監督は『イン・ハー・シューズ』のカーティス・ハンソン、主演はラップ・ミュージシャンのエミネム、その他、『17歳のカルテ』などのブリタニー・マーフィー、『ナイン・ハーフ』のキム・ベイシンガーなども出演しています。エミネム自身が、白人のラッパーとしてデビューする前に、黒人ラッパーから見下されていた経験を元に描いた青春映画ですが、さわやかな青春というよりは、貧民街で生活苦にあえぎながら夢を追う若者を生々しく描いた秀作です。ラップアーティスト、エムネムの半自伝的な作品ということで話題になった青春映画です。工場労働者として働きながら、プロのミュージシャンになる夢を追い続けるというストーリーには目新しさはありませんが、下町での貧困生活、暴力沙汰、挫折感などが生々しく描かれ、お気楽ハッピーエンドな青春ではありません。主役ジミーの同じように夢を持ち、苦しい生活をしている方にとっては、リアルで共感を持ている作品だと思います。
住む場所さえ見つけられないほどの貧しい生活、エアコンのない職場で、暑さ寒さに耐えながら油まみれになっての肉体労働。車を買う金もなく、バス、電車通勤。私も似たような経験がありますが、日本でも、同じような労働環境、あるいはもっとヒドイ環境で働きながら、夢を追い続けている方もいるんじゃないでしょうか。似たような経験をした事がある方なら、その生々しい描写にリアリティを感じると思います。しかし、厳しい状況だからといって、夢を実現させる為の努力をしなければ、夢には近づけません。主人公のジミーは、時間があればアイディアを書きとめ、努力し続けます。努力をし続けるということが一番難しいのかもしれません。
いつ夢に諦めをつければいいのか?
夢を追いながら努力していても、なかなか結果が得られず、トラブルは多く生活は苦しくなるばかり、同世代の友人は就職して安定した生活を築いていく・・・。こういう状況に置かれると、誰しも挫折感を味わい、夢をあきらめかけてしまうと思います。ジミーのセリフには、こういった実感が込められています。
お前に原因があるからさ
まだ若く自分本位の考えしかできないジミーは、職場でも、なぜ自分だけが文句を言われるのかと不満をもらします。それに答えてベテランの同僚が答えるセリフですが、自分に原因があることを自覚し、人間的にも成長していくジミーの姿と、その成長を素直に認める上司の姿には、努力は必ず認められる、報われるといった希望を与えてくれます。