2015年日本作品。監督は、『クライマーズ・ハイ』の原田眞人、出演は、『晴天の霹靂』の大泉洋、『愛のむきだし』の満島ひかり、『沈まぬ太陽』の戸田恵梨香など。井上ひさしさんの小説『東慶寺花だより』を元に、離婚を望む女が駆け込む寺を舞台に、女たちのそれぞれの生き様を描いた感動の人間ドラマ。
これほど完成度の高い作品は、なかなか無いと思います。個人的には、2000年以降に公開された日本映画では最高だと思いますし、黒澤明監督の『七人の侍』、小津安二郎監督の『東京物語』などと同等に評価されるべき名作だと思います。登場人物の持つ離婚の理由は様々で、それぞれ人情味溢れるエピソードに涙が溢れます。時代劇ですし、暗いテーマなので暗く重苦しい雰囲気にならないように、コミカルなキャラクターの大泉洋さんを起用し、饒舌で明るいキャラクターを生かしユーモアが全編にちりばめられていて、かなり笑えます。笑えるマシンガントークや、ボケ、ツッコミもバランス良く織り込まれています。そして、二組のカップルの恋愛を描いたラブストーリーとしても楽しますし、山に咲く花、紅葉、竹林、雨に打たれる苔、寺の石段など、さりげなく挿入される日本ならではの風景の美しい映像にはため息がでます。最大の見所は、離婚する為に寺に駆け込んだ女性たちのドラマです。暴力に苦しむ女性、育ての親の為に泣く泣く離婚を選ぶ女性、愛する男の為にあえて離婚を望む女性など人間味のある物語が感動的です。そして、それらの登場人物を暖かく見守り、時にはかばい、時には助言を与えてくれる周囲の人々の優しさにも涙が溢れてしまいます。144分と長い映画ですが、重厚で感動的な物語、センスのいいユーモア、テンポのいい会話とムダの無い編集によって、長さを全く感じさせない傑作になっています。感動の涙で観終わった後に疲労感さえ感じる名作ですが、江戸時代の言葉でのセリフは聞き取りづらいので会話の内容が理解しにくい部分があり、早口でのマシンガントークには迫力がありますが、こちらも注しないと意味が分からないかもしれません。DVDなどのソフトには日本語字幕があるので、日本語字幕での鑑賞をオススメします。
東慶寺での修行生活の映像も見事でした。メインキャストの3人、戸田恵梨香、満島ひかり、内山理名さんは勿論魅力的ですが、その他、何十人もの女性たちの飾らない素の魅力を引き出した自然な映像美も日本映画史に残る名シーンの一つだと思います。顔がカワイイとか美人とかいう事ではなく、内面から出る美しさをうまく映像に残せているので、その美しさにも魅了されます。逆に、嫉妬からもめるシーンもリアルでした。女性だけでの閉鎖的な環境だと、こういう事も良くあります男性の場合は地位や名声での嫉妬が多いようですが、女性の場合は恋愛に関しての嫉妬が多いみたいですね。
世ん中には、つらい目におうた女たつが、ようけえおるもんですね
江戸時代には女性のほうから離婚する事ができなかったそうなので、奴隷のように立場が悪かった事がわかります。ここまで酷くないにしても、今でも男性上位の社会で苦しんでいる女性が多いような気がします。もっと女性が生き易い世の中になるといいですね。
命あるものは必ず死に、出会ったものは必ず別れる
当たり前の事ですが、忙しい日常生活の中では、あまり意識することも無いと思います。今、愛する人がそばにいて幸せでも、いずれは別れなければなりません。好きな人と一緒にいられる時間も限られているわけです。そう考えれば、相手と一緒にいる時間を大切にしたいと考えてケンカする事もなくなるかもしれませんね。逆に大嫌いな人が職場などにいても、いずれいなくなると思えばガマンできるかもしれません。
悩んだり苦しんだりしてる人の為に、寺があり寺法がある
法律といのも本来は、こういうものだと思います。人々を守るためにあるべきで、一部の人の利益の為にあってはいけないと思います。決まりごとだから変えられないという考えも本末転倒で、人の安全を守り、悩み苦しむ人を助ける為なら変更も必要でしょう。
罪を犯して生きてきましした。許されるならば・・・
罪を犯していると自覚している人なら、許しを得たいと願っていると思います。罪を許してくれるのは神様だと思いますが、罪を自覚して悔い改めている人なら、きっと赦しを得られると思います。