1953年日本映画。監督は小津安二郎。出演は『男はつらいよ』シリーズなどの笠智衆、原節子など。成長した子供たちと両親のふれあいを描いた人間ドラマ。
小津安二郎監督の代表作であり、日本映画の傑作として世界でも評価の高い名作映画です。1953年度作品でモノクロ、かなり古い映画なので名作とは聞いていても、なかなか観る気にならず、最近購入して鑑賞しましたが、いやー、本当に傑作です。小津安二郎監督独特の撮影方法によって、自分も登場人物の身近にいるような感覚でストーリーに入り込めるので、ゆったりとリラックスした気分で鑑賞できるので、疲労感を感じることなく最後まで楽しめますし、感動作として泣けるだけでなく、人生に関して多くの教訓を得られる名セリフが多く、何度観ても感動できる名作です。核家族化、高齢化社会という重い問題をテーマにした作品の割には、平和な日常生活にホッとするような作品ですが、まだ若い人たちも、これから嫌でも避けては通れない問題を扱った作品なので是非観てもらいたいですね。年老いた夫婦の東京への旅行を中心に描かれているので、派手なアクションや特撮はありませんが、日本映画の最高峰として絶対に観るべき名作の一つでしょう。
古い作品なので、年配の映画ファンの間で人気がある作品ですが、本作の昔からのファンも、もう主人公と同じ年齢になり、本作の感じ方が違っているかもしれません。1950年代の作品ですが、今の時代に観ても家族の関係というテーマは古さを感じさせません。他人事では無いと感じている人も多いのではないでしょうか。この作品の長男や長女のように親を邪魔者扱いしている人もいれば、次男の嫁の紀子のように義理の親でも大切にしている人もいるでしょう。親孝行していないなと自覚している人なら、この作品を観て反省する機会を得らるでしょうし、親孝行している人なら、紀子に共感をもてるかもしれません。私は反省するほうですが・・・。
あんな奴じゃなかったんじゃが・・・
自分の子供が変わってしまって冷たい人間になってしまった事を嘆く、こんなセリフも、時々耳にすることがあります。今の世の中、家族を養うだけでも大変で、疲れきっている人も多いですから、責めるのは酷かもしれませんが、人間らしい優しい気持ちは失いたくないですね。
戦争はこりごりだ
決して強い口調で反戦をアピールしているワケでは無いんですが、淡々とした口調の中に実感がこもっています。戦争になれば、愛する友人や家族を失ってしまいます。戦争を経験した人が少なくなり、戦争を知らない人が増えている現代社会では、戦争の恐ろしさを甘く見るような風潮があって怖くなります。今の時代だからこそ、この言葉が重く感じられます。
いやァねえ、世の中って
本作で冷たい人間として描かれている長男と長女も、こんな世の中だから、人間性が変わってしまうんでしょうね。これは、日本だからとか言う事ではなく、私たちが生きている世界全体が、悪に支配されているからでしょうね。まぁ、一概に環境のせいにだけではないんでしょうけれど・・・。
こんな事なら生きているうちに・・・
どんな人間も、いつかは居なくなってしまうんですよね。だから、愛する家族や友人には、生きているうちにできるだけ優しく接したいですね。当たり前の事なんですけど、つい忘れがちな事です。