もはや、伝説・・・

　１９７０年代の初頭、スティーブン・タイラー（Vo）、ジョー・ペリー（G）、ブラッド・ウィトフォード（Ｇ）、トム・ハミルトン（Ｂ）、ジョーイ・クレイマー（Ｂ）の５人によって結成され、ヤードバーズなどのブリティッシュロックのバンドの音楽性に強い影響を受けたハードロックバンドとしてデビューします。３枚目のアルバム『闇夜のヘヴィロック』から、大ヒット曲『ウォーク・ディス・ウェイ』『スウィート・エモーション』が生まれ、世界的なハードロックバンドとして大成功を収めます。その後も『ロックス』などの名盤を発表し、アメリカを代表するハードロックバンドとしての地位を築いていきます。

　１９７８年、アルバム『ナイト・イン・ザ・ラッツ』のレコーディング中にジョー・ペリーが突然脱退。ジミー・クレスポが新ギタリストとして加入しレコーディングは続けられ、アルバムは無事発表されたものの、評判が最悪。さらに、もう一人のギタリスト、ブラッド・ウィトフォードもバンドを脱退、追い討ちをかけるようにスティーブン・タイラーの入院と、エアロスミスにとっては、まさに試練の時を迎えます。ちょうどこの頃、ＭＴＶが世界的なブームになり、他のアーティストが、プロモーションビデオの製作に巨費を投じるようになっていましたが、落ち目になっていたエアロスミスは、ＰＶに十分な費用もかけられず、すっかり世間に忘れられてしまいました。エアロスミス脱退後、ジョー・ペリーは、ジョー・ペリー・プロジェクトというバンドを結成し、アルバム３枚を発表しますが、全盛期のエアロスミスのような成功を収める事はできませんでした。当時の噂では、ジョー・ペリーの恋人が、『バンドを脱退してソロ活動をするべきだ！』と炊きつけたという話ですが、本当かどうかは？？？です。

　１９８４年、オリジナルメンバーが復帰したエアロスミスの復活は、意外な事がキッカケになりました。ラップグループのRUN D.M.Cが彼らの名曲『ウォーク・ディス・ウェイ』をカヴァーし、ＰＶにスティーブン・タイラーとジョー・ペリーが参加、カヴァーされた曲が大ヒットを記録した事もあり、エアロスミスの過去のアルバムも再評価され、さらに、ポップセンス溢れるアルバム『パーマネント・バケーション』『パンプ』の中からシングルヒットを量産し、長い低迷期を経て、完全復活しました。８０年代初頭のＭＴＶの人気が頂点に達していた頃に、バンドが最悪の状況で、まともなＰＶを製作できなかった反動なのか、『パーマネント・バケーション』のアルバム以降は、ＰＶの製作に異常なほどの労力と制作費を使うようになりました。バンドのメンバーも積極的にＰＶ製作に参加、人気女優のアリシア・シルバーストーン や、スティーブン・タイラーの娘リブ・タイラーなどを起用し、とにかくゴージャスなＰＶを次々に作っています。２００１年には、ついに『ロックの殿堂』入りを果たし、ハードロックというジャンルを超えて、全世界のロックファンに愛されるビッグバンドとして活躍中です。

ヤードバーズの俗悪版？

　ヤードバーズ、ローリング・ストーンズなど、ブルースの影響を強く受けていた６０年代のイギリスのバンドに憧れて結成されたエアロスミスですが、セックス、ドラッグ＆ロックン・ロールという、ロックミュージシャンのライフスタイルをそのまま体現するような彼らの音楽は、ブリティッシュロックのバンドに比べて毒々しく、ナイフで切りつけられるような粗暴なセンスに満ちていました。敬愛するローリング・ストーンズの前座を熱望した彼らに、ミック・ジャガーは、『お前らは、ヤードバーズの俗悪版みたいだから』と言って断ったというエピソードもあります。

　ガンズン・ローゼズもエアロスミスに大きな影響を受けています。メンバー構成はエアロスミスと同じですし、デビュー当時にメンバー全員がアパートに同居していたり、ドラッグやアルコール浸りの生活をしていたなど、共通点も多く、ライブ盤『ライズ』では彼らの名曲『ママ・キン』をカヴァーしています。