ここから世界へ

　１９７０年発売、フリーの３作目のスタジオレコーディングアルバム。シングルカットされた『オールライト・ナウ』が世界中で大ヒットしてフリーの名を世界に知らしめたブルースロックの名盤。『ファイアー・アンド・ウォーター』『ミスター・ビッグ』『オールライト・ナウ』などを収録。

　ロックのスタンダードナンバーとして有名な『オールライト・ナウ』を収録した名盤として有名ですが、このアルバムではフリーのメンバーがセルフプロデュースを担当し、前作までのべったりとしたマニア向けのブルースロックから、バンドとしての個性がハッキリと現れ、サウンドアレンジも前作までより洗練されています。ブルースをベースにしたハードロックという路線はそのままですが、ブルースロックの割には大ヒットした『オールライト・ナウ』をはじめとしてポップな曲が多くなり、ベーシスト兼ソングライターのアンディ・フレイザーのセンスが生かされた斬新なアレンジの『ミスター・ビッグ』『オールライト・ナウ』などは、ミュージシャンにとっても刺激的で、リスナーにもミュージシャンにも愛される名盤に仕上がっています。『オー・アイ・ウェプト』『ヘヴィ・ロード』『ドント・セイ・ユー・ラヴ・ミー』などのブルージーな曲では、歌詞も人間の存在自体が悲しみに満ちている事を痛感させるような内容で、ブルースファンにとっては、たまらなく魅力的だと思いますが、セルフプロデュースによってアンディ・フレイザーのアレンジャーとしての才能が十分に発揮されたことにより、本場アメリカのブルースロックとは一味違うブリティッシュブルースの魅力が確立されたアルバムだと思います。特にピアノとパーカッションを中心にしたシンプルなアレンジでまとめた『ヘヴィ・ロード』などは、ブルースロックではかなり異色の作品で、フリーの個性、音楽的な才能の深さに感心させられます。『オールライト・ナウ』というハードロックの名曲を楽しめるだけでなく、ブルースロックの可能性、魅力を広げたアルバムとして特別な価値のある名盤だと思います。

　このアルバムには、かなりハマリました。まだバンドをはじめたばかりの頃に聴いていたんですが、ギター、ベース、ドラム、ヴォーカルどれを取ってもカッコイイし渋い！１６歳頃にブルースロックにハマるって、ちょっとオジン臭いような気がしますが、こういう名盤は年齢を問わず分る人には分かるんだと思います。比較的演奏がシンプルで真似しやすかったので、『オールライト・ナウ』などは何度もカヴァーで演奏しました。私はドラム担当だったんですが、ポール・コゾフのギタープレイには、本当にほれ込みました。ブルース系のギタリストには絶対オススメです。

 

 

 

　このアルバムで一番有名なのは、大ヒット曲『オールライト・ナウ』ですが、アンディ・フレイザーのベースソロを楽しめる名曲も収録されています。この曲は、後に、ビリー・シーン、ポール・ギルバートらが結成し有名になるバンドの由来にもなっています。ベーシストにとっては、この曲のベースソロのアイディアは衝撃的でしょう。

アナログレコードは、まだ買えます。楽天で探しましょう！

幻の名盤

　２００１年ごろに紙ジャケットのリマスター盤が発売されましたが、国内盤と輸入盤の音質の違いが話題になり、オーディオ誌で『涙が出るほど音のいいリマスター盤』として紹介され、国内盤の紙ジャケットが海外でも評判になりました。私もすぐに購入しましたが、本当に涙が出るほど音質が良くて驚きました。現在ではＳＨＭ−ＣＤなどが発売になり、さらに音質が向上しているので古い紙ジャケットを探す意味はありませんが、音質が飛躍的に向上したアルバムとしても有名になりました。現在ではＳＨＭ−ＣＤでボーナストラック６曲を追加した『ファイアー・アンド・ウォーター＋６』、３枚組みの『ファイアー・アンド・ウォーター＋２３』などが発売されています。