1989年イタリア作品。監督は『愛の嵐』のリリアーナ・カヴァーニ 、出演は、『ハーレー・ダビッドソン&マルボロマン』『死にゆく者への祈り』のミッキー・ローク、『ファイト・クラブ』『ビッグ・フィッシュ』のヘレナ・ボナム・カーターなど。福音書に出会って人生が一変した聖人フランチェスコの生涯を描いた伝記映画。
中世の聖人フランチェスコが主人公の映画なので、かなり地味な作品で娯楽性の乏しい作品です。時代背景が中性なので全体的に雰囲気が暗く、お世辞にも娯楽性豊かな作品とは言えませんし、キリスト教の聖人が主人公なので当然キリスト教色が強く、キリスト教に興味のない方には退屈な作品でしょう。しかし、マザー・テレサが多大な影響を受けたという聖人フランチェスコの言葉、生き方は、キリスト教に関心が無い人にも感動を与える力を持っているので、ちょっと哲学、宗教の勉強をすると思って鑑賞するのもいいかなと思います。キリスト教以外の宗教に関心のある方にとっては、ほとんど楽しめる要素が無いのでパスした方がいいと思いますけど。
私個人は、自殺未遂して死に損ねてからキリスト教徒になったので興味深い映画でした。特に感銘を受けたのは、完全な信仰を貫き通し、一切の財産を拒否し、清貧を徹底したフランチェスコの姿でした。マザー・テレサが、なぜ清貧にこだわっていたのか?という疑問も、この作品に答えがありましたし、イエスの教えを実践できる人がほとんど居ないという確信も持てました。イエス・キリストの教えを全て守り実践する事が、いかに難しいかという事も再認識できました。キリスト教徒の方には是非観ていただきたい作品です。
偽善というわけか
キアラが貧者に施しをする姿を見て、フランチェスコは、こんな厳しい言葉を彼女につぶやきます。イエス・キリストも偽善者を嫌っていましたが、善人ぶっている偽善者ほど最悪な人間はいません。フランチェスコもイエスと同じで、偽善者を嫌っていたようです。
僕には別の父がいる
キリスト教徒は、唯一絶対的な存在である神を創造主として崇めています。肉体を与えてくれた人間の父親よりも、創造主として生命を与えてくれた父親として神に仕える為、自分の父親よりも、神の言葉を優先しなければならないようです。
完全たらん者は、持てる物を売り全てを貧者に施せ
新約聖書で、イエスが、ある金持ちに対して同じ事を語りますが、その金持ちは全てを捨て去る事ができずにイエスから去っていきます。財産をすべて捨てて神に従えるような完全たらん者になれる人は、ほとんどいないような気がします。フランチェスコは、そんな完全たらん者だったんでしょうね。
主よ、やはり彼らは従いません
私は20代の頃から聖書を読んでいますが、新約聖書でイエス・キリストが語った事を100%守れる人を見たことがありません。フランチェスコは、自分の元に集まってきた信者たちに失望していたようですが、やはり、イエスの語った掟を守れる人はほとんど居なかったんでしょうね。すべて偽善者とは言いませんが、今でも自称キリスト教徒の人で、イエスの教えを守れる人はほとんど居ないような気がします。