アメリカ、ＪＦＫ国際空港の国際線ロビー、クラコージアからの便で到着したばかりのビクター・ナボルスキーは、彼の母国クラコージアで、クーデターが発生し、旧政権が崩壊した為、彼のパスポートは無効状態となり、アメリカへの入国が出来ない状態になってしまう。父親との約束を果たす為にも何とかニューヨークへ行こうとするビクターだが、トラブルを避けたい空港の管理責任者フランクは、何とかビクターを自分の管轄から離れた場所へ隔離しようと、策略をしかけはじめる。食べ物にも困るような空港内での生活をはじめたビクターだったが、彼の人柄の良さもあり、空港内で働く人々が、ビクターに協力しはじめる・・・・

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　２００４年アメリカ作品。世界一のヒットメーカー、スティーブン・スピルバーグ監督作品。主演は『フォレスト・ガンプ　一期一会』『アポロ１３』のオスカー俳優トムハンクスと、『エントラップメント』『シカゴ』などで有名なキャサリン・ゼタ・ジョーンズ。スピルバーグ作品の中では比較的地味な作品かもしれませんが、主演のトム・ハンクスとキャサリン・ゼタ・ジョーンズの好演によって人間味豊かなドラマに仕上がっています。

　私は個人的に、スピルバーグ作品にほとんど興味が無いのですが、この作品は予想以上の作品でした。全体的にストーリーが中途半端なような気もしますが、恋愛、友情、親子の愛などのテーマがうまくミックスされて、メインの物語を邪魔しない程度のサイドストーリーにも好感が持てます。個人的な評価としては、キャサリン・ゼタ・ジョーンズの名演が一番際立っていました。彼女は、美人なんですけど、モデル出身という事で、どうしてもモデルのプライドが目に表れてしまって、好きになれませんでしたが、この作品でのお人よしの負け犬役は、リアルに演じきっていると思います。深読みし過ぎかもしれませんが、キャサリン・ゼタ・ジョーンズ演じるアメリアのセリフには、万人に共通する心の欲求が表現されているような気がします。映画の後半に、ビクターが、なぜニューヨークにやってきたのか、という謎が明らかになり、ジャズファンにとっては、馴染み深い名前が色々と出てくるので、ジャズファンにもオススメできる作品です。

あなたのような男性が、絶対に理解できない事よ

　誰もがうらやむような美貌を持つスチュワーデスのアメリアが、空港で足止めを食っている冴えない中年男に関心を持つのか、空港の管理責任者であるフランクには理解できません。社会的地位や富、名声などを絶対的な価値と考え、自分にとって損か得かということが判断の基準になるような人間には、人間の本質的な魅力や、存在価値がわかるはずもありません。こういうタイプの人間が悪いとは言いませんが、このセリフと通り、一生かかっても理解しあえないのは間違いないでしょうね。

何を待っているのか

　アメリアは愛する男性を待ち続けて、待ちくたびれてしまっています。多分、女性にとっては、愛する伴侶と、幸せを待っているんだと思いますが、待つことに疲れてしまい、あきらめてしまったり、一体何を待っているかさえ分らなくなってしまったりする人も多いと思います。でも、待っているだけではなく、自分から探しにいかないと見つからない物、人なども多いのかもしれませんね。

　この作品に出てくるグラコウジアという国は、架空の国で実際には存在しませんが、その昔、今のロシアがソビエト連邦だった頃、ロシア周辺の小国の多くが、ソビエト連邦に属していたので、架空の国とはいえ、ちょっとリアルな感じがします。ソビエト連邦崩壊後に、独立を宣言した国も多く、クーデター、内乱などの事件も多かっただけに、作品にリアリティを出すには、ロシアの近くの国という設定が一番良かったのかもしれません。

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