これが頂点

　ジョン･アンダーソン、クリス・スクワイアー、ビル･ブラッフォード、スティーブ･ハウ、リック･ウェイクマンという黄金期と言われるメンバーでのイエスのアルバムは、前作『こわれもの』と、このアルバムの２枚だけですが、このアルバムはロック史を飾る名盤と言われている『こわれもの』以上に完成度の高い傑作アルバムです。アルバム収録曲は３曲で、うち２曲が組曲の超大作ですが、ドラマ性の高い構成で、長い曲でも、最初から最後まで緊張感と、独特の空間に満たされたおとぎ話のような音楽を堪能できます。

空間が割れる・・・

　前作『こわれもの』では、最強ラインナップと言われる、個性的で実力のあるミュージシャンの揃った初のアルバムだった為、各メンバーへに敬意の表れなのか、ギター、キーボード、ドラムなどのソロパートの楽曲が収録されていたので、バンド全体が一体となった曲が７割ほどでした。このアルバムでは、この天才集団が、融合一体化して、化学反応でも起こしたような奇蹟の楽曲が完成しています。個人的には２曲目の『同志』からエンディングの『シベリアン・カートゥル』の流れが特に好きなんですが、『同志』のイントロのギターの音は、異様な空気があります。ハーモニックスを使ったキラキラした音から、弦を弾きはじまると、目の前の空間がガラスが割れるように砕けて、異次元空間へ導かれてしまうような錯覚を起こしてしまいます。時の流れが止まり、色彩豊かでありながら、生命の躍動感が一切感じられない不思議な空間、ちょうどイエスのアルバムジャケットのデザインを担当している、ロジャー･ディーンが描く世界へ吸い込まれてしまうような、不思議で至福に満ちた気分に満たされます。私は、この快感を味わう為に、このアルバムを愛聴しています。現実逃避なのかもしれませんが、こういう感覚を味わえるアルバムというのは、他には、あまりありません。

　上の写真は、このアルバムの中ジャケットです。前作に引き続きロジャー･ディーンのアートワークを担当していますが、彼のアートワークは、本当にイエスのサウンドを絵画で表しているような、完璧なマッチングを見せています。イエスのアルバムを購入する楽しみの一つは、ロジャー･ディーンの新しい作品に出会えるという期待もあるんですが、私と同じように、ロジャー･ディーンのアートワークのファンも多いのではないでしょうか？

　  　

 

■　同志　■

　２曲目のイントロのギターの旋律を聴くと、不思議の国に誘われているような、奇妙な気分になってしまいます。スティーブ･ハウは、独自のスケール理論を持っているそうですが、こんな不思議な気分になってしまう旋律も、彼だけのスケール理論から生まれているのかもしれません。このギターの旋律を聴くだけでも価値のある名曲だと思います。

 

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紙ジャケットＨＤＣＤが最高の音質

　国内盤で完全限定発売されていた紙ジャケットシリーズが、現在発売されているソフトの中では最も音質がいいと思います。ＬＰのジャケットを完全復刻した紙ジャケットも魅力ですが、音源はＨＤＣＤになっていて、他のリマスター盤と比べても、かなり音質が良く、現在は入手困難なレアアイテムになっています。また、輸入盤リマスター紙ジャケットも発売になっていますが、こちらは、サイモン＆ガーファンクルのカヴァー曲『アメリカ』のシングルバージョンなどボーナストラックが４曲追加されていて、かなりのお買い得です。イエスのファンなら絶対にリマスター盤がオススメです。

　『こわれもの』はＤＶＤオーディオでも発売されていたので、ＤＶＤオーディオの音質がベストですが、イエスの他のアルバムは、紙ジャケットシリーズＨＤＣＤがベストな音質です。個々の音の輪郭がクリアになり、高域から低域まで音の伸び、広がりが良く、イエスのサウンドを、よりスケールの大きな音場で楽しむ事ができます。紙ジャケットシリーズは廃盤で入手困難ですが、中古品で購入が可能です。また、輸入盤リマスターＣＤには、ボーナストラックが４曲追加収録されているので、ボーナストラック目当てなら、新品の輸入盤が購入可能です。

 

 

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