ナバホ族の血を引く殺人犯のブルーは、まだ１６歳の若者だが、末期ガンの為、余命１ヶ月と宣告されていた。彼は、治療の為に訪れた病院の医師マイケルを銃で脅し、逃走。ブルーは、ナバホ族の伝説の湖に行けばガンが治ると信じて、医師のマイケルを人質にして、その湖を目指す。人質としてブルーに同行する事になったマイケルは、少年時代に、ガンで苦しむ兄に懇願されて生命維持装置の電源を切ってしまった過去に苦しんでいた。二人は全く違う価値観で衝突しながらも、目的地の湖を目指すのだが・・・。

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　１９９６年、アメリカ作品、監督は『ディア・ハンター』『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』などの マイケル・チミノ。出演は、『幸福の条件』『ナチュラル・ボーン・キラー』などのウディ・ハレルソン、『１２モンキーズ』などのジョン・セダ、そして、『卒業』『大いなる遺産』などのアン・バンクロフトなど。末期がんの犯罪者の少年がナバホ族の伝説を信じて逃走する感動のロードムービー。

　『ディア・ハンター』『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』などの作品で有名になった マイケル・チミノ監督作品です。『天国の門』で興行的に大失敗してからは、ほとんど監督業をしていない マイケル・チミノ監督の最後の傑作と呼べる名作です。末期ガンの少年がインディアンの伝説にある幻の湖を目指すロードムービーで、西洋文明に強く影響を受けているアメリカ社会に対する批判的な要素が強く、科学、合理主義でしか世の中を考えられない人間に対するメッセージが感じられます。金の為に末期がんの患者を実験材料にしようとする医師の悪企みなどには、ウンザリしますが、子供の頃に、兄に懇願されて、自分の兄を安楽死させてしまった医師の苦悩、ナバホ族の伝説、奇蹟を最後の希望として信じている少年、西洋文明に批判的な医師などの生き様は、東洋思想、シャーマニズム、インディアンの価値観などに興味があるかたには、かなり興味深い作品だと思います。また、幻の湖を探しての旅の過程で映し出される、この世のものとは思えない美しい風景の数々は、今までのアメリカ映画では紹介されなかったアメリカの荒野の美しさには、魂が開放されるような感覚を与えてくれます。マイケル・チミノ監督らしい迫力あるアクションシーン、名作『天国の日々』と並ぶほど美しい映像描写、そして、人間の魂、意思は奇蹟を起こす事が可能であるという観念的な価値観を学べる名作です。マイケル・チミノ監督作品の中では、かなりマイナーな作品ですが、メッセージ性という点に関して言えば、最も優れた作品かもしれません。

無益な苦痛を長引かせるだけ

　西洋医学は患者を薬漬けにしてしまうと言われています。患者の医師を無視した延命処置は、医学の為の実験で患者の為にならないような気がします。マイケルが、彼の兄を安楽死させたという選択は、間違いではないのかもしれません。

地球上に知的生物はいない

　ブルーとマイケルは、西洋文明に否定的な見解を持っている医師に出会いますが、彼女の車にはこんな文字が・・・。西洋文明の価値観に毒された社会を痛烈に批判するセリフには、強烈なインパクトがあり、東洋思想、シャーマニズムなどの可能性を感じさせてくれます。人間の世界は、科学が進歩により様々なマシンを開発し、ネットワークを広げ進歩し続けているような気になっていますが、実は、一番重要な事は、何も知らないのかもしれません。本当の意味で知的な生物は、この地球上にいるのでしょうか？