若い女性の連続殺人事件が発生し、ＦＢＩが捜査にあたるが、猟奇殺人事件の犯人像は特殊で捜査は難航していた。ＦＢＩの訓練生クラリスは、まだ正式なＦＢＩ職員ではないが、FBIの上司ジャックに才能を買われて、州立の精神病院に収監されている精神科医ハンニバル・レクター博士の元を訪れ、連続殺人事件の犯人の人物像を特定しようとする。天才精神科医ハンニバル・レクター博士は、精神科医としての知識だけでなく、広範囲にわたる知識と、並外れた洞察力で人物像を推察してしまう能力があり、この事件への協力が得られれば、ＦＢＩにとっては有利だが、レクター博士は交換条件としてクラリス個人の情報を要求する・・・。

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　１９９１年アメリカ作品。監督は『フィラデルフィア』のジョナサン・デミ、出演は『ブレイブ･ワン』などのジョディ・フォスター、『レジェンド・オブ・フォール　果てしなき想い』『オール・ザ・キングスメン』などのアンソニー・ホプキンス。ＦＢＩＩ訓練生のクラリスが、犯罪者として収監されている天才精神科医レクター博士の協力によって犯人を追い詰めて行くサイコサスペンス。

　アカデミー賞の主要部門を独占、大ヒットした作品で、この後シリーズ化されましたが、シリーズ中の最高傑作であり、この作品の後、次々とサイコサスペンスの映画が製作され、サイコサスペンスというジャンルを作った名作中の名作。ジョディー・フォスターとアンソニー・ホプキンスという強烈な個性のキャラクターの魅力もありますが、何と言っても、芸術、科学、心理学、ファッションなどの一般教養まで広く深い知識を持ち、全てを見通してしまうような洞察力と、感情を一切表に出さない計算された冷淡さがあるハンニバル・レクター博士の人物像には衝撃を受けました。また、人間の深層心理の暗部を暴きだしたテーマは、デヴィッド・リンチ監督の『ツイン・ピークス』とともに、後の映画、文学などにも多大な影響を与え、多くの人に潜在意識に潜む狂気、秘められた欲望などの存在を知らしめた作品でもあります。この作品の後、数多くのサイコサスペンス作品が製作されましたが、この作品を超える映画はほとんどありませんでした。さすがに、最近の映画と比べると、ジョディー・フォスター演じるクラリスのメイクなどは古さを感じますが、内容的には、この作品がベストだと思います。個人的な意見ですが、サイコサスペンスというジャンルの映画は、アルフレッド・ヒッチコック監督の『サイコ』、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』、そして、この『羊たちの沈黙』の３本が基本で、他の作品は、この３作品の変形でしかないと思います。『セブン』は観終わった後に、かなりダメージが残りますし、『サイコ』は映像的に古すぎるので、サイコサスペンス作品でイチオシの作品と言えば、やはり、この作品だと思います。

物事の本質を探れ

　犯人の捜査に行き詰ったクラリスは、自分の過去をレクターに正直に話す代わりに、犯人像のヒントを聞きだそうとしますが、レクターのヒントは極めてシンプルなものです。捜査のヒントというよりは、人生のあらゆる局面に通用するヒントが与えられます。どんな状況でも、物事の本質を知るという事が最も大切な事かもしれません。素晴らしい詩や芸術作品に出会っても、その作品の本質を見抜けなければ、作者の意図は伝わりません。また、本質からズレたポイントを基準に考えてしまうと、仕事にしても、人間関係にしても、いいアイディアも対応もできず、解決策は見つからないのかもしれません。さりげないセリフの中に真理が隠されているようで驚かされます。

いつも目が自然に何かを追い求める

　人間の視線の奥には欲望が潜んでいると言い当てているようで怖い場面ですが、クラリスとレクターの会話のシーンで、二人の顔が交互にクローズアップされ、心理状態が表情に浮かび上がるシーンは画面から離れたくなるほどの迫力があります。顔の表情だけで恐怖を感じさせる名場面です。

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ジョディ・フォスター
アンソニー・ホプキンス
スコット・グレン

 

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