人類が地球上に現れる前、人類の祖先である猿人は、謎の物体モノリスの出現によって、道具を使うようになり急速な進化を遂げる。そして、２００１年、人類は宇宙旅行を可能にしただけではなく、宇宙に入植するまでに科学を進歩させ、推定で４００万年前に月に埋められた謎の物体を発見。その後、ボーマン船長が指揮をとる宇宙船木製探査に向かうが、宇宙船を制御しているコンピュータが人間の命令を無視して、反逆を起こしてしまう・・・。

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　１９６８年アメリカ・イギリス合作。監督は『時計じかけのオレンジ』『アイズ・ワイド・シャット』などのスタンリー・キューブリック、主演は、ケア・ダレー、ゲイリー・ロックウッド など。近未来の宇宙開発を描いた古典的なＳＦ作品。

　この作品ほど、後のＳＦ作品に影響を与えた作品は無いかもしれません。１９６０年代の作品とは思えないリアルな宇宙の描写、人類の進化のきっかけとなった謎の物体モノリスの神秘性、高度な知能を持ったコンピュータが感情を持ち人間に反抗するというコンセプトなど、近年の宇宙をテーマにした作品のほとんどのアイディアが詰まったような凄いＳＦ作品です。スタンリー・キューブリック監督が、製作、監督、共同脚本を担当し、彼の芸術的、哲学的なセンスが色濃く反映された作品だと思いますが、今さらながらに、彼の唯一無二の才能、高度な哲学感と芸術センスを痛感させられます。クラッシック音楽をＢＧＭに使った宇宙の映像の美しさは、今観ても古さを感じさせない映像センスですし、地球外生命体なのか？神なのか？と争点になる謎の物体モノリスの正体や、モノリスによって一瞬にして時間を超越する謎のシーンは、いまだに明確な答えが得られない難解なシーンとして映画ファンの想像力を刺激してくれます。また、人類が一番最初に使った道具が、武器だったという発想にも、人間の動物としての凶暴性を暴いているような説得力があります。この作品は、１９６８年度作品なので、約３０年後の人類の未来を予想した作品でしたが、実際に２００１年を過ぎて、『２００１年宇宙の旅』というタイトルには、近未来ＳＦとしてのイメージは持てなくなってしまいました。しかし、まだ、宇宙旅行や木製探査などは実現していないので、タイトルを無視して、これから３０年後、５０年後というテーマで考えれば、まだまだ近未来ＳＦとしての可能性を感じながら楽しめます。インターミッション（途中休憩）が入るほど長い作品で、『人類の夜明け』『木星使節』『木星 そして無限の宇宙の彼方へ』という３部構成になっていますが、激しいアクションや意外なストーリーなどの人間的なドラマがあるわけでは無いので、娯楽作品としてのＳＦ映画を期待する方にはオススメできません。しかし、ＳＦ映画の金字塔として、また、スタンリー・キューブリック監督の代表作として、映画ファンには絶対に見逃せない作品でしょう。

過去の例が示すように、ミスを犯すのは人間です。

　反乱を起こすコンピュータＨＡＬ９０００のセリフですが、妙に納得してしまいます。ハードウェアの故障や、バグなどによる誤作動など、コンピュータも完璧ではありませんが、その不完全なコンピュータを作ったのは、不完全な人間であり、どんなに完成度の高いコンピュータでも、人間が間違った使い方をしたり、ミスをしたりしては、完璧なコンピュータを生かすことはできません。人間の不完全さを補う為にも、コンピュータの反乱は必要不可欠なファクターなのかもしれません。

 

２０１０年宇宙の旅もありますが・・・

　この作品が大ヒットした為、続編『２０１０年宇宙の旅』も製作されました。『恐怖の報酬』などに出演しているロイ・シャイダーを主役に起用していますが、１作目の『２００１年宇宙の旅』の難解なシーンを乱用して、１作目の深遠なコンセプトを台無しにしてしまうような作品になってしまい、スタンリー・キューブリックのコンセプトを理解できるような優秀な監督はいないという事を証明してしまったような作品なので、観なくてもいいような気がします。

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