夜間中学の教師として働いている黒井は、卒業生が母校を訪ねて来たときに恩師が居ないのは寂しいだろうという思いから、何度も勤務移動の話を断り、同じ学校で働く事にこだわっていた。そんな人柄によって、生徒からクロさんと呼ばれて親しまれていたが、ある日、イノさんと呼ばれていた生徒の訃報が届く・・・。

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　１９９３年日本映画。監督は『男はつらいよ』シリーズの山田洋次。出演は、『釣りバカ日誌』シリーズの西田敏行、『男はつらいよ・知床慕情』の竹下景子など。様々な理由から夜間高校に通う生徒と教師の交流を描いた感動作。

　『男はつらいよ』シリーズや『幸福の黄色いハンカチ』で有名な代表作の一つです。この作品以降、シリーズ化されて全４作品製作されているので、山田洋次監督の重要なライフワークの一つと考えてもいいでしょう。夜間高校を舞台にした作品の構想は、かなり古くから持っていたようで、『男はつらいよ』シリーズの『男はつらいよ・寅次郎かもめ歌』の中でも、端的に取り上げられていましたが、本作では、様々な事情で通常の高校で勉強できなかった生徒の人生や、教師という教える立場でありながら、生徒から多くを学ぶ教師の姿を通して、現代社会の教育問題について考えさせられる作品になっています。中国や韓国などから日本にやってきて文化や習慣の違いに戸惑い、差別に苦しむ生徒の姿、経済的な事情で学校に行けなかった生徒の姿は、通常の高校に通うのが当たり前と考えている人にとっては、かなりのショックだと思います。また、勉強は受験の為という考えしか思い浮かばない人にとっては、学ぶ事の意義を考え直す機会になるかもしれません。

　中国からやってきた生徒が、『アメリカ人、フランス人なら頭下げる、中国人バカにするのはおかしいでしょ』と激怒するシーンがありますが、本当におかしいですよね。日本は、基本的に単一民族によって構成されているので、人種差別などの問題はアメリカなどと比べて深刻ではありませんが、アジアの国から来ている人に対しての差別があるなら、最悪ですね。日本人がいやがるような重労働を担ってくれていたり、嫁不足の農家の為に嫁いでくれたりしている人に対して、差別をするなんて、とんでも無い話ですよね。

私、あなたに何もしてあげられないの

　竹下景子さんが演じる田島先生は、中国から日本に来て苦労をしている生徒の力になろうと奔走しますが、教師の仕事の範囲を超えて、他人の為に何かをしようという田島先生の心がけに心を打たれます。世の中には、損得勘定でしか行動しないような利己的な人間もいますが、他人の為に何かしてあげたいという優しい人間もいるんですよね。

背負ってる人生の重さは、生徒の方がはるかに上でしょ

　本来なら教師と生徒は、教える側と学ぶ側で上下関係がハッキリしていますが、夜間高校の場合、それぞれの事情があり、耐えてきた試練、人生の重さは、先生より生徒の方が上というケースが多いようです。学校で習う教科については、先生の方が知識があっても、人生経験に関しては、教えられることの方がおおいんでしょうね。

 

幸せになれるかもしれない

　反抗的な態度で普通高校を退学になり、人生に絶望していたみどりが、黒井先生との出会いを語るシーン。社会からはみ出してしまった人間の苦悩と、手を差し伸べてくれる教師の存在のありがたみが、痛いほど伝わる名シーンです。

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