１９７４年のウォーターゲート事件の責任を取りチャード・ニクソンは大統領を辞任する。世論はニクソンを犯罪者として裁く事を望んでいたが、事件に関する特赦を得たニクソンは、密かに政界への復帰に意欲を燃やしていた。一方、イギリスやオーストラリアのテレビショーの司会者として活躍していたデヴィッド・フロストは、世間のウォーターゲート事件への関心の高さに注目し、ニクソンへの単独インタビューの契約を取り付ける。フロストは、ニクソンに詳しいスタッフと共にウォーターゲート事件の真相を暴いて、自らもスターになろうと考えていたのだが・・・。

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　２００８年アメリカ作品。監督は『バックドラフト』『シンデレラ･マン』などのロン･ハワード、出演は、『スウィート･ノベンバー』のフランク・ランジェラ、『ブラッド･ダイヤモンド』のマイケル・シーン、『アポロ１３』のケヴィン･ベーコン、『ジェシージェームズの暗殺』のサム・ロックウェルなど。ウォーターゲート事件で辞任したニクソン元大統領への単独インタビューを成功させたデヴィッド･フロストと、ニクソンの不正を暴こうとしたジャーナリストの活動を描いた社会派作品。

　ウォーターゲート事件によって辞任したニクソン元大統領へのインタビューを成功させたデヴィッド･フロストと、彼に協力したジャーナリストたちの活動をドキュメンタリータッチで描いた秀作で、この作品でニクソンを演じたフランク・ランジェラは、アカデミー賞にもノミネートされました。時代背景を忠実に再現した映像、俳優陣の好演によって、リアリティのある作品に仕上がっています。一番の見所は、インタビューによって名声を得ようとするフロストと、逆にインタビューを利用して政界復帰を狙うニクソンのかけ引きで、インタビュー費用を工面する為に奔走するフロストと、心理的な圧力でフロストを追い詰めて行くニクソンの狡猾な戦術は、政界とマスコミの利害関係を生々しく浮き彫りにし、フロストとニクソンのプライベートでの人間性なども、うまく描かれています。インタビューの後半で核心に迫る展開は、思わず身を乗り出してしまうほどの緊張感があり見応え十分です。ニクソン政権の功罪などについては詳細が省かれていて、中立的に描こうとする意図は感じられますが、客観的に観てもニクソン政権の政治が最悪だった事は感じ取れ、暴露ものとしての価値もあると思います。映画の完成度は、かなり高いですが、ウォーターゲート事件という７０年代の事件をテーマにした作品なので、政治色が強く、事件に関して全く知識の無い方、政治に興味の無い方にとっては、楽しめないかもしれません。かなり好みの分かれる作品だと思います。

　ちょっと微妙な気分になる作品です。個人的には、ニクソンが大嫌いなので、ベトナム戦争で、どれだけ多くの人間が犠牲になったかという事実が描かれているのはいいんですが、ニクソンの醜聞に関しては、もっと強く描いて欲しかったというのが本音です。本作で描かれているインタビューによって政治生命が絶たれ、政界に復帰する事は出来ませんでしたが、大統領としての悪政の数々は、犯罪者として裁かれて当然なので、もっと大きな報いを受けるべきだったような気がします。ニクソンを演じたフランク・ランジェラのエンディングでの演技は素晴らしいんですが、その演技の素晴らしさが、ニクソンの悲哀を強調してしまい、観る者に、同情、憐れみといった感情を持たせてしまうのも考え物です。悪政を正当化し政界に復帰しようとしていた厚かましい政治家である事には違いがないので、同情の余地は無いと思うんですが・・・。

釣り針だらけの海の中を泳いでいる

　ウォーターゲート事件の注目度の高さを利用しようとしていたのはフロストだけではなく、ニクソンにとっては、マスコミの全てが、自分に対してワナを仕掛けている敵と見えても仕方がなかったと思います。しかし、人を騙して金を得ようとするような人間の多くなった現代社会では、私たち庶民も、釣り針だらけの海の中を泳いでいる魚のようなものなのかもしれません。

国民が真実を知る事は無いでしょう

　権力を濫用した証拠の隠滅、口封じによって多くの証拠が失われ、ウォーターゲート事件の真相も、１００％解明されてはいません。しかし、これも氷山の一角、真実が闇に葬られてしまう事件は他にも多く、一般の人間が知る事のできる真実は、ごく一部のような気がします。

それがどれだけ幸運か、君は気づいていない

　テレビ司会者として有名になり、人に好かれるキャラクターのフロストに対して、ニクソンは、人に嫌われる性格で、人好きのするフロストをうらやましく思っています。天性のキャラクターという要素もあると思いますが、自分の利益やプライドばかり気にして、エゴ丸出しの人間は嫌われても仕方ないですね。

パパは、世界一立派？

　こんな言葉で自分の娘に慰めてもらったというエピソードを紹介するニクソンにスタッフが呆れてしまいます。世界一汚い政治家というなら分りますが、何が立派なんでしょう？爆笑するか、怒り狂うか、人によって反応は違うと思いますが、ニクソンの厚かましさを象徴したシーンで、一番印象に残ります。

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ニクソンに関する疑惑は他にも

　ケネディ大統領暗殺事件の真相を追った落合信彦さんの名著『２０３９年の真実』の中で、ケネディ暗殺の首謀者として名前が挙げられているのがニクソンです。すでにニクソンは死去してしまい真相は分りませんが、ケネディ嫌いのニクソンが首謀者という説には説得力があります。

 

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