1983年アメリカ作品。監督は『ファントム・オブ・パラダイス』『カリートの道』などのブライアン・デ・パルマ。主演は『ゴッドファーザー』『セント・オブ・ウーマン・夢の香り』などのアル・パチーノ。『暗黒街の顔役』のリメイク作品ですが、時代設定、脚本などほとんど原型をとどめていないので、現代的なマフィア映画として楽しめる作品です。
この作品は、公開直後はそれほどヒットしませんでしたが、今ではブライアン・デ・パルマ監督の代表作として絶大な人気のある作品で、アル・パチーノ主演作品の中でも、『ゴッドファーザー』とともに、彼の代名詞とも言える有名な作品になりました。とにかく主役のトニーの性格が凶暴で、言葉使いが汚く、最低最悪のマフィア映画です。この映画の公開時、ある雑誌で『ファック』という言葉がこれほど多い映画は無い!という記事がありましたが、汚い言葉の映画という意味ではギネスブックものです。しかも、『ゴッドファーザー』でアル・パチーノが演じた知的な雰囲気は全くなく、ツバを飛ばしながら下品な会話をするので、女性向けの映画とは言えません。しかし、アル・パチーノ演じる主人公の存在感は、過去のマフィア映画の名作の主人公と比べても飛びぬけた存在感があり、絶対に譲れない信念を持っているという意味でも異質なキャラクターです。さらに、中南米の麻薬大国で、将軍や政治化が関与しているなどのリアリティのある脚本には、ドキュメンタリー映画かな?と感じてしまう生々しさがあります。ギャング映画が好きな方、アル・パチーノのファンの方には絶対必見の名作です。
人間の欲にはきりがない
マフィアのボスが、トニーにアドバイスをします。このセリフはマフィアの世界だけでなく、全ての人が教訓にすべき言葉かもしれません。『欲張ってもロクなことは無い』と考えて生きている人には関係ありませんが、ほとんどの人は20万の給料をもらっていても、もっと欲しくなり、食べ物に困っていなくても、もっとおいしいものを食べたいと、どんどん欲が出てきてしまうものです。この欲の大きさが、物語の結末に結びついて行くんですが、マフィアのような特殊な世界だけでなく、私たちも、ほどほどにしないと痛い目に遭うという事を自覚した方がいいかもしれません。