2010年日本作品。監督はミュージシャン、音楽プロデューサーとして有名な小林武史。プロデュースと脚本で岩井俊二が参加。出演は、『ハルフウェイ』の北乃きい、KAT-TUNの赤西仁、『ソラニン』の高良健吾、『ふくろう』の伊藤歩、『婚前特急』の杏、『書道ガールズ!! わたしたちの甲子園
』の金子ノブアキなど。1990年代、バンドブームの絶頂期を背景にした青春映画。
岩井俊二監督がミュージシャンの小林武志を監督に指名して作り上げた青春映画の傑作です。実際にミュージシャンとして活躍している小林武志さんが、監督を務めているので、ミュージシャンの生活が生々しくリアルに描かれているという点だけでも興味深い作品ですが、期待した以上に完成度の高い作品に仕上がっていて驚かされました。伊藤歩、北乃きいなどの実力派の女優の熱演により感動的なシーンが多いですし、ドラマーにプロの金子ノブアキを起用した事によって、バンドの演奏シーンに抜群の臨場感があります。そして、映像的にも絵画的なセンスを感じさせる美しい映像美が多く、小林武志さんの作る音楽が映像に見事に融合して、素晴らしい芸術的な作品になっています。ロックファンにとっては、ミュージシャンの生活を知るための映画として楽しめますし、純粋に恋愛映画として、青春映画としても楽しめる秀作になっています。
時代背景は、テレビでイカ天などが高視聴率を記録し、空前のバンドブームだった90年代。ロックのジャンルが多様化し、インディーズ系のアーティストも人気を博した時代を背景したのは、小林武志さんのミュージシャンとしてのこだわりがあったようです。この頃、私もバンド活動をしていたので、何となく雰囲気が理解できるような気がします。リハーサルやライブのシーンがリアルなだけでなく、ライブの後の打ち上げ、バンド内でのイザコザ、人気が出るにつれて自分を見失っていく過程など、かなり生々しく描かれているのでミュージシャンの方はミョーに納得できるでしょうし、ロックファンにとっては、ロック界の内幕を知ることのできる作品としても価値ありでしょう。私が一番印象に残ったのは、小久保というレコード会社のプロデューサーが、やたらに悪趣味で威張っている所。いるんですよね、こういう奴。全く音楽の才能が無いくせに、コネで入社して威張っている奴、こういうタイプは、頭が固いから古い音楽の知識しかなくて新しい物を作れない、しかも、ファッションセンスも時代錯誤で、いい年して趣味の悪いアイビー。あー、最悪ですね。こんなのと一緒に仕事するならミュージシャンも大変です。多分、小林武志さんも、こんなタイプのプロデューサーに苦労したんでしょうね。
んな事してるから解散したんでしょ
ジョン・レノンが、ビートルズの練習にオノ・ヨーコを連れてきた事が引き合いに出されていますが、何だか苦笑してしまいます。ビートルズが解散したのは、オノ・ヨーコのせいだ!なんて極論を唱える人がいるくらいですが、映画『レット・イット・ビー』の中でも、スタジオにオノ・ヨーコの姿が見られますし、バンドの練習に部外者を連れてくるのは基本的にタブーだと思います。バンドにとっての聖域に、バンドのメンバー、プロデューサー、エンジニア以外の人間が入り込むと、集中力、モチベーションの低下を招き、メンバー間の不和の原因になります。ローリング・ストーンズのスタジオワークでは、メンバーの恋人や奥さんは絶対に立ち入り禁止になっているそうです。まぁ、ローリング・ストーンズが良くて、ビートルズが悪いという話ではありませんが、何にしても仕事とプライベートは分けて考えた方が良さそうです。
売れる事が大事なの
ミュージシャンと言えば、多くの人が憧れる職業ですが、プロになるという事はお金を稼がなくてはいけないという事。CDが売れて、コンサート会場が満員にならなければ給料がもらえないわけです。夢の無い話かもしれませんが、プロとしてミュージシャンを続けたいなら売れないといけないわけです。自分のやりたい音楽が売れる音楽なら一番いいんですが、なかなかねー。売れ線を狙って妥協した音楽をプレイするのがイヤなら、アマチュアでやった方が絶対に楽しいはずです。
自分の事が嫌いなの
アサコは、自分に似ているナツを嫌っています。なんか気の毒な気もしますね。自分自身の欠点を他人に見出して、その人を嫌うというのは、人間の習性として良くあるパターンですが、自分に似てるから嫌い!と言われた方は、悲しいですよね。八つ当たりのようなもんですからね。