ブルース・ウェインは、資産家の一人息子だったが、幼い頃に目の前で両親を殺され、悪に対する憎悪の心が芽生え、悪を倒す為に修行の旅に出る。ブルースは、旅先で出合ったデュカードという男に誘われて、ラーズ・アル・グールという東洋武術の指導者の元で武術を修行を積み、心身ともにたくましく成長するが、悪に対して、情け容赦ない復讐をするラーズ・アル・グールの方針に反発し、彼の組織を抜けて、故郷であるゴッサムシティへ帰ることを決意する。ブルースが帰郷したとき、ゴッサムシティは、以前にも増して悪の組織と暴力がはびこり、警察の腐敗が進んでいた。ブルースは、父親が残した会社で試作製造された武器を使ってバットマンとして、街の腐敗の原因となっているマフィアを追い詰めるが、マフィアの背後には、別の組織が黒幕として君臨していた・・・。

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　２００５年アメリカ作品。監督は、『ダークナイト』のクリストファー・ノーラン、主演は『若草物語』『サラマンダー』『ニュー・ワールド』などに出演しているクリスチャン・ベイル。その他のキャストも、かなり豪華で、『死にゆく者への祈り』『レ・ミゼラブル』『スター・ウォーズエピソード１　ファントム・メナス』などに出演しているリーアム・ニーソン、『レオン』『ＪＦＫ』『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』などに出演しているゲイリー・オールドマン、さらに、マイケル・ケイン、モーガン・フリーマン、そして日本の誇る名優、『ラスト・サムライ』の渡辺謙などが出演しています。やはり、主演のクリスチャン・ベイルの熱演が目立ちますが、ゲイリー・オールドマンと、マイケル・ケインのコミカルな演技は、かなり笑えます。バットマン・シリーズの序章として、バットマンが生まれた背景などが描かれていますが、このシリーズでは、間違いなく最高傑作だと思います。

　バットマン・シリーズというヒットが見込めるテーマを使って、善と悪との境界線という深遠なテーマを取り込み、暗くなり過ぎないように抜群のユーモアがあり、アニメ的な曖昧さを排除したアクションシーンも見ごたえがあります。最も重要なメッセージとなるセリフは２回以上出てきて、２回目のセリフがちゃんとオチになっているというセンスも最高です。富豪の息子が、自らの資産を使って世直しをするという設定は、現実の世界でもあって欲しいな！と期待てしまいます。バットマンシリーズの他の作品はどうでもいいですが、この作品だけはオススメです。

飢えは人を犯罪者にする

　この映画の中では、マフィアなどの犯罪組織が原因で、不況によって犯罪者が増えるという設定になっていますが、犯罪を犯す人間より、犯罪者を生み出す社会環境、そういう社会環境を作り出す人間に原因があると暗示的に描いています。私もビンボーなので、いつも腹をすかせていますが、飢えというのは本当にツライものです。食べるというのは生きて行く上で最低限の欲求であり、本能ですから、飢えに絶えられずに盗みをしてしまうというのは、気の毒としか言いようがありません。税金という形で、大勢の人から金を盗んでいるような政治家や、自分たちの利益ばかり考えて法律を作るような人間こそ、最悪の罪人ではないでしょうか。バットマンに日本の政治家を懲らしめてもらいたい、と思うのは私だけでしょうか？

人はなぜ落ちる？

　この言葉も何度か出てきますが、この問いに答えこそが、この映画の最大のテーマかもしれません。経済的な困窮、失敗、堕落、人生には何度も試練が訪れ、その度に奈落の底に突き落とされたような気分になってしまいますが、落ちるには理由があるはずです。どん底に落ちてしまったときこそ、この映画は最高のメッセージになると思います。

人の本性は、行動で決まる

　ブルースは、自分がバットマンであることを隠す為に、大富豪のプレイボーイを演じますが、幼なじみレイチェルに、軽率な行動を咎められてしまいます。映画の後半になって、この言葉が生きてきます。口先だけの人間も多いですが、人間の本質は、やはり行動になって現れてしまいます。何を言ったかではなく、どういう行動を取ったかで人間の本質が分るのかもしれません。

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