アメリカの有名テレビ局IBCの社長フランク・クロスは、結婚もせずに仕事一筋の仕事人間。史上最年少でテレビ局の社長になったほどの手腕はさすがだが、視聴率を優先した非人間的な仕事ぶりが社員たちに恐れられていた。クリスマスに放送する番組のＣＭをめぐって社員と対立したフランクは、その社員を即刻クビにし、唯一の身内である弟にプレゼントをケチるような人間性には、彼の秘書もあきれていた。そんなフランクのもとに、前社長の亡霊が現れ、生き方を改めるように警告し、これから３人のゴーストが現れると予言する・・・。

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　１９８８年アメリカ作品。監督は『オーメン』『リーサル･ウェポン』などのリチャード・ドナー、出演は『ロスト・イン・トランスレーション』のビル･マーレイ、『レイダース・失われたアーク』のカレン･アレン、『フラッシュ･バック』のキャロル･ケインなど。文豪チャールズ・ディケンズの『クリスマス・キャロル』を現代風にアレンジした感動作。

　ディケンズの名作『クリスマス･キャロル』は、今までに何度も映画化されていますが、物語の舞台を現代のニューヨーク、主人公をテレビ局の社長という設定にした事によって、名作ならではの堅苦しさ、説教がマシさを無くして、『リーサル･ウェポン』シリーズなど娯楽性豊かな作品で才能を発揮するリチャード･ドナー監督が、主演のビル･マーレイの持ち味を最大限に生かし、子供から大人まで笑って楽しめる感動作に仕上げています。主人公フランクの恋人役で出演しているカレン･アレンは、貧しい人々の為にボランティア活動をする心優しい女性にピッタリで、フランクの前に現れる３人のゴーストも、現代的で面白いキャラクターになっていますが、何と言っても、この作品は、ビル･マーレイの存在感によって支配されています。自己中心的で非情な男というキャラクターと、恋人や家族を思い出して涙を見せる優しい男というキャラクターを見事に演じ分け、良くも悪くも明るいキャラクターという面では一貫しているので、最後まで明るい気分で楽しめます。自分の過去と現在、そして未来の姿を見る機会を得た主人公が、いつの間に変わってしまった自分に気づき、心を改めるという物語は、今でも多くの映画に用いられているテーマですが、文豪ディケンズの原作をベースにしているだけあって、心に残る言葉が多く、娯楽作品として笑って楽しんだ後にも深い感動が残る名作です。１９８０年代の作品なので、若い世代には分らない有名人なども登場していて、世代のギャップもありますが、その点だけ無視すれば、誰でも楽しめる娯楽作品としてオススメできます。

今からだって、やり直せるわ

　まだ手遅れじゃない、今から改心すれば・・・。私のような悪人には希望が感じられる言葉です。人間誰しも長く生きていれば、間違いもありますし、自分でも気づかないうちに人間性を失い、地位や名声だけを追い求める孤独な人間になってしまっている人もいます。仕事に追われて自分を見失っている人や、過去の過ちに罪悪感を感じている人にとっては、希望の光を与えてくれる言葉だと思います。

人を救う前に、自分を救え

　他人の事より自分の事を！とアドバイスする人もいますが、自分より他人を優先させる気持ちこそ、人間にとって最も重要な事かもしれません。不用意な一言が、天使のような優しさを持った恋人の人生さえ変えてしまい、フランクはうろたえます。自己中心的な人間に災難がふりかかっても自業自得ですが、他人の人生まで変えてしまうというのは最悪です。

クリスマス･キャロルとして有名な作品です

　邦題の『３人のゴースト』からは、内容が『クリスマス･キャロル』だという事がわかりづらいのが難点ですが、これは、ビル･マーレイ主演の『ゴースト･バスターズ』のイメージで宣伝しようとしたからかもしれません。結果的に、『クリスマス･キャロル』の映画化作品としての知名度が下がってしまったのは残念です。

 

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