ニューヨーク、チャイナタウンのレストランで中国系マフィアのボスが暗殺され、イタリア系マフィアと中国系マフィアの抗争が激化していた。だが、この暗殺事件はイタリア系のマフィアの仕業ではなく、中国系の若手ジョイ・タイが新リーダーとしての地位を手に入れる為の謀略だった。新任のニューヨーク市警の刑事スタンリー・ホワイトは、暗黙の了解として警察が取り締まらないチャイナタウンの組織犯罪を壊滅しようと独自の捜査を開始し、ジョーイ・タイを追い詰めていくのだが・・・。

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　１９８５年アメリカ作品。監督は『ディア・ハンター』『心の指紋』などのマイケル・チミノ、出演は、 『死にゆく者への祈り』『ハーレー・ダヴィッドソン＆マルボロマン』などのミッキー・ロークと、『ラスト・エンペラー』のジョン・ローン。チャイニーズマフィアの犯罪に立ち向かう刑事の活躍を描いたポリスアクション。

　マイケル・チミノ監督らしい、リアルでショッキングなアクションが楽しめる作品で、中国系マフィアの実態を暴いた問題作としても話題になりました。マフィアの抗争を描いた作品なのでアクションシーンには迫力がありますが、その分、暴力の犠牲になる人間の姿が痛々しく、良くも悪くも生々しさのある作品です。また、権力者の圧力によって捜査が妨害されるなど、世の中の仕組みを暴くような社会派の作品で、あまり公にされていない中国系アメリカ人の歴史なども紹介されている点でもメッセージ性を感じます。ただ、主人公のスタンリー・ホワイトは、正義感は強いものの典型的な仕事人間。しかも、家庭を犠牲にして浮気までしているので人間味があるというよりは、だらしなく自分勝手なキャラクターで、主人公としてはあまり魅力魅力的なキャラクターではありません。むしろ、スタンリーを心配する友人の刑事の方が人間的に優れているように感じてしまいます。主演の刑事の人間的な魅力が乏しいのは残念ですが、単純にアクション映画、社会派作品として観れば、マフィア映画の傑作だと思います。また、この作品での名演で注目されたジョン・ローンは、ベルナルド・ベルトリッチ監督の『ラスト・エンペラー』の主演に抜擢される事になります。

いい奴は消えた・・・

　もやし工場で働く老人が警察の捜査に協力する場面で、今の社会や若者に対する愚痴をこぼします。『世の中変わった、若い者、礼儀知らず・・・』と嘆く老人の言葉は、この作品の舞台となっているアメリカだけではなく、現代社会全体の問題点のような気がします。礼儀や感謝の気持ちの無い人間が増えて、自分の利益の為に、平気で犯罪を犯すようになると恐ろしい世の中になってしまいます。

速く走るから転ぶんだ

　若くして組織のリーダーになったジョーイ・タイも、あまりに急進的な改革で窮地に陥ってしまいます。何をするにしても、急ぎすぎると失敗するという教訓が感じられます。

 

安らかで美しい

　スタンリー刑事の暴走によって身近な人間が犠牲になってしまいます。葬儀の場面でのスタンリーの表情も印象的ですが、スタンリーの友人の刑事の、故人を惜しむ言葉が心に残ります。

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