1981年日本映画。監督は『学校』『息子』『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次。出演は、渥美清、倍賞千恵子、松坂慶子など。日本を代表する長寿シリーズ『男はつらいよ』の27作目。。
生粋の江戸っ子で大阪嫌いの寅さんが、大阪の女性に惚れてしまった事によって、大阪が大好きになってしまうという物語です。マドンナには、『男はつらいよ・寅次郎の縁談』にも出演している松坂慶子さんが、大阪嫌いの寅さんの価値観を変えてしまうほど幸薄く弱々しい女性を魅力的に演じています。寅さんの恋愛だけでなく、マドンナふみの不幸な境遇を軸に、姉弟の愛情も感動的に描かれ、大阪を代表するようなキャラクターとして、芦屋雁之助、正司照江、正司花江など個性的な出演者が、大阪の雰囲気をリアルに伝えてくれています。『男はつらいよ』シリーズの中では、平均的な作品かもしれませんが、美人でありながら謙虚なマドンナふみのキャラクター、幼い頃に離れ離れになった弟へのふみの愛情など、泣けるシーンが多く、更に、結婚したふみの元を寅さんが訪ねるという粋なエンディングにも格別な魅力があり、個人的には大好きな作品です。松坂慶子さんに関しては、それほど好きなタイプではないんですが、この作品のマドンナとしてはシリーズの中でも最高レベルで、寅さんでなくても惚れてしまうであろう魅力があるのも見逃せません。生粋の江戸っ子である寅さんが大阪嫌いという設定になっていますが、東京と大阪を比較して、大阪を非難するような描写は一切ないので、関西の方にも違和感なく楽しめると思います。
江戸っ子と浪花っ子は、何かとぶつかる事が多いんですよね。私は昔ロックバンドをやっていたんですが、ヴォーカリストが関西出身、ギタリストが東京出身だったので、二人のケンカには悩まされました。二人とも気が小さかったので殴り合いのケンカにはなりませんでしたが、ライブの打ち上げの度に、口論になっていました。まぁ、音楽的な衝突ではなかったので、バンド活動に支障はありませんでしたが、お互いにライフスタイルや価値観に妥協しないで自己主張ばかりが強いと、もめごとが多くなって大変です。
あんたの肩には、大勢の従業員とその家族たちの生活が・・・
タコ社長が、経営危機で苦しむのは今回に限った事ではありませんが、従業員達の生活を守る責任があるという言葉には、中小企業の経営者の責任の重さが感じられ気の毒になってしまいます。自分の家族に対する責任だけでも大変なのに、従業員とその家族への責任があるんですから、大変なプレッシャーだと思います。
嘘つきは泥棒のはじまり
最近、この言葉もあまり聞かなくなりましたね。私も、子供の頃は、両親によく言われました。自分の利益や保身の為に嘘をつくような人間は、犯罪者になってしまうという戒めだと思いますが、犯罪者にならないまでも、嘘ばかりついている人間は、みんなに嫌われますから、誰かも守る為に仕方が無い時以外は、できる限り嘘はつかない方がいいでしょうね。
弟が幸せになりますように
マドンナのふみが、絵馬に願い事を書きますが、自分の事ではなく、弟の幸せを願っているのが印象に残ります。お金持ちになれますようにとか、成功できますようにとか、自分の事ばかり願う人が多いですが、自分以外の誰かの為に願い事をしたり、お祈りをしたりするのが、一番人間的に美しい願いかもしれません。
マジメで将来性のある青年が早死にをする、うまくいかねぇな世の中
私の身近でも、誰からも愛されるような人望のある人間に限って早死にしているような気がします。長生きしている人は、まだこの世でやるべき事があるから生きているんだと思いますが、早死にしてしまう善人は、あまりにも人間的に完成していて、この世での試練をすべて終えてしまった人なのかもしれません。
忘れるってのは、本当にいい事だな
どんな人にも試練は訪れますが、愛している人との別れなど大きな試練に直面すると、生きる気力さえ失ってしまうほど落ち込んでしまう事があります。でも、もう立ち直れないんじゃないかと思うほど悲しい出来事も、時間が経つにつれ徐々に記憶から薄れていきます。どんなに悲しい出来事も忘れる事ができるというのは、人間にとって生きるために必要な能力なのかもしれませんね。