サンフランシスコ警察のハリー・キャラハンは、驚異的な検挙率を誇る腕利き刑事だが、捜査方法をめぐって上司と対立することも多かった。ある日、連続殺人犯から警察が現金を払わなければ、毎日一人ずつ殺人を続けるという脅迫状が届き、キャラハンが捜査を担当する事になる。警察は時間稼ぎをするが、犯人は、予告どおりに殺人が繰り返し少女を誘拐、身代金を要求し、キャラハンが身代金を持って犯人に接触するのだが・・・。

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　１９７１年アメリカ作品。監督は、『白い肌の異常な夜』のドン･シーゲル。主演は、『スペース･カウボーイ』のクリント・イーストウッド。法の目をくぐって犯罪を繰り返す異常者とタフな刑事の対決を描いたポリスアクション作品。

　クリント･イーストウッドの俳優としての人気を決定付けた名作で、犯人との対決だけでなく、法律の欠点やメンツばかりを気にしている警察の体制とも戦わなければならない主人公の孤独な戦いを描いたアメリカン･ニューシネマの傑作です。クリント･イーストウッドが演じるキャラハン刑事は、大口径の銃を撃ちまくるクールなタフガイで、圧倒的な存在感があり、アンディ･ロビンソンが演じる犯人スコーピオンの異常さも強烈なインパクトがあるのでキャラクターの存在感が抜群です。また、教会へ身代金を届けるシーンや、スタジアムで犯人を追い詰めるシーンなどをはじめとして、絵画的なセンスを感じさせる映像美も美しく、銃撃シーンの映像は、西部劇を得意とするドン･シーゲル監督らしい独特の緊張感があります。そして、連続殺人を繰り返す異常者を逮捕しようとする主人公キャラハン刑事は、犯人のスコーピオンだけでなく、自分の立場を守ろうとする上司や市長、不完全な法律とも戦わなければならないという現実味のあるストーリーで、悪人をやっつけるという単純なポリスアクションとは違って、深遠なテーマが根底にあり、単なる娯楽作品としてのアクション映画とは、全く違った重みがあります。キャラクターの魅力、映像美、毒舌型のユーモア、深遠でリアルなストーリーなど、どれを取っても最高の作品ですが、７０年代初頭の作品なので、さすがに映像的には古さを感じます。それさえガマンすれば、ポリスアクションの最高峰として、社会の現実をリアルに描いたアメリカン･ニューシネマの傑作としてオススメできる名作です。

　この作品で描かれているような刑事のツライ立場は、アメリカの警察だけでなく、日本でも同じようです。私は、不本意ながら、１０代、２０代の頃は警察にお世話になることが多かったので、警官、刑事さんと話をする機会が多かったんですが、交通違反などの取締りでは、一般市民に嫌われ、凶悪な犯罪者には逆恨みされるなど人に嫌われ、憎まれる仕事をしているにも関わらず、安月給で不規則な生活を強いられる警察の仕事は、本当に大変みたいです。この作品は、一般に人にとっては、警察のツライ立場を理解するいい機会を与えてくれる作品であり、警察関係者の方にとっては、共感できる作品としも価値があるかもしれませんね。

あの男にも権利はある

　民主主義の国では、個人の権利が尊重されますが、個人の権利を尊重しすぎるあまり、証拠の入手方法、捜査方法に不備があれば、裁判で証拠として採用されず、裁判では無罪になってしまいます。結果的に検挙率は下がり、一般市民が犯罪の犠牲になってしまいます。あまりにも不完全な法律で、多くの犯罪者が野放しになってしまうというアメリカの法律の現状を批判しているようにも感じられます。

辞めて当然だと思う

　キャラハン刑事のパートナーであるチコは、銃撃されて重症を負い刑事を辞める決心をします。一般市民からはブタ呼ばわりされて嫌われ、安い給料で凶悪な犯罪者を相手に命懸けの仕事、しかも法律でさえ捜査を不利にするような状況で働くのは、本当に大変ですよね。

いいさ、死にたきゃ勝手に死ね

　自殺をしようとビルに登った男を説得する為に、キャラハン刑事が現場に向いますが、キャラハン刑事は、自殺を止めようとはしません。彼なりの方法で男を救いますが、ハリー･キャラハンという男のキャラクターをうまく表現したシーンで、この作品中で最も笑える場面になっています。

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