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男はつらいよ・寅次郎サラダ記念日

シリーズ40作(1988年)

●監督
山田洋次

●キャスト
渥美清
倍賞千恵子
三田佳子
三田寛子

■ ストーリー ■


 寅さんは、旅先で知り合った一人の老婆に気に入られて泊めてもらうことになるが、そのおばあさんは高齢で病院で検査をする予定だった。病院へ行くのを嫌がっていた老婆だったが、寅さんの説得で病院に行くことになり、寅さんは、女医の真知子と親しくなる。真知子の家で彼女の姪の由紀と3人で楽しい一時を過ごした寅さんは、その後柴又に帰ってからも由紀の通う早稲田大学を訪ね、由紀との再会を喜び、真知子も寅さんを訪ねるのだが・・・。

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■ レビュー ■

 

 1988年日本映画。監督は『学校』『息子』『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次。出演は、渥美清、倍賞千恵子、三田佳子、三田寛子など。日本を代表する長寿シリーズ『男はつらいよ』のシリーズ第40作。

 ベストセラーになった俵万智の歌集『サラダ記念日』からとったタイトルでもわかるように、本作では、随所に現代的な和歌が挿入され、今までに無い試みで編集された作品になっています。寅さんの恋の相手が地方の病院に勤務する女医という設定は、過疎化の進む地方の現状と、人間の死に関するテーマがクローズアップされていて、和歌に歌われている現代的な感性とは対照的な、シリアスなテーマがメインの作品になっています。和歌の内容や由紀の恋愛には、現代的な軽さがあり、感動的な要素はあまりありませんが、三田佳子の好演によって、人間の死について悩む女医としての自分と、女としての自分の間で悩む真知子のキャラクターに、強烈な存在感があります。日本のバブル期の作品で、タイトルも軽そうなイメージですが、以外にシリアスな重いテーマの作品で、自分の事より病気で苦しむ人の為に一生を捧げようとする医師たちの姿が感動的な作品です。ただし、寅さんの恋愛の要素がちょっと弱く、サイドストーリーとして描かれる由紀の恋愛も軽めなので、バブルに浮かれていた当時の時代背景と、その影で、田舎に残り孤独な死をむかえる高齢者がいるという現実を描いた社会派作品としてのイメージが強く残り、娯楽作品にしては、複雑な気持ちにさせられる作品です。

 最近、親戚のおばあさんが病院で亡くなり、この作品を観ると必ず思い出してしまいます。本作で女医の真知子さんが言っているように、チューブを体に入れられた状態で亡くなったので、複雑な気持ちになってしまいます。延命処置をされて中途半端に長生きさせられるなら、自分の家族の住む家で死んだ方が幸せだったんじゃないかと落ち込んでしまいます。寝たきりの状態だと家族の負担も大変だと思いますが、できれば自分の家で、家族に別れを告げてから召された方が成仏できるような気がします。

住み慣れた家で、家族に囲まれて安らかに・・・

 高齢化社会になり、老人ホームや介護施設に入所して天命を全うする人も増えていますが、住み慣れた家で、家族に看取られて死ぬ事ができれば、一番幸せなのかもしれません。この作品では、老人を一人残して都会で生活をする人間を批判しているような気もしますが、都会でなくては生活費が稼げない日本の現状や、福祉制度にも問題があると思います。

何のために勉強するのかな?

 悲しい事やツライ事があった時に、ちゃんと筋道を立てて、どうしたらいいか考えられるように・・・。寅さんらしい答えでホッとしますが、大学に行って勉強しても、損得勘定ばかりうまくなって、人を騙してでも得をしようとするような賢い人間が増えてしまうなら、無学なままの方がいいかもしれません。

寅のような無欲な男と話していると、ホッとします。

 バブル期の日本では、自分の事ばかり考える強欲な人間が増えてしまい、寅さんのような人情のある人間は、少なくなってしまったのかもしれません。褒めてるわけではないというオチが付くセリフですが、欲の深い人間に対する皮肉にも聞こえます。


 

名シーン

この病院はあなたを必要としている。

 東京の実家に帰りたいと言う真知子の言葉を聞いて院長が激怒します。病院に必要とされているというよりは、病気に苦しむ人に必要とされていると言った方がいいのかもしれませんが、自分のプライベートよりも、人の為に生涯を捧げようとする院長の志に頭が下がります。

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ガイド

この土地は絶対に売りません!

 タコ社長の工場に、こんな看板が立てられますが、バブル期の東京の地価は高騰し、大企業や投資化が土地を手に入れるために地上げ屋を雇って、脅かされたり、放火されたりして土地を奪われるという事件も多く、笑うに笑えないエピソードです。東京で中小企業を経営する人にとっては、深刻な問題でした。




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