幼い頃に両親を亡くしてから、ベニーとジューンの兄妹は、二人っきりで暮らし、兄のベニーは、自動車修理工場で働きながら、神経過敏で情緒不安的なジューンを親のように面倒を見ていた。ある日、ベニーの友人たちとポーカーをしていたジューンは、ポーカーに負けてしまい、友人の家に居候しているサムという青年を下宿させる事になる。サムは読み書きもできない風変わりな青年だが、なぜか人見知りの激しいジューンが彼を気に入ってしまい、３人での生活がはじまるのだが・・・。

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　１９９３年アメリカ作品。監督は『悪魔のような女』などのジェレマイア・Ｓ・チェチック 、出演は、 『ショコラ』『ネバーランド』などのジョニー・デップ、『恋しくて』のメアリー・スチュアート・マスターソン、『レジェンド・オブ・フォール・果てしなき想い』『ミッション』などのエイダン・クイン、『ハンニバル』のジュリアン・ムーア。幼い頃に両親を亡くした兄妹の愛情と、風変わりな青年に恋した妹の恋愛を描く感動作。

　ジョニー・デップ、メアリー・スチュアート・マスターソンの魅力が溢れる名作です。ジューンとサムの恋愛が中心に描かれていますが、兄妹の愛情も大きなテーマになっています。主演の二人は、一般的には、特殊学級に入れられてしまうようなタイプですが、それぞれ、普通の人には無い感性、才能を持っています。そして、健常者には無いほどの強い愛情と信頼で結ばれている二人の恋愛関係は、利害を超越した純粋さに満ちていて、特別な感動を与えてくれます。また、妹の事を優先して生活しているベニーの、妹に対する愛情の強さにも心を打たれます。まともに読み書きが出来なかったり、感情をコントロールできないと、社会に順応していくのは大変ですが、一般的な生活ができなくても、独特のセンスや才能を生かして自立して生活していく事は可能なんじゃないか？健常者の価値観で、障害のある人間を差別して、障害者にとって生きづらい社会にしてしまっているんじゃないか？と考えさせられる作品でもあります。主演のジョニー・デップの芸達者な演技が楽しい作品で、恋愛、兄弟愛などが感動的に描かれた作品ですが、エンターテイメント性だけでなく、障害者に対して冷たい社会へのメッセージが、さりげなく込められた傑作です。

人生が分らなくなったことは？

　妹の世話を優先して生きてきたベニーは、友人たちから自分の人生も考えるようにとアドバイスされます。妹の生活を中心に生きてきたベニーが、妹の為にした事が、実は妹を傷つけてしまい、さらに自分自身の人生も中途半端になってしまいます。良かれと思ってした事が、裏目に出てしまい、自信を失って人生が分らなくなってしまうというベニーの苦悩は、私たちの人生でも良くあることではないでしょうか。

 

人の指図はもうたくさん

　施設に収容されてしまったジューンは、施設の３階で精神科医と面談を行っています。施設を出て自立して生きたいというジューンが窓を観ると、なんとサムの姿が！。笑いと感動が一度に押し寄せてくるような名場面です。

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