ヒット作に恵まれず破産寸前の映画監督ヴィクター・タランスキーは、彼のファンの男から、本物と見分けがつかないほど精巧なCG女優をコンピュータソフトを譲り受け、彼の映画の主演としてシモーヌという女優を作り上げる。タランスキー監督は、わがままな俳優の起用をあきらめ、彼の作ったＣＧ女優シモーヌの主演作品を発表、あまりの完成度の高さに誰もＣＧだと見抜けず、シモーヌの演技力、魅力に大反響が巻き起こる。シモーヌのおかげで有名になったタランスキー監督は、今さらＣＧで作った女優だとは言えず、シモーヌが実在するかのように見せかけて、映画製作を続けるのだが・・・。

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　２００２年アメリカ作品。監督は『ガタカ』『ロード･オブ･ウォー』などのアンドリュー･ニコル、出演は『ヒート』『インサイダー』などの アル・パチーノ、『４０歳の童貞男』のキャサリン・キーナー、『リアリティ･バイツ』のウィノナ･ラーダー、『アクロス･ザ･ユニバース』のエヴァン・レイチェル・ウッドなど。破産寸前の映画監督が、ＣＧで作った女優を起用して大成功するという、ハリウッド俳優やセレブに対する痛烈な皮肉を込めたドラマ。

　もし、ＣＧで作った俳優が本物の俳優と同じか、それ以上の演技をしてくれたら？こんなテーマの作品ですが、ギャラが高騰しわがままになっている俳優に対しての映画監督の本音を表現した作品なのかもしれません。映画製作の内幕や高慢な女優の実態を知る事もできますし、セレブや有名俳優に対して妄信的に熱を上げる観衆に対する皮肉をユーモアたっぷりに描いていてなかなかの秀作だと思います。主演のアル･パチーノの存在感は相変わらず素晴らしいですが、彼を取り巻く女性たちが美人揃いで、華やかなハリウッドの雰囲気を十分に楽しめる作品になっています。映画監督が主人公という事もあって、映像的には、カラーフィルターをかけたような独特の色合いで変化をつけている部分もありますが、全体的に柔らかい光に包まれたような癒しのある映像になっていて、芸術作品として考えても見事な映像美です。そして、一番の魅力は、この作品でＣＧで作り上げられた女優を演じているレイチェル・ロバーツの美しでしょう。オーディションで選ばれたようですが、モデル出身という事もあり、抜群のスタイルと美貌を持った彼女のキャラクターは、ＣＧで作った最高傑作の女優という役にピッタリだと思います。娯楽作品として、 アル・パチーノの存在感ある演技、女優の美しさなどを楽しめる作品ですが、親子の愛情という感動的なテーマもあって、かなり楽しめる作品です。意外にマイナーな作品で、ＤＶＤも廃盤になってしまっているのが残念です。

映画スターは、やりたい放題

　映画スターのギャラの高騰はニュースでも話題になりますが、映画出演の契約書に信じられないような項目があるようです。映画スターの人気が作品の興行成績に大きな影響力を持つ以上、監督や製作者は俳優のわがままを受け入れなければならないんでしょうね。

この世は全てまやかし、皆、誰かを欺いている

　映画に限らず、この世の中は虚飾で溢れかえっています。利益優先で非人道的な経営をしている会社が、イメージアップの為に善人ぶったＣＭを放送し、人を騙す事によって大きな利益を上げている会社も多いでしょう。個人レベルで考えても、悪意があるにも関わらず、本音を隠して作り笑いをして、人を欺いている人も多いと思います。騙されないように注意していても、誰でも騙されているのかもしれません。

心に届いた？

　ＤＶＤにはカットされてしまった未公開映像集が収録されていますが、その未公開映像の中に『ファン』というタイトルのシーンがあります。タランスキー監督の作品に感動したファンが、友達も親も、医者さえも癒せなかった心の傷を映画が癒してくれたと、監督とシモーネに感謝しますが、本や映画、音楽などとの出会いが、人生を変えてしまう事もありますよね。いいシーンなんでカットされたのが残念です。

アル･パチーノとウィノナ･ライダー

　この作品で、 アル・パチーノとウィノナ･ライダーの共演が実現しました。『ゴッドファーザーPART�V』で、マイケル･コルレオーネの娘役としてウィノナ･ライダーが出演するという噂があった時には、かなり期待しましたが、結局コッポラ監督の娘のソフィア･コッポラが出演、ガッカリさせられたので、アル・パチーノとウィノナ･ライダーの共演が実現したというだけでもファンにとっては嬉しいと思います。

 

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