実在の登山家ハインリヒ・ハラーと、幼少の頃のダライ・ラマの友情を描いた映画ですが、ドキュメンタリー的な退屈さはなく、適度にユーモアを交えた構成で、チベットの豊かな大自然、人々の質素な暮らしがリアルに描かれ、仏教的な教訓と、中国の侵略という歴史も学ぶ事ができます。そして、ダライ・ラマとの出会いでハインリヒ・ハラーが人間的に変化していく様子や、人間的に成長したハラーが、険悪な仲だったアウフシュナイダーとの信頼関係を築いていく過程は感動的です。
ブラッド・ピットの主演作品の中では、比較的に地味な扱いを受けているようですが、私は、
ブラッド・ピットの主演作の仲では、この作品が一番好きです。
感動と怒り
『セブン・イヤーズ・イン・チベット観た?頭にこなかった?』、この映画が好きな人には、よく、こう聞かれます。学ぶ事も多く、凄くいい映画なので、本当は怒ったりしてはいけないのでしょうけれど、武力的に優位な立場を利用して、一方的に侵略、支配する中国の政治的なやり方には、やっぱり激しい怒りを感じます。私は、友人が中国に住んでいることもあり、かなり中国に対しては親しみを持っているほうですが、チベットに対する中国の姿勢にだけは納得がいきません。近年、世界中で、この問題に対する中国批判が多くなっていますが、中国の姿勢は変わりそうにありません。とても残念です。
西洋とチベットの違い
西洋では頂上を極める人が英雄、チベットでは、自我を捨てる事が理想。勝ち組とか負け組みとかいう表現で、人の価値を決めるような風潮が一般的な日本は、もう西洋的な価値観に支配されてしまっているんでしょうね。他人を蹴落としてまで、トップになろうとか、財産を得ようとか、そんな価値観で人生を生きてきているんだなと、痛感させられるセリフです。また、『敵は教師だ。敵のおかげで、忍耐と憐れみを知る』というセリフにも、人生観を一変させられます。
人を助けるのに理由が必要ですか?
チベットの人々の善意、心の広さが伝わってきます。利害関係を重視して人間関係を築いているような人もいますが、本来、人助けというのは、自然なことなのかもしれません。こんな心の広い人が多ければ、世の中、もっと良くなるのかもしれませんね・・・