ボクサーのサムソンは、選挙の前に、ある政治化のスキャンダルを暴露する取材に応じ、大金を手にし、恋人ロールとの新しい生活に期待していた。しかし、新聞社のインタビューの前夜、対立候補の政治家の秘書から、取材の報酬と同じ額の小切手を受け取り、取材を拒否して国外に逃亡するように頼まれたサムソンは、恋人のロールと共に国外に逃げる為に駅に着いてから、待ち伏せていた殺し屋に射殺されてしまう。サムソンを殺した男は、ロールの家に押しかけて、大金を奪おうとするのだが・・・。

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　１９７６年フランス作品。監督は『ブロンテ姉妹』のアンドレ・テシネ、出演は、『イシュタール』『ポゼッション』などの イザベル・アジャーニ、『１９００年』『仮面の男』のジェラール・ドパルデューなど。自分の恋人を殺した男を愛してしまう女性の不条理な愛を軸に、汚い政治に支配される世の中をを描いた社会派ドラマ。

　最愛の恋人を殺した憎き男に、いつの間に好意を持つようになる女性の愛の不条理を描いた映画として紹介される事が多い作品ですが、貧困、失業、デモなど７０年代の世相を反映した背景と、権力を手に入れようと足の引っ張り合いをする政治家に翻弄される人々を描いた社会派作品です。主人公のボクサーであるサムソンと、彼を殺す殺し屋が瓜二つという設定が、恋愛映画としてのアクセントとなっていて、若き日の イザベル・アジャーニとジェラール・ドパルデューの強烈な存在感が最大のセールスポイントになっていますが、二人の魅力とフランス映画らしいオシャレな映像で客を引きつけて、７０年代の腐敗した政治を観客にアピールしようとした作品なのかもしれません。特定の政治家名や、政党の名前などは出てきませんが、自分が権力を得る事しか考えない政治家や、政治家と癒着して私服を肥やすマフィアなどが描かれ、それとは対照的に、町に溢れかえる失業者や娼婦の姿などが、しつこいほど強調されているので、政治の腐敗を皮肉った社会派作品として考えた方が、製作者の意図が正しく伝わるような気がします。主人公のサムソンとロールの恋愛、サムソンが殺された後のロールと殺し屋との恋愛は、じっくりと時間を使って描かれていないので中途半端になっていて、恋愛映画としての出来はあまりよくありませんが、 イザベル・アジャーニとジェラール･ドパルデューのファンにとっては、二人の若き日の映像を楽しめるというだけでも価値があると思います。ただし、恋愛映画としては、政治色や、腐敗した世の中に対するブラックジョークなどの要素が強すぎるので、純粋に恋愛映画で感動したいという方には向かないと思います。

愛が去って、金がくる

　愛する人を手に入れ、大金も手に入れば一番いいですが、なかなか両方手に入れるのは難しいです。仕事が順調で経済的に満たされていたり、ギャンブルで調子がいい時は、恋人に恵まれず、恋人が見つかった時には失業していたり、ギャンブルで負けが込んでいたりと、なかなかうまく行かないものです。もっとも、両方とも無いのはもっと最悪ですけど。

絵空事の公約よりも・・・

　政治家のスキャンダルを記事にしようとした出版社のオーナーが、マスコミの公平な姿勢をアピールしますが、こんなセリフは、いつの時代、どこの国でも同じなのかもしれません。選挙の前には、立派な公約を掲げ、当選すると約束を守らない・・・。私たちの国も同じですね。

嘘でもいい・・・

　金も無く、愛する人にも振り向いてもらえない男の切なさが伝わってくる場面です。嘘でもいいから、自分に好意を持って欲しいという感情は、片思いを経験した事のある人なら、ちょっと共感を持てると思います。この作品の中で、最も人間味のあるシーンだと思います。

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　 イザベル・アジャーニ主演の作品のほとんどは、すでに廃盤で中古品の価格も高騰していますが、この作品に関しては、比較的安く購入が可能です。作品の内容的には、絶対にオススメという名作ではありませんが、２０歳の イザベル・アジャーニの美しさを楽しめるというだけでも価値のある作品だと思います。ＤＶＤでは、かなり画質が良くなっているので、 イザベル・アジャーニのファンなら買っておいて損は無いでしょう。

 

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