り」に変わった事により、耳障りも良く上品な釣りの様に感じてしまい、一般的には浜釣りとは違う釣りのように思われてしまう様です。 
名称ひとつの違いで、その訴求力が大きく異なるものですから、名称とは不思議な力を持つものだと改めて感じます。

 この「渚釣り」の名称が全国的に広まったのは、今から約25年ほど前に出版された一冊の釣りの本による影響が非常に大きかった思います。
 この本を出版した編集責任者は、知る人ぞ知る、当時では有名な投げ釣りの名手で某メーカーの契約プロでもあったS氏でありました。
 このS氏が国内において売れる釣りの本を出版する為の戦略として、当初は各地の釣法とポイントを網羅した釣りの本を出版計画していたのですが、渚でクロダイを釣る釣法を知り、これをメーンとした本の方が奇抜であり面白いと思ったのでしょう、急遽路線を変更してこの「渚釣のクロダイ釣り」のタイトルが表紙を飾る事になったのです。
 この「渚釣り」に原稿を投稿したのが、後に渚釣りで評判となる温海の釣りクラブの某氏であります。
 
 昔から、鶴岡の湯の浜地区の他にも、国内には砂浜からクロダイを釣る一風変わった伝統的な釣法などがありましたが、当時から延べ竿に太鼓型リールを取り付けて、砂浜の波打ち際からの払い出しに仕掛けを流し込んで釣るフカセ的釣法は、やはり庄内の湯の浜地区独特の釣りであったと思います。
しかしながら、この釣りが湯の浜で始まってから30年以上も経過した頃になり、国内各地で渚釣りとして人気が出始めたのは、「渚のクロダイ釣り」が出版された事が最大の要因であると思います。

 湯の浜地区において昔盛んに行われた初期の浜釣りにおけるタックル(釣具)と言えば、竿は言うまでもなく竹製の庄内竿を用いていた訳ですが、竿の長さは平均で3間半(6.3m)の物を主に使っていたらしく、初期は太鼓型(両軸受けリールも含め)のリールが存在しない時代であったために、竿にリールはつけないで、竿先に釣り糸(ミチイト)を直接結びつけたままの状態であったらしいが、仕掛けの釣り糸は竿より一尋(約1.5m)から一尋半(約2.3m)ほどの馬鹿(釣り糸が竿より長い部分の事)を出して、払い出しのあるポイントにこの仕掛けを振り込んでいたとの事です。

 仕掛けには錘を付けないフカセ釣りが基本であったので、単純に考えても、竿より遥かに長い仕掛けを振り込む訳ですから、かなりの技量を要したと推測されるものです。 現実的には自分こと魚信も、この竿の振込に係る技術を少しは習得しておりますので言える事ですが、この振込には少なからずとも技術的なコツがありますから、このコツを覚えれば、仕掛けの先に付けてある釣針とエサだけの重さを利用して仕掛けをポイントの先に振り込む事が可能になる訳です。

 話のついでですが、どの様な釣りの場合でも、仕掛けを飛ばす為には、竿を力任せに振り込むだけでは仕掛けはなかなか思うようには飛んでくれません。
 竿を振り込む時に、竿だけを大きく振り込みますと、竿に大きな空気抵抗が生じますから、仕掛けを飛ばすどころか、振込み時の空気抵抗の衝撃で竿を折損してしまう事が非常に多いのです。
 どんな事にでも言える事ですが、ちょっとしたテクニックをマスターする事で、普通では不可能な技術も、案外簡単にクリヤーできるものなのです。
このテクニックの詳細はまたの機会にしますが、これらのテクニックなどを駆使した庄内釣法の技術は、200年も昔から庄内藩の武将達が体得していた訳ですから驚きではあります。
 
 この浜釣りに対する釣りのポリシー云々は別として、今で言う渚釣りのベースを作り上げたのは、この浜釣りの歴史と文化が存在していたからであると思いますから、これらの事実を顧みる事無く、あたかも渚釣りの釣法は最近の釣り人により考案された釣りとして祭り上げられ、語り継がれる事に対して、黙って見過ごす事は、釣りの歴史を嘘で捻じ曲げてしまう事になります。

近年評判の庄内における渚釣りは「浜釣り」の延長にすぎない釣法である事は、疑うまでもなく判りきった事なのですが、この世の中には自分が元祖○○とか本家△△であるなどとの言動が飛び交います。
 しかし、本物や真実を模倣した偽物は、たとえどの様に取り繕ってみたところで、これらは本物でもなければ真実でもないのです。
 ところが、本物でもなく真実でもない事の方が一般受けする場合が多いのも昨今の釣り事情でもあります。
 
 最近は歴史や文化を尊重するよりも、目の前のカッコ良さに惹かれる釣り人の方が圧倒的に多い様な気がします。
 ここ庄内に生まれ庄内で育まれた庄内釣法と昔ながらの庄内竿はあまりにも有名ではありますが、今はその光り輝く歴史と名だたる多くの名竿も色あせてしまった感があります。
 これらの良さと技術を駆使して実釣出来るほどの釣人は少なくなったばかりか、これらの理論を解いて正確に語り継ぐ釣り人も今となっては皆無同然なのです。

 このような状況が長く続いてきましたから、どれが本物で真実なのかが判らなくなってしまったり、判る必要も無い状況になってしまった事も事実であります。  
本来の庄内釣法を駆使する為には、海に対する多くの知識を身に付ける事から始まります。
 これらの多くの知識を習得した者だけが本当の本物の庄内釣法を駆使出来るのであり、釣り場においては究極のポイントに竿を振り込む事が可能な釣り人なのです。
 最近の釣り人の動向を注視しておりますと、これらの知識を体得するよりも、タックル(釣具全般)やファッションを重視する傾向にありますから、必然的にモラルやマナーは置き去りになります。

 江戸時代の昔には、海までの長い道のりを歩く事が武士の精神と体力を研鑚させるには最適であると、庄内藩の武士に奨励されてきた庄内の釣りは、武士の釣りであり、釣りが武士の魂を鍛え上げたとも言われていますが、これらの歴史的事実も遠い時代の淡き夢や幻の如く、いずれ消えつつある事も懸念されます。

しかし、これら庄内釣法から編み出された浜釣りも歴史の中では偽りの無い真実の釣法でありましたから、たとえ誰であろうとも、これらの事実を無視して、あたかも自分達が全て開発した釣法であるがの如く、今の時代に吹聴するのは褒められた事ではありません。
 13 釣具業界と知的所有権 (2009年掲載分)             ホームページのトップに戻る 

 知的所有権とは誰にとっても身近な存在なのですが、通常は目に見えないばかりか深く考える事も少ないものですから案外軽視されがちです。
 ところが、商売や事業に関係する者にとっては時としてその運営の死活にも大きな影響を及ぼす程のパワーを秘めているのがこの知的所有権なのです。
 
 この知的所有権で工業所有権4法の代表格となる「特許」は誰もが知っている強力な権利になりますが、この他の権利として、実用新案、意匠、商標があります。
 また、工業所有権とは別の権利として保護されるものに著作権がありますが、その権利内容については国内での権利関係の法的運用調整が100%ではないので、判り難い部分がある事は否めませんが、これも立派な権利になります。
 
 これらの工業所有権と著作権の所有者は、排他独占権を得られるものですから、当然これらの所有権者の許諾を得ないで実施や使用はできない事になっております。
 もし、これらの決まりごとを無視して実施や使用をした場合は、故意過失を問わず、刑事罰や民事での賠償責任を問われる事になります。
 現在、刑事罰などが強化されまして、その罰金などの最高額は個人で数百万円、法人なら億単位の金額にも膨れ上がっておりますが、これらの実情を知ってか知らずか、これら権利の存在を無視した多くの違法的な模造品や商標をなどを用いた不正商品が数多く氾濫しています。

 釣具の業界に身をおいている自分事加藤魚信は、多くの釣りを実践したり釣具を販売するばかりではなく、釣具の開発にも心血を注いでいます。
と言うより、釣りをしたり釣具を販売するだけで食っていけるほど近年の業界情勢は甘くはありません。実際、当地域に存在した釣具の販売店はここ10数年で約70%が倒産や廃業している事実がこれらの状況を明確に浮き彫りしている事にもなりますが、客観的にみてもこの衰退状況は異常なのです。

 釣具の開発と言っても、マイナーチェンジ的なものから特許を取得するほどのハイレベルものまで千差万別なのですが、完成してしまえば些細なものでも、その完成に至るまでのプロセスは、他人が思う数倍、いや数十倍の時間と労力や努力が必要なのです。
 このやっとで完成した製品や商品が業界内で評判になったり売れる様になると、すぐさま業界内には違法なコピー商品が出回ります。

最近のマスコミ報道などで「不正競争防止法」と言う、あまり耳慣れない用語が時々出てきますが、実は、この法律そのものは数十年も前からあったものなのです。
 その適用となる事件は過去に数多くあったにも拘らず、運用面が難しかった事もあり、被害者側も告訴や提訴には二の足を踏んでいた場合が多く、被害者はもとより警察と裁判所も同じ様に腰が引けていたように感じます。
 
 この法律の趣旨は、主に、工業所有権などの知的所有権としての権利の登録がなくても、一定の条件に当てはまれば、ライバル会社などによる商品の模造品や、不正な方法での取引妨害、不正な契約などがあった場合、これらの不正行為を差し止めたり、損害賠償金などを請求する事が出来る法律ですから、場合によってはこの法律を犯した者に対する実刑もあります。

 ところが、実際問題として、例え工業所有権の権利を持っていたり、明らかに不正競争防止法が適用されると思われるケースに遭遇したとして、告発や提訴したとしても、警察や裁判所の対応が今だにスムーズとは言えない状況ですし、これらの事件に対して、警察や裁判官が不慣れな場合などは、事件解決までには気が遠くなるほどの時間がかかる場合があります。

 事実、これらの事件の被害者側の立場で自分も裁判や刑事事件につい最近まで関与した経緯がありますので、ここに紹介させていただくものですが、私たちが住む日本と言う国は、相も変わらず、これらの知的所有権に関わる加害者側に対しての措置が甘いと言っても過言ではありません。
 従って、これらの事件がなかなか少なくならない事と、不正をやったもの勝ちの様な矛盾した状況が相変わらず続いているのだと思います。

 事件解決までに時間がかかると言いましたが、特に裁判の場合、現在は東京の裁判所に専門部が出来ているために、東京の裁判所に提訴すれば効率的には良いのですが、地方にいる人間としては、裁判所に何度も足を運ぶ事になるために、その時間と費用などで参ってしまいます。
 最近は地方の裁判所と東京の裁判所において電話を使った裁判の方法もあるにはあるのですが、大半は東京まで出向いての裁判になります。  
 それに、裁判の代理人として、弁護士に依頼しなければとても裁判はできませんので、更に膨大な費用がかかります。