1969年日本映画。監督は『学校』『息子』『幸福の黄色いハンカチ』の山田洋次。出演は、渥美清、倍賞千恵子、沢田研二、田中裕子など。日本を代表する長寿シリーズ『男はつらいよ』の30作目。
歌手、俳優として人気、実力のある沢田研二さんと、日本を代表する名女優である田中裕子さんがゲスト出演し、『男はつらいよシリーズ』全シリーズ中の興行収入でトップ3に入った大ヒット作です。グループサウンズのバンド時代からアイドル的な人気が高かった沢田研二が、本作では気の小さい三枚目を好演、後に、私生活でもパートナーとなる田中裕子さんとの相性も抜群で、付き合い始めてからも、相手の愛情に確信が持てない微妙なカップルの感情を、二人の名優が見事に表現した秀作です。俳優としての評価も高い沢田研二さんですが、この作品では、動物園の飼育係をしている無口で不器用な男というクセのあるキャラクターを見事に演じきり、寅さんを演じる渥美清さんとのからみも、意外なほどうまくいっています。そして、他の女優さんには無い、田中裕子さんならではの独特の色気は、作品のイメージを決定付けてしまうほど強烈なインパクトがあります。若いカップルと寅さんが三角関係になり、若いカップルの恋愛を寅さんが応援するという流れは、『男はつらいよ』シリーズ中盤以降よくあるパターンですが、田中裕子さんの演じるマドンナの異様な色気によって、応援する立場である寅さんの失恋の悲壮感も強く、蛍子と三郎のギクシャクした恋愛関係の繊細にもリアリティがあります。また、亡くなった母親に対する三郎の愛情の強さももらい泣きしてしまうほど感動的で、渥美清、沢田研二、田中裕子の相性の良さからか、爆笑シーンにも全盛期のようなキレがあります。沢田研二と田中裕子のキャラクターの魅力を十分に楽しめるので、二人のファンは必見の作品ですし、『男はつらいよ』の傑作の一つとして、シリーズ初期からのファンにも楽しめる作品になっています。沢田研二さんは、三枚目の役ですが、映画のオープニングで描かれる寅さんの夢のシーンがミュージカルになっていて、沢田研二さん本来の魅力が楽しめる工夫もされています。80年代以降の作品では、ゲスト出演者が浮いてしまって失敗している作品もありますが、この作品は出演者の魅力と寅さんの魅力が見事に融合した傑作だと思います。
本作の中で、田中裕子が演じる蛍子に対して、彼女の友達が『ヘンな色気があるでしょ』と評する場面がありますが、本当に異様な色気がありますね。ちょっと失礼な言い方かもしれませんが、『男はつらいよ』シリーズの歴代のマドンナの中では、モデル並みの美女というより庶民的なルックスで、マドンナとしては平凡な顔立ちだと思いますが、彼女の持つ独特の雰囲気は、吸い寄せられてしまうような不思議な魔力があり、ルックスの好みを超越した女性の色気が感じられます。私も正直言って、あまり好みのタイプではありませんが、この雰囲気には飲み込まれてしまいそうです。沢田研二さんも、この色気には勝てなかったんでしょうね。
高いからありがたいだけだよ
高価な食材で、なかなか庶民には手の届かない松茸のエピソードもありますが、タコ社長の言う通り、おいしいかどうかは好みにもよりますし、高価なものというイメージに騙されているだけで、本当に価値があるかどうかは、本人次第なんですよね。
袖すり合うも他生の縁
現代社会では、他人との交流を嫌い個人主義に徹するような傾向が強くなっていますが、どんな小さな係わり合いでも、前世での縁によってめぐり合っていると考えれば、ちょっとした人間のつながりにも関心を持てるようになるかもしれません。はじめて会った人なのに、ひどく懐かしい気持ちになってしまったり、一度会っただけでも、人生を変えてしまうような強烈な言葉を残してくれる人もいます。個人主義が主流の世の中になってしまい、人間嫌いになるのも分りますが、小さな出会いも、縁があっての事と考えれば、人間同士のつながりに、もっと興味が持てるようになるかもしれませんね。
本当に変わってる人は、自分では気付かないもんですよ
他人とは違う事をしようと意図的に行動するような人は、変わり者に憧れているだけで、本質的には平凡な人間なのかもしれません。本当に変わっている人は、自分が普通の人間だと思い込んでいて、天然で奇怪な行動をしているので、自分が変人だという自覚が無いので、いつまで経っても変わり者扱いされてしまうんでしょうね。
男は顔ですか?
ルックスが悪いからという理由で振られる人は多いと思いますが、ルックスが良すぎて敬遠されるなんて事も稀にあります。外観のイメージによって人を判断してしまう人間の習性は悲しいですが、結局、男も女も内面が一番重要ですよね。