1986年日本映画。監督は『HOUSE
ハウス』の大林宣彦。主演は、本作で映画デビューした鷲尾いさ子。戦時中の暗い世相をを背景に、戦争に翻弄される若者と子供たちの姿を描いた文芸作品。
良くも悪くも大林宣彦監督らしい名作です。佐藤春夫さんの原作『わんぱく時代』を元に、本作が映画デビューとなる鷲尾いさ子を主演に起用し、戦時下というくらい世相を背景にしながらも、明るくほのぼのとした雰囲気を楽しめる娯楽作品です。本作では、出演者の個性をうまく生かしたキャラクター設定が見事で、主演の鷲尾いさ子さんの清楚な美しさは言うまでもありませんが、端役まで個性的で魅力的なキャラクターが多いので、紙芝居を観ている様な懐かしさを感じられるという魅力があり、鷲尾いさ子さんの初々しさ美しさは本当に魅力的で、彼女の魅力が本作の価値を高めているのは間違いないでしょう。そして、全体的には、明るく快活な作品でありながらも、戦争によって翻弄される悲恋を描き、猿の生態と人間の行動を重ねて皮肉をこめたり、自分たちではじめた戦争に振り回される人間の愚かさを言い当てたりと、社会風刺も忘れていません。豪華な出演者ですが、本作では、大林監督独特の演出により、リアリティを追究すると言うより、オーバーアクションでの演技が中心になっていて、この独特の演出が本作の魅力の一つになっているんですが、リアルな演技を期待する映画ファンにとっては、まるで学芸会のような幼稚な作品に思えるかもしれません。
本作は、小学生の男の子の視点から描かれているので、男性の方が共感できる要素が多いかもしれません。近所に住む年上の美しい少女に淡い恋心を持った少年時代とか、結構経験がある男性も多いんじゃないでしょうか。私の近所にも綺麗で誰からも好かれる性格のいいお姉さんがいました。誰にもで気さくに話しかけてくれる優しいお姉さんだったんですが、私は、あまりにも綺麗で優しいお姉さんだったので緊張してほとんど話せなかったのを覚えています。そのお姉さんが中学生の頃、突然亡くなってしまい、その時は、本当にショックを受けました。私はまだ小学生でしたが、『早死にするのは善人だけ』という言葉を痛感しました。きっと、凄くいい人は、この世での試練を受けなくて済むように、早めに天国に行くんじゃないかと思います。私は、子供の頃のクセがいまだに抜けず、綺麗で性格のいい女性だと、緊張して話ができなくなってしまいます。
どこに逃げるの?
売られていくお昌ちゃんたちを逃がそうと必死に掠奪作戦を展開する子供たちですが、お昌ちゃんたちは、自分たちに逃げる場所なんか無い事を知っています。考えてみれば、私たちも、どこにも逃げる場所なんか無いんですよね。