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インディアン・ランナー
 
The Indian Runner

●監督
ショーン・ペン

●キャスト
ヴィゴ・モーテンセン
デヴィッド・モース
パトリシア・アークエット
ヴァレリア・ゴリノ
チャールズ・ブロンソン
デニス・ホッパー
ベニチオ・デル・トロ
チャールズ・ブロンソン


■ ストーリー ■


 1968年、ネブラスカ、地元の警官ジョー・ロバーツは、妻マリアと、生まれたばかりの子供と幸せに暮らしていた。ジョーにはフランクという弟がいるが、誠実で温厚な性格のジョーとは正反対の攻撃的な性格で、昔から両親を悩ませていた。フランクはベトナム戦争から帰還し、故郷へ帰ってくるが、ジョーと再会した後すぐに、両親にも会わずに旅に出てしまう。その後、両親が他界し、フランクは、恋人のドロシーと共に故郷に帰ってくるのだが・・・。

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■ レビュー ■

 

 ブルース・スプリングスティーンのアルバム『ネブラスカ』に収録されている『ハイウェイ・パトロールマン』の歌詞にショックを受けたショーン・ペンが、自ら脚本を担当し、初監督した衝撃作!。主演は、『ロード・オブ・ザ・リング』シリーズのヴィゴ・モーテンセン、『グリーン・マイル』『クロッシング・ガード』などに出演しているデヴィッド・モース、『トゥルー・ロマンス』『スティグマータ・聖痕』などに主演しているパトリシア・アークエット。さらに、久しぶりの映画出演となった名優チャールズ・ブロンソン、チョイ役ですが、『トラフィック』『チェ・28歳の革命 』などに出演しているベニチオ・デル・トロ、『イージー・ライダー』のデニス・ホッパーも出演しています。今となっては、キャストだけでも凄い顔ぶれですが、デヴィッド・モース、ヴィゴ・モーテンセン、パトリシア・アークエット、ベニチオ・デル・トロなどは、この作品に出演したのをキッカケに大活躍するようになりました。ショーン・ペンは、役者の才能を見抜く能力も一流なようです。

 あくまでも個人的な意見ですが、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』、オリバー・ストーン監督の『プラトーン』、マイケル・チミノ監督の『ディア・ハンター』などを観た時と同じか、それ以上のショックを受けました。決して自慢できる事ではないのですが、私も、この映画の主人公フランク(ヴィゴ・モーテンセン)のように極端に気が短く、凶暴な性格で、暴力沙汰が多く、自分の将来の姿を観たような恐怖すら感じました。1991年度の作品ですが、まるでアメリカン・ニュー・シネマの作品を観ているような、絶望感に襲われます。物語の時代背景を60年代にしたのは、アメリカン・ニュー・シネマのような感性を描きやすいからだったのかもしれませんが、CCR、ジャニス・ジョプリン、ジェファーソン・エアプレインなど60年代の名曲の数々がBGMに使われていて、楽曲の歌詞が映画のコンセプトを強烈に浮き彫りにしています。また、映画のエンディングでは、インドの詩人タゴールの言葉が引用され、かすかな希望が残り、エンドロールには、ザ・バンドの『アイ・シャル・ビー・リリースト』が流れるという感動的な演出で、映画を観終わった後も、しばらく放心状態になってしまいます。

時間と空間を超え使者はメッセージになる

 『ここが森だった頃、インディアンの使者が駆けていた』、映画のタイトルにもなっているインディアンの使者は、人に真理や叡智を運ぶ特別な存在を暗示しているように感じます。亡くなった父親に敬意を示そうとしないフランクが、『パパもきっと使者だった』と語るのは、そんな特別な存在として父親を敬っている敬意の表れなのかもしれません。地位や名声、富を持たなくても、人々に真理を伝えることができる特別な人間がいる、そんなメッセージを、ブルース・スプリングスティーンが描いたドラマを素材に、ショーン・ペンが伝えたかったのかもしれません。



名シーン

どこかに行くしかない

 妻の出産を目の前にしながら、酒場で酔っ払っているフランクと、妻の元に戻るように説得するジョーの会話が、この映画のハイライトシーン。自分の居場所を見つけられないフランクの繊細で過敏な感情は、かなり過激ではありますが、J・D・サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』の主人公や、、ヘルマン・ヘッセの小説『荒野の狼』の主人公を思い起こさせます。人並みになろうとして努力しても、どうしても社会に居場所が見つけられない人間っているんですよ。

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賛否両論です。 

 かなりのショックを受けた作品だったので、友人にプレゼントしたんですが、ひどく怒られました。その友人いわく『こんな終わり方だと気分が落ち込むから、送るな』と言って激怒していました。ブルース・スプリングスティーンの『ハイウェイ・パトロール・マン』の歌詞を知っている方は、歌詞の通りのストーリーなので、結末は分ると思いますが、こういうエンディングの映画は、最近あまり無いので、ハッピー・エンドを求める方にはオススメできません。また、私のように凶暴な性格で、自分の凶暴性に悩んでいる方にもオススメできません。 


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