1979年アメリカ作品、監督は『さらば冬のかもめ』のジョン・アシュビー、出演は『ピンク・パンサー』のピーター・セラーズ、『イン・ハー・シューズ』のシャーリー・マクレーン、『天国から来たチャンピオン』のジャック・ウォーデンなど。世俗を知らない純真な中年男が、偶然、大富豪と知り合ったことから政財界に多大な影響を与えてしまう姿を描いたコメディ作品。
天才喜劇俳優ピーター・セラーズ主演の異色のコメディ作品です。ドタバタ系のコメディで有名なピーター・セラーズですが、本作では中年になっても子供のような純真さを失わない特殊なキャラクターを好演し、ゴールデングローブ賞を獲得しました。本作では、主演のピーター・セラーズが純真無垢で物静かなキャラクターで、彼に翻弄される周囲の人々がドタバタするという形を取っていて、共演のシャーリー・マクレーンのドタバタ振りが、かなり笑えます。全体的に静かで地味な作品ですが、出演者の個性的なキャラクターが生かされて笑いの中に、ちょっとした風刺と感動が楽しめる名作です。主人公のチャンスが、財界の権力者、大統領などを翻弄していくストーリーが、コメディ作品としての見所ですが、財界と政治の癒着、権力構造などを生々しく描いた社会派作品というより、チャンスの純真さに翻弄される大人を描いた作品なので、財界人も大統領も好意的に描かれています。社会風刺としては、白人主導のアメリカに対しての辛らつな風刺が出てくる程度なのでブラックジョークの辛口コメディというより、純真さを失った人間に対してのメッセージを込めたコメディ作品と考えた方がいいでしょう。爆笑シーンの連続というコメディ作品ではありませんし、ドタバタ劇を演じるピーター・セラーズを観る事もできませんが、エンディングにはコメディ映画らしからぬ奇跡のシーンがあり、不思議な安堵感を与えてくれる作品です。
今の世の中では、箱入り娘とか言われて、過保護に育てられ世間知らずだと軽蔑される事もあるようですが、この作品の主人公チャンスのように、俗世間から隔絶されて純真さを保てるなら、それも悪くないような気がします。悪意に満ちた世の中で純真さを失ってしまうなら、世捨て人のように生きて純真さを保つ方がいいんじゃないでしょうか。
あんたは、いつまでも子供よ
聖書にもありますが、子供のような純真さを持つ人間こそが、最も尊い存在なのかもしれません。
人生とは、心の姿なり
人の心の在り方が、その人の行動に出ます。そして、その行いが、周囲の人や環境に影響を与えます。生きている間の行いが、その人の心の姿なんでしょうね。