宇宙空間を感じさせるハードロック
アメリカ、オハイオ州出身のトム・ショルツがリーダーのバンドですが、レコーディングでは、ほとんどの楽器をトム・ショルツが演奏し、アレンジからレコーディングエンジニアまでこなしていたので、ヴォーカルのブラッド・デルプ以外のメンバーはツアー用のメンバーとして雇われているだけという形で活動していました。
トム・ショルツは、マサチューセッツ工科大学卒で電気工学が専門という珍しいタイプのミュージシャンで、電気工学の知識を屈指して音響工学関連の特許を取っているほどのインテリです。しかも、全ての楽器を演奏し、アレンジ、プロデュース、エンジニアまでこなすというマルチな才能の持ち主です。一般的に理工系の得意なタイプは芸術的なセンスに恵まれない人が多いですが、両方で才能を発揮できるというのは、本当に天才型アーティストなのかも知れません。ただし、プレイヤーとしては、天才的なテクニックというほどではなく、初心者でも結構マネできるので、一般的なレベルだと思います。
デビューアルバム『幻想飛行』も、トム・ショルツとヴォーカルのブラッド・デルプの二人でレコーディングされているようですが、新人アーティストとは思えない完成度の高いアルバムで驚かされます。このアルバムからのシングルカット『宇宙の彼方へ』も大ヒットし、近年までに『幻想飛行』の売り上げは1700万枚以上といわれています。セカンドアルバムの『ドント・ルック・バック』も前作以上の完成度で、全米ナンバー1に輝き、アメリカを代表するバンドになりましたが、トム・ショルツの曲、アイディアをプレイする為に集められた寄せ集めだった他のメンバーと、バンドの曲を全て作曲するトム・シュルツとの間に確執が生まれ、サードアルバムの製作が難航し、サードアルバムの製作に8年もかかるなど、アルバム製作に時間がかかるバンドとしても有名になってしまいました。ファーストアルバムから一貫した音楽性で、良くも悪くも期待通りのアルバムを発表してくれるバンドなので、これからもファンの期待を裏切らずに上質なアルバムを発表してくれると思います。