第２次世界大戦直後、結婚生活にも仕事にも行き詰まっている作曲家の夫ポートと、劇作家の妻キットは、ニューヨークから北アフリカを訪れ、何かを見出そうと旅をはじめるが、ポートがチフスにかかってしまい・・・。

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　１９９０年、イギリス作品。監督は『１９００年』『リトル・ブッダ』『』などの巨匠ベルナルド・ベルトリッチ、出演は『愛と青春の旅立ち』などのデブラ・ウィンガーと、『ラウンダーズ』などのジョン・マルコビッチなど。アフリカの広大な土地を舞台に、生きる意味を見失った夫婦を観念的に描いた人間ドラマ。

　ベルナルド・ベルトルッチ 監督らしい観念的なメッセージのある名作ですが、極端に好みが分かれる作品だと思います。今までの映画では観られなかったアフリカ大陸の様々な美しい風景、万人に共通する真理を表現したセリフなどには、感心させられますが、ストーリーはシンプルで劇的な展開を見せるわけでは無いので、物語の面白さを楽しめる作品ではありません。夫は作曲家、妻は劇作家という恵まれた職業で何不自由の無い生活している二人は、そんな恵まれた暮らしをしていても、相手に対する愛情を忘れ、仕事への情熱や喜びを忘れてしまっています。アフリカ大陸への旅行も、そんなブルジョワ的な甘えからでしたが、夫が病に倒れてしまってから、妻のキットは、全てを失い誰にも頼る事の出来ない状況で、他人を利用して、ただ生き残る生活を体験し、自分が忘れていた大切なものを、やっと思い出す事になります。主人公二人のブルジョワぶりには、少々イライラしますが、恵まれた環境で生きているにも関わらず、不平不満の多くなっている私たち日本人にも、彼らと同じような感覚があるのかもしれません。大切な事を忘れてしまい、日々を怠惰に過ごしてしまっている多くの人に対してのメッセージは素晴らしいですが、意外なストーリー展開は無く、エンターテイメント性に欠けるので、哲学的なメッセージ、真理に触れたいと言う観念的な目的で鑑賞した方がいいでしょう。

だが、人は無限の機会があると思う

　ほとんどの人間が、人生を変えてしまうような大きな出来事、人との出会い、感動した言葉など、忘れたくないと思っている重要な事でも、いつの間にか忘れてしまいます。さらに、自分の与えられた環境がいかに恵まれているかという事も忘れてしまい、怠惰な生活を続け、まるで無限に時間があるかのように、今出来ることを先延ばしにして暮らしています。医学が発展して寿命は延びても死は必ずやってきます。私たちに与えられた時間には限りがあり、やるべきことは多い！そんな事を教えてくれる作品でもあります。

音楽は坂本龍一

　『ラスト・エンペラー』でも音楽を担当していた坂本龍一が、この作品でも起用されています。日本の作曲家なのでアジア的なイメージを持つ音楽を担当するのは自然な気がしますが、この作品ではアフリカのイメージを十分に表現している辺りが、坂本龍一の才能の大きさをを感じさせます。サウンドトラックアルバムも発売されていますが、こちらも名盤です。

 

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