ピンクは、第二次大戦中で父親が戦死した為母子家庭で育ち、孤独な子供時代を過ごした。成長したピンクは、世界的に有名なロックスターになるが、孤独な少年時代のトラウマ、妻の不倫や、スターゆえの疎外感などから孤独感に苦しみ、ドラッグに手を出して常軌を逸し、異常な独裁者になってしまう・・・。

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　１９８２年イギリス作品。監督は、『ミッドナイト・エクスプレス』『フェーム』のアラン・パーカー。出演は、ロック・バンド、ブームタウン・ラッツのヴォーカリストのボブ・ゲルドフなど。イギリスのプログレッシブ・ロック・バンド、ピンク・フロイドのコンセプトアルバム『ザ・ウォール』を映画化。

　この作品は、イギリスの有名なロック・バンド、ピンク・フロイドの名盤『ザ・ウォール』の歌詞の内容を映像化したような映画なので、一般的な映画と並べて評価するのは難しいのですが、ピンク・フロイドのアルバム『ザ・ウォール』を映像で具現化して理解できるという意味では、ロックファンにとっては嬉しい作品ですし、鬼才アラン・パーカーが監督した事によって、リアリティのある芸術作品に仕上がっています。ハッキリ言ってしまえば、ピンク・フロイドのプロモーションビデオをストーリーに組み立てたような作風で、プロの俳優は出演していますが、セリフは少なく、歌詞の内容によってストーリーが分るように構成されていて、実写映像に加えてアニメーション映像が効果的に挿入されています。長編プロモーション映像と言った感じの作品ですが、戦争、暴動などの映像はかなり生々しく、今だったらR指定作品になるようなショッキングな映像もありますし、アニメーション映像も実写の予算不足の間に合わせではなく、主人公の精神状態や社会批判を効果的に表現する為に用いられていていて違和感が無く、強烈なインパクトがあります。内容的には、支配される人間は、壁の中の一つのレンガのような存在でしかない、壁によって遮られてコミュニケーションが取れないなどのコンセプトと、物質社会への批判、戦争批判など様々なテーマが込められ、個人の深層心理から人間社会の現状まで暴くような深遠なものになっています。芸術性が高く、かなり衝撃的な作品でピンク・フロイドの音楽も楽しめる作品ですが、かなり気が滅入る作品なので、パートナーに浮気されて落ち込んでいる人や、精神的にマイっている人は避けたほうがいいと思います。また、ピンク・フロイドの『ザ・ウォール』の内容を映像化していますが、ピンク・フロイドは出演していませんし、演奏シーンもありません。その点は注意したほうがいいでしょう。

人間どうせ、壁の中のレンガ

　ほとんどの人は、知らないうちに国や組織の一部として枠にはめ込まれてしまっています。国の一部、会社の一部という全体の中のワンピースとして抑圧され、そんな事に気付かずに一生を終えてしまう人も多いと思います。壁の一部になる事を拒否すれば、捨てられてしまいますから、気付かないほうが幸せなのかもしれませんが・・・。

何で満たせばいいのだ、この広い空っぽな空間を

　満たされない思い、誰かに裏切られた時の喪失感、心の中が空っぽで、空しさにさいなまれている時は、いったい何で心を満たせばいいんでしょう。

アルバムも名作！

　２枚組みアルバムとして世界で最も売れたと言われる『ザ・ウォール』が、この映画のコンセプトになっています。ロックファンにとっては有名な名盤なので、持っている方も多いと思いますが、アルバムより先に、本作に出会った人なら、内容をよく理解できて楽しみやすいと思います。

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