ポップセンスのあるプログレッシブロック
1969年、 クリス・スクワイア(B) ジョン・アンダーソン(Vo)、
ビル・ブラッフォード(Ds)、 ピーター・バンクス(G)、 トニー・ケイ(Key)の5人のメンバーでデビュー。デビュー当時は、プログレッシブバンドというより、サイケデリックムーブメントに影響を受けたアートロックのような音楽性で、バンドの中心的な存在であるジョン・アンダーソン、クリス・スクワイアが、共にサイモン&ガーファンクルの大ファンだった事もあり、コーラスパートを重要視したサウンドでした。3作目の『サード・アルバム』では、クラッシック音楽とロックの融合、大作志向など、プログレッシブロック系のバンドへと音楽性が成長し、デビュー当時のメンバー、クリス・スクワイア(B)
ジョン・アンダーソン(Vo)、 ビル・ブラッフォード(Ds)の3人に、スティーブ・ハウ(G)、リック・ウェイクマン(Key)を加えて製作された『こわれもの』は、プログレッシブロックのジャンルだけでなく、ロック史に残る名盤になりました。続くアルバム『危機』で頂点を極め、このメンバーで活動した時期が黄金期と言われています。日本でも、ロック雑誌で、プログレッシブロックバンドとして、はじめて人気投票の1位になるなど、幅広いファンに支持されました。
『こわれもの』『危機』という2枚の名盤を発表した後、ドラマーのビル・ブラッフォードがキング・クリムゾンへ参加する為に脱退、アラン・ホワイトがドラマーとして参加して活動を続け、秀作アルバムを発表しますが、リック・ウェイクマンの脱退、ジョン・アンダーソンの脱退などで何度もメンバーが変わり、パンクムーブメントの影響もあって人気が低迷しています。ジョン・アンダーソンの代わりにヴォーカルとして参加したのは、『ラジオスターの悲劇』の大ヒットを放っていたバグルズのトレヴァー・ホーンでしたが、後に、バグルズのもう一人のメンバー、ジェフ・ダウンズは、スティーブ・ハウらとともにエイジアを結成しています。これによって、クリス・スクワイアー、アラン・ホワイトは、イエスとしての活動を実質的にあきらめ、解散状態になってまいます。
クリス・スクワイアー、アラン・ホワイトの二人は、ギタリストのトレバー・ラビンを加えてシネマというバンドを結成し、プロデューサーにトレヴァー・ホーンを起用し、トレバー・ラビンの曲を中心にレコーディングを開始します。リードヴォーカルはトレバー・ラビンが担当していましたが、個性的なヴォーカルが必要だと考えたトレヴァー・ホーンの提案で、ジョン・アンダーソンがヴォーカルとして参加、デビュー当時のメンバーであるトニー・ケイをキーボーディストして呼び戻し、イエスとしてアルバムを発表します。新生イエスのアルバム『ロンリーハート』、イエスとして最大のヒットシングル『ロンリー・ハート』を生み出し、続く『ビッグ・ジェネレイター』からも、『リズム・オブ・ラブ』が大ヒット、再びメジャーシーンに躍り出ました。
黄金期のイエスのサウンドとは全くかけ離れたサウンドで成功を収めたイエスですが、作曲、アレンジなどで主導権を握っていたトレバー・ラビンとジョン・アンダーソンの対立から、ジョン・アンダーソンが脱退。イエスの黄金期のメンバーである、ジョン・アンダーソン、ビル・ブラッフォード、リック・ウェイクマン、スティーブ・ハウが再び集まり、ABWHを結成、イエスというバンド名をめぐって、裁判沙汰になったりと、新メンバーと、旧メンバーの間でゴタゴタがたえませんでした。その後、ジョン・アンダーソンとトレバー・ラビンが和解し、新旧イエスのメンバー8人が結集してアルバム『結晶』を発表。このメンバーでのアルバムは、この一枚のみで、その後、『ロンリー・ハート』のメンバーでアルバムを一枚発表していますが、現在、トレバー・ラビンは、映画音楽の製作を中心に活躍するようになり、バンド活動はしていないようです。黄金期のイエスのメンバーは、相変わらずメンバーチェンジを繰り返し、今も活動中です。
ギター仙人スティーブ・ハウ、クラッシクの大魔王リック・ウェイクマン
さらに、歌う星の王子様ジョン・アンダーソン、叩く哲学者ビル・ブラッフォード、ロック界のスナフキンことクリス・スクワイアーという、とんでもないメンバーで構成されたイエスは、黄金期のイエスと呼ばれていますが、まさに黄金期ですね。これだけ個性的なメンバーが、ひとつのバンドに在籍して一緒に音楽を作っていたということだけでも奇蹟です。このメンバーの才能が、一つのバンドとして音楽を創造しているのですから、黄金期と呼ばれているのも当然です。このメンバーでのアルバム『こわれもの』『危機』の2枚のアルバムは、ともに名盤で、イエスのアルバムを薦めるなら、絶対にこの2枚になります。個人的には、トレバー・ラビンが参加したアルバムも大好きですが、こちらは、プログレッシブロックと呼ぶようなアルバムではなく、一般的なロックファン、ポップスファンにオススメのアルバムなので、『イエスのアルバムはどれがいい?』と聞かれれば、やっぱり黄金期の2枚です。