１９４０年、フランスのパリ。有名女優ヴィヴィアンは、その美しさから、ジャーナリスト、映画関係者、大臣など様々な男たちから求愛されていた。ある日、アルペルという男につきまとわれて、彼を射殺してしまったヴィヴィアンは、昔の恋人オジェに助けを求め、事件に巻き込まれてしまったオジェは、容疑者として逮捕されてしまう。数ヶ月後、ドイツ軍のパリ侵攻によりパリが混乱に陥り、その騒ぎに便乗してオジェは脱獄に成功する。一方、ヴィヴィアンは、大臣ボーフォールの愛人になり、彼の権力を利用してパリから脱出していた。脱獄したオジェは、逃亡中の列車の中で、物理学の教授コポルスキと、助手のカミーユという女性と知り合い、行動を共にするが、コポルスキは、原爆の原料となる重水をナチスドイツから守る為、国外へ持ち出そうとしていたのだった・・・。

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　２００３年フランス作品。監督は『うず潮』などのジャン＝ポール・ラプノー、出演は、『サブウェイ』『ノスフェラトゥ』のイザベル･アジャーニ、『バロッコ』『仮面の男』のジェラール・ドパルデューなど。１９４０年代ナチスドイツ占領下のフランスを舞台に、有名女優と、彼女の愛人たちの運命を描いた群像劇。

　ナチスドイツのパリ侵攻というシリアスな時代背景の作品ですが、権力を持つ男を利用して生き延びようとする女優、女優の美しさに翻弄される男たち、原爆の原料となる重水を守ろうとする教授など、様々な人間のドラマを描いた上質な娯楽作品で、暗さは全くありません。ちょっと、ふざけ過ぎじゃないかと思うほどユーモアに満ちた作品なので、イザベル･アジャーニが演じるヴィヴィアンが、次から次へと男を乗り換えて利用する姿も嫌悪感を感じずに笑えますし、ナチス侵攻によってパリから逃げてきた金持ちが、ホテルの部屋を確保しようとドタバタする様子も、ブルジョワ階級を馬鹿にしたようなユーモアセンスが感じられます。フランスを代表する２大スター、イザベル･アジャーニとジェラール･ドパルデューを起用しているのも関わらず、二人の存在感に頼らずに、ストーリーとユーモアセンスで娯楽性を高めているのは、ジャン＝ポール・ラプノー監督の才能によるところが大きいと思います。ボーフォール大臣に対して、『右に行ったり、左に行ったりで信用できない』というセリフが出てくるあたりは、スパイス程度の政治批判、皮肉も感じられますが、政治的な意見の強いシリアスな作品では無いので、コミカルな人間ドラマと、恋愛的な要素を楽しめる娯楽作品として、誰でも楽しめる作品になっています。イザベル･アジャーニは相変わらず美しいですが、貫禄のある体型になり、熟女の魅力が出てきているので、イザベル･アジャーニの魅力だけを期待して観ると、ちょっとアテが外れるかもしれません。

君は誰も愛さない

　小説家を志す男、映画の出資者、大臣、ジャーナリストと、状況に応じて次々に男を乗り換えて利用していくヴィヴィアンですが、結局、誰も愛せない悲しい女性です。愛情も友情もなく人を利用している人間は、どんどん人の信頼を失い、最後には孤立してしまいます。自分さえ良ければいいと考えて人を利用している人間は、結局みんなに嫌われてしまうので、自分を苦しめてしまいます。

オジェの渡英

　ナチスドイツから重水を守る為に渡英することになったコポルスキ教授と共に、オジェもフランスを離れる決意をします。オジェを愛しはじめていたカミーユは、『じゃあ、私も』の一言が言えず、離れ離れに・・・。風に飛ばされるオジェの原稿と、カミーユの少女のようなしぐさが印象的なシーンです。

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ド･ゴール

　この作品では、パリの開放までは描かれていませんが、ナチスドイツによる支配からパリを解放させた自由フランス軍の指揮官であるシャルル・ド・ゴールが一瞬だけ登場します。フランスを開放し、国民的な英雄になったド･ゴールは、後にフランスの大統領になりました。

 

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