中国・湖南省西部の山間地帯、車も通れない険しい山岳地帯で、徒歩での郵便配達の仕事を続けてきた初老の男は、過酷な労働で足を患い、息子が仕事を引き継ぐことになる。息子のはじめての仕事の日、父は、愛犬の次男坊とともに息子の仕事に同行し、息子に仕事を教えて、自分の最後の務めとしようとする…。
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　１９９９年、中国のアカデミー賞である金鶏賞は、世界的に評価の高かったチャン・イーモウ監督の『あの子を探して』が本命と思われていましたが、この作品が、作品賞と主演男優賞を受賞、さらに、モントリオール映画祭観客賞受賞、 インド国際映画祭銀孔賞（審査員大賞）受賞なども受賞し、世界的に中国映画がが見直されるきっかけにもなった名作です。

　中国の映画で、どの作品が一番好きかと聞かれれば、私は迷わずこの作品を挙げると思います。険しい山道を２泊３日の行程で１２０km近く徒歩で歩き、手紙を待つ人々の為に、喜んで働く男の姿に、まず感動しますが、仕事の都合でほとんど子供との時間を取れなかった男と、その息子の親子の愛情にも涙が止まりません。中国山間部の神秘的な風景を楽しめるのも嬉しいですが、主人公の質素で善良な生き方に、人間として、もっとも重要な生き方の基本を教えられます。厳しい競争社会に生きていると、いつのまにか自失し、人間らしい生き方を忘れてしまいがちですが、この作品には、生き方の原点に戻れるような力があり、一年に一度は必ず観るようにしています。私の人生に欠かせない名作です。

こんなツライ道とは知らなかった

　郵便局の局長が、２泊３日の配達に同行した後、こう言って、ツライ仕事をさせてしまったことを謝罪したそうですが、現場で働く人間が、どれほどツライ労働をしているかという事を知らない管理職の人は、かなり多いと思います。しかし、配達をしている本人は、やりがいのある仕事と考えて、誇りを持って働き、出世にも興味がありません。こういう謙虚で勤勉な人は、最近では中々いないと思いますが、こういう人が増えれば、世の中も変わるでしょうね。

愚痴はこぼすな

　痛い一言でした。私も色々と過酷な仕事を経験しましたが、そんな時、二言目には愚痴が出てしまいました。私はバカなので、自分本位の考え方になって会社が悪いだとか、社会が悪いだとか愚痴をこぼしてしまいますが、本当に勤勉な人は、どんな仕事でも、人や仕事に感謝して謙虚に働いているのかもしれません。男のクセにブチブチ言うな！と叱られたような気持ちになり、反省させられました。私もいつか、この映画の主人公のような人間になりたいですね。

出来る限りしてやるのは当然だ

　目の不自由な老人に手紙を届け、創作の手紙を読んでやるシーンには、とにかく泣かされてしまいます。自分の利益にならなくても、不幸な境遇の人に、出来る限りの事をしてやりたいという気持が当然だと考える主人公には、本当に感動します。他人に対しての親切が当然だと考えられる人が少なくなっているからこそ、一層感動するのかもしれません。

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