楽しみながらも才能全開！

　２００２年発売、アラニス･モリセットの５枚目のスタジオレコーディングアルバム。『ハンズ･クリーン』『ソー・アンセクシー』『プレシャス・イリュージョンズ』などのシングルヒットを収録し、全世界で５００万枚以上のセールする記録する大ヒットになりました。ストーン・テンプル・パイロッツのディーン・ディレオ、レッド･ホット･チリ･ペッパーズのフリーなど豪華なミュージシャンが参加し、アラニス･モリセットのセルフプロデュースによってレコーディングされた名盤で、セルフプロデュースによって、アラニス･モリセット自身のイマジネーションを１００％出し切ったアルバムと言えるかもしれません。

　記録的なメガヒットとなった『ジャグド･リトル･ピル』、評論家やプロミュージシャンから絶賛された『サポーズド・フォーマー・インファチュエイション・ジャンキー』の次に発表された本作は、何とセルフプロデュースアルバム！ミュージシャン、バンドとして成功してもプロデューサーというのは別物で、セルフプロデュースでコケるアーティストは多いですが、初プロデュースアルバムとは思えないこのアルバムの完成度の高さに、まず驚かされます。ビッグネームのミュージシャンがゲスト参加していますが、すっかりアラニス･モリセットの色に染まってしまっていて、ＣＤのクレジットを確認しないと分らないほど自然にバンドアンサンブルに溶け込んでいます。前２作は、プロデューサーの技量に頼っていた面と妥協した面があったと思いますが、本作ではアレンジ、プロデュース面でも、自分の歌詞、曲を完全に表現しきれたという満足感が感じられ、それでいて、プレッシャーでガチガチになっていたり、背伸びしようとする不自然さが全く無いリラックスした雰囲気に満ちているのが凄いです。『ハンズ･クリーン』のメロディの心地よさ、『恋人に求める21の条件』のレッド･ツェッペリン風のゆがんだリフ、『ソー・アンセクシー』の浮遊感に満ちた不思議な空間表現力など、ポップな楽曲を楽しめるポピュラーなアルバムとしても優秀で、玄人好みの前２作よりも、一般のリスナーにとっては親しみやすい名盤だと思います。

　こんなアルバムをセルフプロデュースで作ってしまうなんて、んー、やっぱり人間じゃないのかなぁ、という気になりますね。アラニス･モリセットの歌詞、メロディは、どこか浮世離れした魅力があって、天使を主人公にした『ドグマ』『シティ･オブ･エンジェル』などで、彼女の曲が使用されているのは、そんな人間離れしたセンスが天使のイメージにしっくりくるからなんだと思いますが、このアルバムも、あーぁ人間じゃないんだなぁ、なんて感じて背筋が寒くなるほど感動します。もちろん美しいメロディとロックフィーリングを楽しめるアルバムですが、ＤＶＤオーディオなどの高音質ソフトで、このアルバムの音楽空間に浸ると、浮世の苦労をしばし忘れさせてくれるほどの威力を発揮しちゃいます。感動できるという意味では、前２作よりも、凄いと思いますね。リアルタイムでアラニス･モリセットのファンになった世代も、６０年代、７０年代のロックの黄金期を知っているファンにもオススメできる名盤です。

　  　

 

■　 ハンズ・クリーン　■

　イントロのギターのフレーズ、ヴォーカルのメロディラインが、どうしようもなく懐かしく感じられて癒されます。一緒に歌いたくなるようなポップな曲なのに、こんなに癒されるのはなぜでしょうか？個人的には、２０００年以降に発表されたシングルの中では、トップ５に入る名曲です。

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ＤＶＤオーディオでも発売！

　アラニス･モリセットのアルバムは、どのアルバムもイマジネーション豊かなアレンジで高音質ですが、このアルバムはＤＶＤオーディオでも発売されました。ステレオ２ｃｈと５．１ｃｈの音源を収録している他、スタジオでのレコーディング風景を撮影した写真や歌詞、さらにアラニス･モリセットのインタビュー映像なども収録されています。現在輸入盤で入手可能ですが、廃盤になる可能性が高いので早めに購入した方が無難でしょう。とにかく恐ろしく音がいいので、アラニス･モリセットの作り出す異次元空間にどっぷりと浸れるお買い得な高音質盤です。

 

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