ハリーは７２歳だが、まだ元気で猫のトントとニューヨークのマンハッタンに住んでいた。ハリーは、住み慣れた町にずっといたいと思っていたが、町の区画整理の為、強制的に立ち退きを命じられ、長男のバートの家に住むことになるが、同居をはじめてすぐに、娘のシャーリーの住むシカゴに向かって旅に出る。猫のトントと気まぐれな行動のせいで、車での旅になるが、今までの人生で体験した事の無いような刺激的な経験が待ち受けていた・・・。

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　１９７４年アメリカ作品。監督は、『グリニッチビレッジの青春』『結婚しない女』『ハドソン河のモスコー』などのポール・マザースキー、出演は、この作品でアカデミー賞、ゴールデングローブ賞、アトランタ映画祭で主演男優賞を受賞したアート・カーニー。老人と猫が車で旅をするという異色のロードムービー。アカデミー賞を受賞したアート・カーニーの演技も見事ですが、先見的なテーマを題材に、旅で出会う人々の様々な生き方、その人々とのふれあいから希望を見出していく主人公の心の動きなど内容的にも秀作です。

　アカデミー賞の作品賞を受賞してもおかしくないほどの７０年代を代表する名作！ポール・マザースキー監督の最高傑作とも言われています。ロードムービーと言えば、若くワイルドな男たちの旅や、カップルの逃避行が一般的ですが、この作品では、７０歳を超えた老人と飼い猫の旅という所が、まず異色です。旅で出会う様々な人々、家で娘、高級娼婦、行商人、インディアンの呪術師などなど個性的なキャラクターが旅を面白くして、観ているうちに、もっともっと旅を続けてもらいたいと感じてしまう魅力があります。また、主演のハリーの、子供に頼ろうとしない独立心のある前向きな姿勢にも惹かれます。旅で出会う人々、ハリーの子供たちも、ハリーを愛し、それぞれの生き方で一生懸命に生きている姿にも好感が持てます。ハリーの友人、家族、旅で出会う人々は、人間に対する悪意がなく、とても親しみやすいキャラクターが多いのは、時代のせいかもしれません。

自分の居場所を探す旅

　近年、日本でも高齢化社会が問題になっていますが、この作品は７４年度作品。ポール・マザースキー監督の先見の明には驚かされます。生まれ育った場所で生涯すごしたいと望む人も多いと思いますが、犯罪が増えて住みにくくなり、街も人も変わってしまって、親しい友人や家族がいなくなってしまった場所は、もう故郷とは思えなくなってしまうかもしれません。ちょっと勇気を出して、新しい居場所、新しい友人を探した方が、人生が楽しくなることもあるかもしれませんね。

おばさん好きだけど、バカだ

　ハリーの孫のノーマンは、精神的な充足を求めて無言の行をし、ヒッピーコミューンを目指しますが、おばさんに対して、こんな言葉が出てきてしまいます。物質主義の世の中を否定するような価値観を持っているノーマンにとっては、おばさんの生き方が理解できないのでしょう。生き方については賛成できないけど、おばさんの事が大好きというノーマンの気持ちが伝わってくきます。

 

善人には良い呪文を、悪人には悪い呪文を・・・

　ハリーが刑務所で一緒になったインディアンに、慢性的な肩の痛みを直してもらうシーンが印象的です。悪い人間は、死んで当然だと言うインディアンのセリフが笑えますが、長年苦しんできた肩の痛みを簡単に直してしまう非科学的なインディアンの能力にも感心してしまいます。

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