2008年日本作品。監督はタナダユキ 、主演は、『フラガール』『花とアリス』の蒼井優。ある事件がきっかけで前科者になってしまった主人公が、100万円溜まると次の町へ引っ越すというルールを決めて放浪する姿を描いた青春ロードムービー。
コメディ作品を思わせるようなタイトルですが、恋愛、兄弟愛などをテーマにした正統派の青春映画であり、日本らしいロードムービーです。主人公の鈴子は、短大を卒業した後、正社員で就職できずフリーターをしている冴えないキャラクターで、ハッキリ言ってしまえば暗い女の子です。恋愛の要素も強い作品ですが、こういう内気で社交性に欠けるキャラクターだからこそ、純愛に説得力があり多くの人の共感を得たのでしょう。主人公の恋愛がメインに描かれている作品ですが、現代的な家庭の不和やイジメの問題なども内包していて、シリアスなドラマという局面もあります。そして、主人公と弟の兄弟愛。イジメに苦しんでいる人には、前向きに生きる大きなヒントになる重要なテーマも描かれています。一応ロードムービーというカテゴリー分けもできますが、旅をするシーンは描かれていないので、旅行気分を味わえるような作品ではありませんが、主人公が様々な環境で成長していく過程で必要な環境設定程度に考えた方がいいでしょう。
凄くいい作品だと思うんですが、個人的には、誤解を解いた上でハッピーエンドにした方が良かったんじゃないかという気がします。実際、私たちは、自分でも気付かない誤解から友達や家族、恋人とケンカしたりして、お互いに誤解を解けばうまく行く関係を壊してしまったりしています。真実を知らないまま仲たがいしたり、別れてしまったりする事が凄く多いと思います。せめて、映画の中では、誤解を解いて終わってもらいたかったと言うのが本音です。この作品の主人公のように、凄くいい人なのに内気で自己主張できないだけで損をしている人はいっぱいいますから、内気な人に希望を与えるという意味でもハッピーエンドにして欲しかったですね。私は、この作品の主人公のような女性は大好きです。
困ったような顔して笑う
タイトルの苦虫女というのは、人付き合いが苦手で、他人からの誘いに素直に喜べない鈴子を象徴しているのでしょうけれど、共感できる人も多いのではないでしょうか? 特に親しくも無い人から誘われたりしても素直に喜べなければ、笑顔で対応するのは難しいですよね。困った顔をするのは、正直な証拠です。
別れが怖いから・・・
進学や就職で引越しする事はよくある事ですが、転職や卒業で慣れ親しんだ土地、親しくなった人たちと別れるのは辛いものです。特に世話になった人たち、自分に好意を持ってくれている人たちとの別れは本当に辛いですよね。鈴子が、旅を続けるのも、人との別れが辛いから、親しくなる前に姿を消したいんでしょうね。