2002年アメリカ作品。監督は『Xファイル・ザ・ムービー』などのロブ・ボウマン
、出演は『若草物語』『バットマン・ビギンズ』などのクリスチャン・ベイル、『ウェディング・プランナー』のマシュー・マコノヒー、『バーティカル・リミット』のイザベラ・スコルプコなど。近未来、架空の生物サラマンダーと人間の戦いを描いたSFパニック映画。
架空の巨大竜サラマンダーが世界を燃やし尽くすという設定なので、隕石による地球滅亡の危機を描いた『アルマゲドン』、環境破壊による気候の大変動で地球が危機に陥る状況をを描いた『デイ・アフター・トゥモロー』などと違って、終末的なパニック映画としては全く現実味が無く、怪獣映画でしかありません。ですが、滅亡の危機に直面して生き残った人間の描写は生々しく、サラマンダーと人間の対決にもスリルがあるので、娯楽作品としては、なかなか楽しめる作品だと思います。クリスチャン・ベイル、マシュー・マコノヒーなどの緊迫感のある演技、特にイザベラ・スコルプコの恐怖に引きつる顔には、いつの間にか画面に引き込まれてしまいますし、ロブ・ボウマン監督の映像処理、編集にはミステリアスな恐怖が感じられるので、怪獣映画という幼稚なストーリーでありながら、最後まで緊張感が持続し飽きずに観る事ができます。また、荒廃した近未来で、唯一の娯楽として子供たちが楽しみにしているのが演劇ですが、この劇で演じられているのが『スター・ウォーズ』だったり、パーティーのBGMで流れている曲がジミ・ヘンドリックスだったりと、ちょっとした遊び心のあるアイディアも楽しめます。ただし、人類滅亡というテーマの作品としては、こじんまりとした作品で、新たな発見やアイディアは無いので、宗教的な終末論や、科学的な学説などは一切期待しないで観た方がいいでしょう。また、女性に人気の高いマシュー・マコノヒーが出演していますが、スキンヘッドのタフガイ軍人の役で出演しているので、女性にとっては、ちょっとガッカリかもしれません。
無知が人類を滅ぼす
人類に与えられている最大の武器は知性。その知性によって人間は文明を築き、繁栄してきました。この作品の冒頭で、サラマンダーに対して核兵器を使った事によって地球を荒廃させてしまったという状況が描かれていますが、生き残る為に最も重要な知識が無かったら、怪獣に攻撃されなくても自滅してしまうかもしれません。隕石や地震、環境の変化など外的な要因で人類が滅亡するなら運命だったとあきらめがつきますが、道徳観、倫理観、叡智の無い人間が支配者になったら、核兵器や生物兵器で人類を滅ぼしてしまうかもしれません。竜より、こっちの方が怖いかもしれません。