１９世紀末、アメリカ西部のカウボーイ、フランク・ホプキンスは野生育ちの愛馬ヒダルゴと共に長距離競走で無敵だったが、インディアンの虐殺を目の当たりにしてからは、酒におぼれ、ウエスタン・ショーに出演しながら自堕落な生活をしていた。ある時、アラブの族長シーク・リヤドが主催する『オーシャン・オブ・ファイヤー』と呼ばれる長距離競走に誘われ、アラビア砂漠へ渡航する。レースは約４８００kmアラビア砂漠を横断する過酷な競技であるだけでなく、アメリカ人への反発や、利害関係が複雑にからみあい、買収や妨害など幾多の試練が待ち受けていた・・・。

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　２００４年アメリカ作品。監督は『遠い空の向こうに』などのジョー･ジョンストン、主演は、『インディアン･ランナー』『ロード･オブ･ザ･リング』シリーズなどのヴィゴ･モーテンセン。実在した騎手フランク・ホプキンスと愛馬ヒダルゴの人生を元にした競馬映画ですが、競馬場ではなくアラビア砂漠を横断するレースなので、『シービスケット』などとは、一味違うスペクタルも楽しめる作品です。

　時代は１９世紀末、インディアンの虐殺シーンからスタートし、レースの場所も砂漠なので、全体的に埃っぽく、競馬でイメージする緑色のレース場、草木の生い茂った自然などは出てきませんが、実話をベースにした物語で、主人公のフランクと愛馬ヒダルゴの友情、灼熱地獄の砂漠でのレースシーンには迫力があり、競馬ファン、馬好きの方には勿論、競馬ファン以外の方にもエンターテイメント性の高い作品になっています。参加者のほとんどが焼け死んでしまう灼熱、イナゴの大群、強烈な砂嵐などなど自然の猛威だけでなく、競争相手の策略、妨害などもあり、更にアラブの族長の娘がトラブルのタネになり、最後までレースの行方は分りません。主演のヴィゴ･モーテンセンも、『インディアン･ランナー』以来のハマリ役で、彼の魅力が最大限に生かされた作品になっています。実在の人物、フランク･ホプキンスのレース後の活動を紹介したエピローグも感動的です。

俺の事なら何とでも言え

　フランクの愛馬ヒダルゴは、小柄なまだら馬のマスタング、その小さな体の為に、バカにされることも多いのですが、自分の事はともかく、愛馬の悪口だけは絶対に許せないフランクの行動には、ヒダルゴに対する信頼、愛情が強く現れています。私たちも、自分の悪口より、家族や友人の悪口の方がガマンできないように、フランクにとってヒダルゴは、家族であり友人であるわけですから、当然かもしれませんが、家族や友人だけでなく、ペットに対してもこれだけ愛情を注げる人は最高だと思います。

もしこの世に天国があるなら・・・

　灼熱の砂漠で、力尽き、倒れてしまったヒダルゴに向かってフランクが語りかけます。『この世に天国があるなら、地獄もある・・・』。この世のものとは思えないほど美しい風景や音楽、天使のような人との出会いなど、この世に生きていながらも、天国にいるような至福を感じる事もありますが、地獄のような光景や、悪魔のような人間の仕業に震え上がる事もあります。私たちの生きている世界は天国の一部であり、地獄の一部でもあるのかもしれません。そんな事を感じさせる名場面です。

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