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The Peacemaker

●監督
ミミ・レダー

●キャスト
ジョージ・クルーニー
ニコール・キッドマン
マーセル・ユーレス

■ ストーリー ■

 

 ロシアで列車の衝突事故が起こり、その直後に核弾頭が爆発。核反応を確認したアメリカは、ケリー博士ら専門家を中心に対策チーム編成し、調査を開始するが、解体される予定だったロシアの核弾頭10基のうち1基が爆発し残りの9基が盗み出されていたことが判明する。ロシアに詳しいデヴォー大佐がケリー博士のチームに加わり、核弾頭の行方を追うが、盗まれた核弾頭は意外な場所へ持ち込まれていた・・・。

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■ レビュー ■

 

 1997年アメリカ作品。監督は『ディープ・インパクト』『ペイフォワード・可能の王国』のミミ・レダー、出演は『コールド・マウンテン』『アイズ・ワイド・シャット』などのニコール・キッドマン、『スリー・キングス』『アウト・オブ・サイト』などのジョージ・クルーニーなど。核弾頭によるテロの脅威を描いたサスペンスアクション。

 もし核爆弾がテロに使われたら?、という現実味のある脅威を描いた作品で、隕石などによる人類滅亡の脅威を描いた作品より、現実に起こる可能性が高いだけに興味深い作品です。また、ユーゴスラビア紛争をテーマにしていますが、世界各地で起きている内戦に介入し、武器の供給によって利益を得ているアメリカなど先進国への批判も感じられる内容で、エンターテイメント性を重視した娯楽的なアクション映画とは違う重みのある作品です。核弾頭の爆発、市街地での迫力のカーチェイス、領空侵犯による戦争誘発の緊迫感などアクション映画としても見ごたえがあり、主演の二人が絵になる美男美女なのでエンターテイメント性も抜群で、崩壊したソビエト連邦が保有していた核兵器が流出してしまうという、冷戦後の世界情勢の変化にもリアリティがあります。ちょっと残念なのは、軍人を演じているジョージ・クルーニーに、軍人らしい風格が無く、友人を失うという悲しいシーンでも悲壮感が伝わってこないので、ジョージ・クルーニーの演技にはガッカリですが、その点さえ無視すれば、エンターテイメントとしても、世界情勢に対するメッセージを持った社会派作品としても楽しめる名作だと思います。

力と地位なんかに関心のない人間だっているのよ

 核弾頭の闇取引による莫大な利益を考えて、アメリカが核弾頭の行方を追って調査を開始しますが、犯人は、私服を肥やす事にも権力を持つ事にも関心の無い人間で、調査が遅れてしまいます。世の中には、損得勘定で利害を優先して行動する人間と、感情で行動する人間がいます。損得ばかりを考えて生きている人間には、感情が豊かな人間の気持ちは理解できないのかもしれません。

我々は共存の努力をしたのに・・・

 実際に内戦をはじめたのは、それぞれの指導者ですが、内戦に使われた武器を供給したのはアメリカなどの先進国です。内政に干渉し、武器を売って利益をあげ、勝手に国境を決める先進国に対しての痛烈な批判が感じられます。アメリカに対する報復心は逆恨みのようにも見えますが、間接的に戦争に加担し、善人面しているアメリカに対して怒りをおぼえるのは当然かもしれません。この作品で描かれているように、アメリカの偽善的な干渉に対して恨みを持っている人間は、かなり多いと思います。



名シーン

誰か、助けてくれ!

 テロを計画するデューサンという音楽教師の回想シーン。内戦の混乱の中で妻と娘が銃弾に倒れ、娘を抱きかかえて助けを求める場面では涙が止まらなくなります。内戦によって一度に二人の家族を失い、気が狂ってしまうほどの悲しみに打ちひしがれているデューサンの感情が痛いほど伝わってきます。

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ガイド

冷戦時代が懐かしいよ

 こんな言葉が出来てますが、このセリフは、冷戦後の世界情勢を象徴しているような気がします。冷戦時代は、アメリカ対ソ連、資本主義対共産主義という構造で、アメリカにとってはソ連だけ敵とみなしていれば良かったわけですが、ソ連が崩壊し、ソ連邦の一部だった国が次々に独立国家となってからは、民族紛争、宗教的な紛争が多くなり、核の流出によるテロの脅威という問題にも注意を払わなければならなくなりました。さらに、湾岸戦争以降は、中東からのテロという脅威も加わっています。冷戦が終わり第3次世界大戦の脅威は無くなったという人もいますが、テロリストグループが核爆弾を入手できるような世の中では、核による大規模なテロという新たな脅威が生まれています。

 

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