元警官のスタイリッシュなロッカー

　１９４９年、アメリカ、ニューヨーク生まれのヴォーカリストでソングライター。彼の父親が警官だった事もあり、ニューヨークで警官として働いていましたが、音楽に関する情熱が高まり、警官を退職してから音楽活動の拠点をカリフォルニアへ移し、コロムビアレコードと契約、１９７８年に『噂のエディ・マネー』でデビュー、シングルカットされた『トゥ・チケット・トゥ・パラダイス』『ベイビー・ホールド・オン』が大ヒット、アルバムもダブルプラチナディスクを獲得するほどのヒットとなり、一躍トップアーティストとしての人気を確立します。その後もコンスタントにヒットアルバムを発表し、１９８０年代になると積極的にプロモーションビデオを製作して、ＭＴＶの人気を利用してヒットアルバムを発表していましたが、１９８０年代中ごろにドラッグ中毒による問題が深刻化し、アルバム『パーティーの夜』を発表後、一時活動が停滞。約３年のブランクの後に発表された『キャント・ホールド・バック』で見事にカムバックを果たしました。１９９０年代に入ってからもアルバムを発表し続けていますが、残念ながら、近年では、ゴールドディスクやプラチナディスクを獲得するようなヒットには恵まれていません。

　カリフォルニアを活動拠点にしていたエディ・マネーですが、いわゆるウエストコースト・サウンドとは、一味違った魅力のあるサウンドでした。プロデューサーにエリック・クラプトン、オールマン・ブラザーズなどのプロデューサーとして知られているトム・ダウドを起用していましたが、カントリー、ブルース色の強いアメリカ的なサウンドというよりは、ポップなメロディをベースに、ニューヨークの雰囲気を持つ洗練されたアレンジの曲が多く、ロックのダイナミックで荒々しいドライブ感がありながら、スティーリー・ダンなどのＡＯＲのようなキラリと光るセンスが心地よい独特のサウンドが魅力です。アルバム製作でも、曲によって複数のミュージシャンを起用し、それぞれのミュージシャンの持ち味を生かしたアレンジで構成しながら、アルバム全体の統一感も持たせるという、完璧主義な一面もありました。典型的なアメリカン・ロックのバンドをプロデュースする事の多いトム・ダウドの仕事の中では、異例とも言えるプロデュースぶりですが、エディ・マネーのヴォーカルを最大限に生かすために、洗練されたセンスを持つミュージシャンを起用して、うまく組み合わせながら、トム・ダウド自身も、エディ・マネーの音楽と自分の仕事を楽しんでいるような雰囲気が感じられます。ニューヨーク出身、しかも、元警官という異色のキャラクターと、実は洗練されたサウンドプロデュースに関しても抜群のセンスを持つトム・ダウドの才能が見事に融合したサウンドは、ウエストコースト・ロックというジャンルでは異色の存在で、独特の魅力がありました。

　ハスキーでパワフルなヴォーカルと、ダンディでスタイリッシュなファッションで人気のあったエディ・マネーですが、近年では、すっかり人気がなくなってしまい、残念ながら、国内盤で入手できるＣＤはベスト盤だけになってしまいました。元々、常にトップチャートに顔を出すほどのアーティストではなく、Ｂ級などと評される事もあるエディ・マネーですが、その才能、独特の音楽的な魅力を考えると、オリジナル盤の国内盤が廃盤になってしまっている事には納得がいきません。現在、輸入盤では入手可能なので、エディ・マネーの名盤を楽しみたい方は、輸入盤で探しましょう。