レ・リーは家族とともに、ベトナムの小さな農村キーラで暮らしていたが、ベトナム戦争がはじまり、南軍と北軍の争いが激しくなると、 ベトナム戦争の騒乱に巻き込まれ、村を出て暮らし始める。私生児を育てながら、生きるために娼婦になってしまったレ・リーだったが、アメリカ軍の兵隊のスティーヴ・バトラーと結婚してアメリカに移住し、新たな人生を歩み始める・・・。

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　１９９３年アメリカ作品。ベトナム戦争に翻弄され、ゲリラ活動、レイプ、村からの追放、不倫による私生児の出産、売春婦としての生活、アメリカへの移住など、数奇な運命を生きてきたベトナム人女性Ｌ・リー・ヘイスリップの、波乱の人生を回想した自伝を、オリヴァー・ストーン監督が映画化。主演のレ・リー役には、オーディションで選ばれたヘップ・ティー・リー、母親役は『ラストエンペラー』で皇后役を演じたジョアン・チェン、父親役は『キリングフィールド』にも出演していたハイン・Ｓ．ニョール、そして、『メン・イン・ブラック』シリーズのトミー・リー・ジョーンズ。音楽を担当しているのは、日本が誇る音楽家、喜太郎。

　この映画は、オリヴァー・ストーン監督作品の中で、最も優れた作品だと思います。少なくても、感動を超えて観る人の人生に大きな影響を与えるという意味では、最も啓発的な映画だと思います。この作品が公開になった直後、友人から電話があり、『天と地は、もう観た？』『俺、悔しくてよー！』と、かなり興奮した状態で話していたのを覚えています。オリヴァー・ストーン監督の『プラトーン』の衝撃も、かなり大きかったんですが、この作品はそれ以上でした。私の友人は、この映画の主人公のように大きな試練を経験してもいないのに、すぐに挫けてしまう自分に対して、悔しい思いをしていたようですが、自分の甘さを実感し、前向きに生きる勇気をもらえるだけではなく、自分の行動に責任を持てるような生き方、仏教的な人生観も学ぶ事ができる作品だと思います。

この世で、悪いことはやり放題だと思ってる

　レ・リーの母親は、先祖を敬わず、因果応報も信じないアメリカ人を嫌っています。自分の行いが全て自分に帰ってくると考えている仏教徒にとって、一度だけの人生だから、何をやってもいいと考えている一般的なアメリカ人は、不道徳で不真面目に感じるのかもしれません。皮肉な事に、アメリカに移住したレ・リーは、アメリカ人と同じように、物質には恵まれた生活に慣れてしまい、アジアの女性らしさを失って、自己主張が強くなり、激しく怒り、怒鳴るようになってしまいます。物質的な豊かさや、成功と引き換えに、何か大事なものを失ってしまったような気がします。

彼らは生きているだけで幸せなんだ

　スティーブは、感謝祭の食事の時に、彼の姉や母親に向かって、ベトナムの現状を語り、レ・リーの気持ちを代弁します。地雷などの武器によって、手足を失った子供たちや、軍隊に殺されるのを恐れて暮らす老人たちについて話しますが、戦争や独裁政権の圧制によって、いつ殺されるか分らないような人生を送っている人がいることを考えると、日本に暮らす私たちは、どれほど恵まれているかを実感させられます。金持ちになりたいとか、有名になりたいとか、そんな事を気にして生きている私たちは、生きていることに対する感謝の気持ちが、すっかり無くなって、傲慢になっているのかもしれません。

道を誤らないように

　アメリカでの生活になれたレ・リーは、夫のスティーブと激しい口論をするようになり、離婚を仏教の僧侶に相談に行くシーンがあります。僧は、怒りをあらわにするレ・リーに対して、『決して逆上してはならない』『もし彼を見捨てたら、自分を救う機会さえ失うだろう』、と助言します。結婚、離婚に対する考え方が変わってしまうような素晴らしい言葉であり、生き方を考えさせられるシーンです。今、離婚を考えている方、あるいは、絶望的な気分で人生を生きている方には、是非見ていただきたい名シーンです。

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トミー・リー・ジョーンズ
ヘップ・ティー・リー
ジョアン・チェン
ハイン・Ｓ・ニョール

 

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