旅先で、女房に逃げられて赤ん坊を連れた男と知り合いになった寅さんは、その男に同情して親切にしてやるが、なんと、その男は、赤ん坊を寅さんに預けたまま蒸発。困った寅さんは、赤ん坊を背負って柴又に帰ってくるが、寅さんの子供と勘違いした柴又の人たちは大騒ぎになってしまう。寅さんが事情を説明して、とらやで赤ん坊を預かる事になったが、夜中に高熱を出してしまった為病院に入院する事になり、その病院で働く美人看護婦の京子を見た寅さんは、一目ぼれしてしまう・・・。

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　１９７４年日本映画。監督は『学校』『息子』『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次。出演は、渥美清、倍賞千恵子、十朱幸代など。日本を代表する長寿シリーズ『男はつらいよ』の１４作目。

　親切心が仇になって赤ん坊を押し付けられてしまった寅さんの騒動と、看護婦との恋愛を描いた秀作です。見知らぬ男の赤ん坊を押し付けられてしまうというエピソードは、困っている人を見ると黙ってはいられない寅さんらしい話で笑える物語ですが、お人よしが過ぎて、恋のライバルに協力して自分が失恋してしまうという流れには悲哀を感じます。看護婦という重労働をしながらも、明るく元気な京子を演じている十朱幸代さんは魅力的ですし、お世辞にもハンサムとは言えない貧乏で口下手な男が、誰もが憧れるような美人との恋愛を成就させるという物語は、多くの人に希望を与えてくれると思います。月亭八方が演じている寅さんに赤ん坊を押し付けてしまう男の軽薄さ、厚かましさにはイライラさせられますし、京子のとらやでのジョークは笑えませんが、その辺を我慢すれば、コメディ映画、恋愛映画として楽しめる作品だと思います。

　私はムダに元気なので病院に入院するような事がほとんどなく、看護婦に惚れてしまった事はありませんが、友人の一人が、看護婦さんに惚れてしまった事があります。バイクの事故で入院した時に親切にしてくれた看護婦さんが好きになってしまったそうですが、結局振られていました。看護婦の仕事をしているような女性は、献身的で、誰にでも親切にしてくれるような優しい人が多いので、勘違いしてしまう人も多いようです。患者に親切にするたびに惚れられてしまうと大変かもしれませんね。これから入院する人は、勘違いしないように気をつけた方がいいですね。

生まれた子供には、何の罪もねえんだからな

　両親の愛情をたっぷり注がれて成長する子供もいますし、赤ん坊の時に捨てられて孤児として成長する子供もいます。いずれにしても、子供に罪は無いような気がします。大人の勝手な都合で人生を翻弄される子供は、本当に可哀想です。

これも何かの因果というものかもしれん

　他人の赤ん坊を押し付けられて苦労する寅さんですが、御前様は、何かの因果かもしれないと考え、悲観していません。他人事だからと言うよりは、仏教的な解釈で、これも与えられた試練と考えているのかもしれません。厄介ごとに巻き込まれても、何かの因果によって自分に与えられた試練と考えれば、気持ちが楽になるかもしれませんね。

心や気持ちで女が動いたら、苦労しないだろ

　強い愛情で誰かを愛していても、その愛情が伝えられなかったら、相手も対応のしようがありません。言葉や態度で表現しなくても、愛情の強さ、誠実さが伝わるんだったら、寅さんのように苦労する人はいないでしょうね。

 

本当に、笑わないでください

　寅さんに、告白しなかったら一生後悔するぞ！とアドバイスされた弥太郎が、勇気を出して京子さんに告白するシーン。酔った勢いでの告白にしては、悲しくなるほど気持ちが伝わってきます。オドオドしながらも精一杯気持ちを伝えようとする姿にもらい泣きしてしまいます。

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