１９８０年アメリカのテキサス、砂漠で狩りをしていたルウェリンは、多数の死体と大量のヘロイン、そして２００万ドルの現金を発見し、辺りに人影が無いことを確認して現金を持ち去った。ルウェリンが持ち去った現金は、麻薬組織の取引の為の現金で、組織に雇われた殺し屋のシガーが現金の行方を追い始める。一方、保安官ベルは、現場の状況から、ルウェリンと殺し屋シガーを追うのだが・・・。

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　２００７年アメリカ作品。監督は『ミラーズ・クロッシング』『オー・ブラザー！』などのコーエン兄妹、主演は『天と地』『メン・イン・ブラック』などに出演しているトミー・リー・ジョーンズ、『コラテラル』などのハビエル・バルデム。殺しに対して何の感情も持たないプロの殺し屋と、彼を追う保安官を描いたサスペンススリラー。アカデミー賞作品賞などを受賞。

　恨みや金目当ての殺人では無く、プロの殺し屋として何の感情も持たない非道な男と、そんな現代の病理を象徴した犯人を理解できない老保安官を描いた作品ですが、アメリカの田舎で生活する人々の貧困や、人間の悲しい性を描いた作品でもあります。金を持ち逃げするルウェリンは、貧乏暮らしにウンザリしていて、妻に楽な暮らしをさせたいという思いで金を盗んでしまいます。ルウェリンのように、毎日食べて行くのがやっとで、貧乏に疲れ、妻に愛想を尽かされてしまうような男は、アメリカに限らず世界中にいると思いますが、たまたま大金を見つけ、出来心で金を盗んでしまうルウェリンには、同情的な気持ちになる方も多いと思います。また、人間の善意や、人間的な感情を信じている老保安官のベルの、現代的な狂気を理解できずに苦しむ姿に共感できる方も多いのではないでしょうか。リアルでショッキングなシーンの多いサスペンス作品としても楽しめますが、こういった現代社会に生きる人間の悲しみも伝わってくる作品です。映像的には、砂漠のシーンが多く、美しいアメリカの荒野の風景を楽しめますが、テキサスの田舎町を舞台にしているので、時代背景が分りづらいような気がします。また、アメリカの暴力の現実や、貧困に苦しむ人間などを描いた作品なので、感動するというよりは、唖然としてしまうような暗い映画なので、映画を観て落ち込みたくない方、娯楽作品を観て気分転換したい方には向かないと思います。

起きた事は、元に戻せない

　大金を持ち逃げしたルウェリンのセリフですが、印象に残りセリフです。悪い事をして開き直る言葉として使うのは良くありませんが、何をどうやっても、終わってしまった事は変えることはできないので、自分に選択や行動を後になって後悔しても、仕方がありません。ミスに関して反省する事は重要ですが、すでに起きてしまった事に関していつまでもクヨクヨしても、何のメリットも無いような気がします。

 

この国は人に厳しい

　自由の国アメリカ、豊かな暮らしに憧れて、多くの国から移民が押し寄せてくるアメリカという国は、法を犯さなければ自由に生きる事ができる国というイメージが強いですが、自由が強調されている反面、弱者、貧乏人にとっては冷たく、厳しい国なのかもしれません。

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トミー・リー・ジョーンズ
ハビエル・バルデム
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