グラムロックの神様
1947年生まれ、イギリス出身のミュージシャン。1967年にアルバムデビューし、70年代にグラムロックの代表的なアーティストとして注目され、ヨーロッパや日本ではカリスマ的な存在になります。1980年代に、『レッツ・ダンス』がアメリカでも大ヒットし、世界的なロック・ミュージシャンとしての地位を確立し、今では世界中で最も影響力のあるアーティストの一人として知られています。音楽活動の他に俳優として活躍していて、日本映画『戦場のメリークリスマス』などにも出演しているので、役者としても日本のファンには馴染み深いと思います。
カリスマ性という意味では、ロック界でも指折りのアーティストです。とにかくつかみどころが無いと言うか、理解に苦しむミステリアスな存在です。哲学的な歌詞でグラムロックのリーダー的な存在だった頃の絶対的な音楽性を捨てて、いきなりディスコ系のダンスミュージックアルバムを出してみたり、仏教に強い影響を受けた知性派かと思いきや、バイセクシャル、乱交騒ぎなどのゴシップが多かったりと、バカなのか天才なのか?、才能があるのか無いのか?どうにも理解できないアーティストです。グラムロックの旗手として活躍していた頃のデヴィッド・ボウイの才能は、誰しもが認めるところだと思います。想像力豊かな音楽、哲学的な歌詞、先進的なステージ衣装や、アルバムジャケットのアートワークなど、どれを取っても70年代を代表する才能の持ち主だという事を否定する人はいないと思います。しかし、あまりにも先進的で斬新な音楽、アートワークで有名になったデヴィッド・ボウイにとってもパンクムーブメントやディスコブームは脅威だったのかもしれません。80年代に当時のヒットメーカーだったナイル・ロジャースをプロデューサーに起用して発表された『レッツ・ダンス』は、ファンを裏切ってまでも進化し続けるアーティストと評価されましたが、パンクやニューウェーブが主流になった80年代のロック界では、ハードロックや、プログレッシブロックなどと同様にグラムロックのような音楽スタイルも古臭い音楽の代表として見下されてしまうようになり、生き残りをかけた転進だったのかもしれません。常に斬新な音楽、アートを作り出さなければならないというプレッシャーは、かなり強いと思いますが、80年代のアメリカでの大成功が、デヴィッド・ボウイにとってプラスだったかどうかは、判断が難しいところでしょう。