ジムが病院の集中治療室で目覚めると、人影が全く無く、町は、人間が全て蒸発してしまったような静けさに包まれていた。ジムがこん睡状態になっている間に、謎のウイルスが広まり、人類のほとんどが人間性を失って凶暴化して都市機能は完全に失われていた。感染を免れたわずかな人間に出合ったジムは、彼らと共に旅に出るのだが・・・。

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　２００２年イギリス作品。監督は『ザ･ビーチ』などのダニー・ボイル、主演は『バットマン・ビギンズ』などに出演しているキリアン・マーフィ。新種のウイルスによって人類滅亡の危機に瀕した状況下でのサバイバルを描いたパニック映画。

　人類の存亡に関わるような恐怖のウイルスをテーマにしていますが、感染者が凶暴性を持ち人間を襲うという設定になっているのでゾンビ映画のようなスリルを楽しめる作品です。低予算で製作されたらしく、人類滅亡をテーマにした作品にしては舞台がイギリスのみで、地球規模でのスケールの大きさはありませんが、ウイルスに感染した人間の描写は、ＣＧに頼らずに生々しい恐怖と緊迫感を伝えてくれますし、生き残る為には何をやってもいいのか？人間性を失ってまで生き残るべきなのか？という深遠なテーマがあり、スリルを楽しめるだけのゾンビ映画とは違って、ヒューマニズムをテーマにした感動作としても楽しめる作品になっています。最近のＣＧによって合成されたゾンビ映画は、ゾンビの存在感にリアリティが無く、ちっとも怖くありませんが、この作品では、ウイルスによって精神が錯乱したゾンビの表情がリアルで、しかも、スピード感があるので、目の前に急に飛び出してくるような迫力があります。また、イギリスが舞台になっていて、涼しげと言うより寒々しいほどの風景が絶望的な状況を強調し、なおかつ、その寒々しい風景が、映像的な美しさと独自の雰囲気を出しています。そして、パニック映画としての娯楽性だけでなく、地球の歴史から考えれば、人間の歴史は、ほんの一瞬にすぎない、殺しあうのが人間の本質なのかもしれない、などの客観的な考察や、人間の尊厳を考えさせられるテーマもあり、哲学的なメッセージも感じられる名作です。地震、隕石の衝突、氷河期、戦争など、人類滅亡のシナリオは色々と映画化され、それぞれ可能性を感じますが、この作品には、人類滅亡の可能性としての現実味は無いので、終末観としての可能性は期待しないほうがいいでしょう。また、人類滅亡という大きなテーマを扱っているにしては地味な作品なので、『アルマゲドン』『デイ・アフター・トゥモーロー』などのようなスケールの大きな作品として期待するとアテが外れます。

安らかに死んだのよ、喜ぶべきだわ

　家族を失ったジムにセリーナが声をかけます。家族を失った悲しみで人の言葉など耳に入らない状況だと思いますが、殺されたり、不本意な死に方をする人もいるわけですから、安らかに死ねると言うのは幸せな事なのかもしれません。生き残っても人間性を失ってケダモノのような人間として長生きするよりは、早死にした方がいいのかもしれません。

生き残るだけが全てじゃない

　生き残る為には、足手まといになる人間は切り捨てるべきだと主張していたセリーナですが、フランクとハナの親子の支え合う姿を見て自分の間違いに気づきます。愛情や信頼を無くしてまで生き残るべきなのか？そんなメッセージが感じられます。

 

２８週後・・・

　この作品は、ゾンビ映画としてはシリアスなテーマで大ヒットし、続編が製作されました。監督もキャストも変わっているので、厳密に言えば続編としてのつながりに違和感がありますが、この作品の雰囲気やコンセプトが気に入った方なら、楽しめるかもしれません。

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