1978年日本映画。監督は『学校』『息子』『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次。出演は、渥美清、倍賞千恵子、木の実ナナなど。日本を代表する長寿シリーズ『男はつらいよ』の21作目。
松竹歌劇団のスターがマドンナとして登場する為、松竹歌劇団のステージシーンがたっぷりと楽しめてエンターテイメント性が高い作品になっていて、『幸福の黄色いハンカチ』で役者としてデビューした武田鉄也さんも出演しています。スターとして活躍する奈々子が、仕事を取るか結婚を取るかというシリアスなテーマを中心に描かれていますが、松竹歌劇団の宣伝という意図もあるのかステージシーンが多く、寅さんの恋愛、マドンナの奈々子と恋人の恋愛などの時間が短い為に、肝心のメインテーマの印象が弱くなっています。マドンナの奈々子役で出演している木の実ナナさんは、ステージシーンで見事なダンスと歌を披露し、女優としての演技力の高さで、仕事か結婚かで悩むマドンナを好演、奈々子の妹が不幸な結婚生活をしているなど、庶民生活の現実の厳しさなども描かれていてシリアスなテーマの作品ですが、武田鉄也さんの演じる留吉の失恋は、あまり笑えないので、武田鉄也さんの出演は成功とは言えない様な気がします。松竹歌劇団の様々なバリエーションのステージは本当に見事なので、ミュージカルが好きな方にとっては、かなり楽しめる作品ですが、ドラマとしては、仕事か結婚か悩んだ奈々子の決断もスッキリせず、後味の悪い作品になっています。仕事か結婚かで悩んだ経験のある方なら共感が持てるかもしれませんが、白黒ハッキリとした結末が好きな方には不満が残るかもしれません。
ミュージシャンになりたいとか、役者になりたいとか、何かしら夢を持って生きてきた人にとっては、この作品のマドンナ奈々子の気持ちが理解できるかもしれません。ただし、夢を追って生きていると言えば聞こえはいいですが、結局、自分の夢を優先して生きている人は、エゴイストで自分の事を優先してしまう人間が多いんですよね。こんなタイプの人間が、結婚する事によって自分の夢をあきらめてしまうと、後悔の念が残り、結局結婚もうまくいかないなんて事にもなりかねません。夢を追い続けるのも素晴らしいと思いますが、誰かの為に生きるという生き方も素晴らしいんじゃないでしょうか。両立できれば一番いいんでしょうけど、世の中そんなに甘くないですから・・・。
人生は短いぞ、ぼやぼやしている間に年をとる
私もそうなんですが、今日できることを明日に引き伸ばしてしまうと、どんどん時間を無駄にして、あっという間に歳をとってしまいます。特に若い頃は、まるで時間が無限にあるような感覚で生きていて、日々歳をとり老いていくという実感が持てません。年寄りの説教のように聞こえるかもしれませんが、毎日を大切にしないと、いつの間にか体がいう事を聞かなくなってしまい、死期を意識するようになってしまいます。
二枚目嫌いなんだって、情が無いから
二枚目の男性がすべて薄情というわけではありませんが、ハンサムで人気のある人は、ブサイクで人から軽視される人間の苦しみなどが理解できないので、他人の痛み、苦しみを理解できず思いやりに欠ける人が多いかもしれませんね。ハンサムで情に厚い、美人で情に厚い人なら最高ですけど。
相手が俺を気に入るかどうかが問題だろ
寅さんが反省し、自分の立場をわきまえた発言をしますが、こんな風に謙虚な人が多ければ、独身の人が増えたりしないような気がします。現代社会では、男性でも女性でもプライドが高い人が増えて、高い理想を求めすぎているせいで、独身者が増えているように感じます。謙虚な姿勢というのは日本人の美徳だったんですが、今では、そんな美徳も失われているのかもしれませんね。
若いころの夢とは程遠い現実生活
若い頃の夢を実現できる人はごくわずかで、自分の夢を実現した人は、挫折した人よりも努力した結果だと思いますが、現実には、自分の理想とは違っていた、なんて事もあります。ほとんどの人が、夢を実現できずに終わってしまいますが、それが不幸かどうかは分りません。夢を実現した人でも別の苦しみがありますし、夢が叶わなかった人でも幸せな人はいます。そう考えると、夢が実現できなくても、そんなに悲観する必要は無いような気もします。